運命は。
秋山のことを思い出していた。私は今新幹線の中、一人旅の最中。
一人暮らしはとても自由で、その気になればいつでも旅に出られる。一人が寂しくないかといえば寂しいときもあるけれど、今日は寂しくない。
新幹線は広島に向かっていた。秋山が住む街。
「お好み焼きなら奢っちゃる」
例年通り年賀状のやりとりをしてから数ヶ月後、スマホがリンと鳴り、秋山からのそんな一行メッセージを受け取った。
でも今日、秋山には私が広島に行くことを連絡していない。突然行って秋山が今日暇かどうかなんて分からないけど、なんとなく、会える気がしてるから。それにもし会えなくても、その場合は一人でお好み焼きを食べて帰ればいいだけ。
「次は広島」のアナウンスが流れた。
スマホを開いて、秋山のアドレスをタップする。
「秋山、今何してる?」
土曜日の昼、秋山は何をしてるんだろう。
返事がすぐに来た。
「おぉ、川瀬。元気か?」
「うん、元気元気」
「どうした? なんかあった?」
「えっと、今広島に向かってる」
「え? 広島?」
「うん。次、広島駅に着くよ」
「何時に?」
「12時35分着」
「分かった。行く」
そのままメッセージは来なくなった。
12時35分。
広島駅に新幹線が到着し、私はゆっくり降りた。秋山に会ったら何て言おう。秋山は何て言ってくるだろう。やっぱり「ちょっと老けた?」みたいなやつかな。私たちはお互い16年、歳をとっている。
「川瀬!」
秋山がホームを走ってきた。
秋山。
秋山がすごく近くなる。
息を弾ませながら秋山は私をまっすぐに見た。
「お好み焼きがそんなに食べたいんか?」
そう言って笑った秋山。変わらない笑顔。
「ほら、プリンも」
秋山が持ち上げたコンビニの袋の中で、プリンが2つ、コトコトと揺れている。
✳︎✳︎✳︎
二人のその後はこちらです。
お気持ち嬉しいです。ありがとうございます✨