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なんだあのコンビニ

4月頭のある日 友人に誘われて、夜の造幣局「桜の通り抜け」に行くことに。
天気は曇り。
昼間には日が差していたから薄着だったから、かなり寒かった。

感の良い人ならもう気付いたと思うけど、その日はまだ、通り抜けは開催されて無かった。

友人に対する殺意が芽生えそうになったけど、そいつは動揺のあまりiPhoneを落として画面がバッキバキになったから何とか許せた。
一回落としただけならギリギリ殴ってたけど、二回落としたから許した。

そのiPhoneを落とした話だけで日記五回ぐらいはかけるけど、今回の話はその後に起こったコンビニでの事件を書かせてもらうね。



開催されてないのはもうしょうがないって事で、造幣局沿岸の桜の綺麗なところで花見をする事になった。

かろうじて空いてた複合屋台と、近所のドンキで買ったブルーシート、お酒を持って人気のない桜の木の下へ。

はじめは穏やかに楽しく進行していた花見も、夜中に近づくと様子は一変。

身を切るような寒さが襲ってくる。

このまだと風邪を引いてしまう!と言う事で、精鋭部隊を編成しコンビニでカイロを購入する事になった。

その場に留まっていると凍ってしまう気さえしたから、入隊を志願した。
精鋭は、俺をいれて2人。
かなりの少数精鋭だ。


歩いていると気が紛れるかなと思っていたのが甘かった。

そう、そのコンビニの店員が曲者。
今となっては店員かどうかすら怪しい。


何があったかって言うと、コンビニに到着して商品を見渡してもカイロは無かった。

季節の変わり目って事も想定してたから、しょうがないなと思いつつ、微かな希望でレジにいた人に話しかけた。

俺「すいません、カイロは置いてますか?」

男「はい、あちらのドアをくぐって頂いて、階段を登ったところにあります。」






ん?


ドア?
階段??




そうか、このコンビニは2階建てなのか。
と、いろんな疑問を無理やり納得。
指定されたドアへ向かった。



そのドアの前に来て、疑問が確信に変わった。



そう、そのドアに掲げられている三文字のプレートで。






【  事  務  所  】




俺はレジに向かって叫ぶ。

俺「すいません!これ、事務所って書いてますよね! スタッフオンリーですよね!!?」



するとヤツは、ヤツはこう答えたんだ。






男「はい!大丈夫です!! そこに入って、階段登って下さい!!」






…何が大丈夫なんだろう?
事務所と書かれた扉をくぐって、行き着く先は世間一般でいう【バックヤード】ってやつじゃ無いのか?
あれは客が気軽に入っていい場所じゃ無いだろう?



やっぱり納得出来なくて再度男に確認しても返事は同じ。


何度かの押し問答の末に、ヤツがおかしいのか、自分がおかしいのかわからなくなってしまったので言われるがままドアをあけ階段を登った。



…何でカイロを買いに来ただけでこんな罪悪感にかられないといけないんだと思うくらいのバックヤード感。
入荷してダンボールに入ったままの商品の山。

共に精鋭に選ばれた戦友と「これは大丈夫なのか!?」とやりとりをしていると、騒ぎを聞きつけた店長らしき人が登場。


もちろん向こうもこんな場所に人がいるとは思っていなかったようで、頭上に浮き出る「?」マーク。


お互いが見つめあったまま、静止していた。
時間にすると、ほんの数秒だと思うけど、本当に長い時間に感じた。



そして、時間は店長の言葉と共に動き出した。


店長「どうなさいましたか?」

…今となっては、数秒でお客と見抜き、失礼の無い言葉を選んだ店長に賞賛の声を惜しまない。


ただ、その時の俺は押しつぶされそうな罪悪感と、店長のプレッシャーに飲まれていた。


俺「あの…下の、レジの人に…かっ、カイロがここに有るって聞いて…」


100点満点の弱者っぷり。
なぜ、何故客がこんな気分にならなければならなかったのか、それは次の店長の言葉で判明した。



(事情を察し、焦る店長)
店長「えっ!?ここにはカイロは無いですよ。レジの裏に数個残っていたかどうか…」







え、なに!?
なんて!!?

レジの…裏??
それって…ヤツがいた場所じゃ無いか!!


誘導してくれる店長の後について、階段を降りる。

やっぱりアイツは店員じゃ無かったのか!?
人がいない事を良い事に、店員ごっこをしていただけなのか!?

様々な疑念が頭をよぎった。


これで、レジはもぬけのカラだったら謎解き編に突入してたんだけど…





ヤツはいた。

ふてぶてしいまでに、まるで「我、ここに有り!」とでも言わんがごとくレジに居座る店員(?)


色々な衝撃が強すぎて、近づく事さえ恐れてしまい遠目で見守る事しかできなかったんだ。



店長と、店員らしき人が二、三やりとりをした後、店長がこっちに来て


店長「ウチではこれだけしか無いです」


と申し訳なさそうにカイロをくれた。



貼るカイロ(ミニ)を、1つ。




僕の冒険はここでおしまい。
ちなみに、レジでカイロを買う時の店員がもちろんヤツだった事や、その苦労して手に入れたカイロを奪い取られて使えなかったのはまた別のお話……


~fin~

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