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目の前の人を全力でもてなし、大切にするということ

4ヶ月という長期滞在をしたメキシコを出て、辿り着いたのはカリビアン文化を持つベリーズ。

イギリスの植民地支配中は、ブリティッシュホンジュラスという国名だった。独立後は、アメリカと協定を組んだため、国で使える通貨は、ベリーズドルとアメリカドル。しかしベリーズドルにはエリザベス女王のイラストが…。
なんとも複雑な国だ…。

そしてここは物価が高い…。
バジェットトラベラーの私たちには長期滞在は見込めないため、「旅」というよりはアクティビティ詰め込み型の「1週間旅行」というような形になった。

この1週間で素敵な人たちと出逢った。
ガイドさん3人とオーナー2人。
5人は全員個性的で異なるが、共通しているところがあった。そんな5人から学んだ精神を綴りたい。

口コミで広がる世界は優しかった。

最初の目的地サンペドロ島で訪れたレストランのオーナーのサイモンとサンイグナシオで出逢った2人目のガイド、パトリック。

全く別の場所で2人に出逢ったのにも関わらず、彼らの口癖は一緒だった。

“SPREAD THE WORLD”
“世界に広めてくれ”

サンペドロ島で出逢ったサイモンは、お喋りが大好きなチャーミングな方。オーダーしてから料理を待っている間に、彼は私たちの席に参加して、一緒に旅の話やベリーズの海、魚たちの話をした。

彼との会話が楽しくて、そして何と言ってもサイモンの奥さんの料理が美味し過ぎて、あっという間に時間が来てしまった。そんな私たちは「明日また会おう!ここで待ってるよ〜!」と、自然と彼と約束を交わしていた。

次の日も私たちは彼らのお店へ。
店の到着が遅過ぎて、ほとんどの魚や副菜が終わってしまっていた。頭を悩ませていると、私たちの好みを確認して、メニューにはないおまかせで作ってくれることになった。

そんなおまかせメニューもとても美味しくて、そして相変わらず彼との会話が楽しくて、あっという間に混んでいた店内も、私たちだけになってしまった…。

すると、彼が一度厨房へ行き、デザート片手に戻ってきた。

“This is coconut pie from my recipe.
It’s on the house because I like you guys.”
「これは僕の特製レシピのココナッツパイ。
サービスだよ。だって君たちいい奴だから。」

彼は会ったばかりの私たちにサービスをしてくれた。明日も待っていると言ってくれたのだが、次の日は私たちの移動日で、サンペドロ島を発つ日だった。そのことを伝えると、「大好きな君たちだからお願いする。僕の場所を世界に広めてね。」去り際の私たちにそう呟いたのだった。

自分の愛するコトだから、リーズナブルに。

私たちがお願いした、プライベートシュノーケリングツアー。朝9:00に待ち合わせ場所のピアに行くと、明るいハスキーボイスの、1人目のガイド、アルフォンスが、黄色のボートで迎えてくれた。

彼は今日のツアーは私たちだけだと言う。なんとまあ、気前の良いこと。なんて思いながら話をしていると、自閉症持ちの男の子をピックアップしてから、シュノーケルスポットに向かうと言う。もちろん、彼は観光客ではなく、地元の子。彼のあだ名は「ガト」。スペイン語で猫という意味だ。

地元の少年ガトと、ガイドのアルフォンスと小娘たち2人の、4人で海に出た。観光っぽくなくて、なんだか彼らの日常にお邪魔させてもらっているような感覚に、ワクワクが止まらない。

彼ら曰く、今はローシーズンでお客さんの数もマチマチで、2人とも今日のシュノーケルをすごく待ち侘びていたようだ。

アルフォンスから一通り説明を受け、2人に連れられ海の中へ。温かく身体を包み込んでくれるような海の温度に、自然と身体の力が抜けて、海に慣れるまで時間はかからなかった。

ボートの近くで何往復が泳ぎの練習をして、いざリーフへ。リーフに近づくにつれて、魚や珊瑚の数が増え、あっという間にリトルマーメイドの世界に入った。水面に顔を潜らせると、色んな魚たちが挨拶をしてくれる。その魚たちを指差しながら、アルフォンスが魚の名前や生態を慣れたように説明してくれる。

その声の中には、彼の海に対する愛情や情熱が含まれており、興奮気味に「早くこっちにおいで!」「あそこに〇〇がいるよ!」と叫ぶアルフォンス。ベテランなガイドが、少年に見えた。

それに負けじとガトも、「こっちこっち!」「あそこに〇〇がいるからこっちにおいで!」とまるで競争をしているかのようだ。

約束の3時間はあっという間に過ぎて、4時間を経過していた。お礼を伝え、今回のツアーの代金を支払った。1時間越えの追加料金もなく、約束していた他のツアーの半額の値段を支払った。

私たちの満足した顔を見て、彼は嬉しそうに去っていた。彼が他のツアー会社のように大きいグループでもっと高額な料金でチャージしなかったのは、彼が純粋にこのシュノーケルや、海、生き物たちを愛しているからだ。そして、自分の愛しているコトだからこそ、リーズナブルな価格設定で、私たちのようなお客を楽しませたいという想いが、滲みあふれていた。

そんな彼の情熱と謙虚さに、ビジネスの真髄を垣間見たのだった。

お金じゃなくて、君の心を掴みたい。

今回の旅最後に出逢ったプライベートチャータードライバーのエイブ。

彼はただのドライバーではなく、ガイドもできる有能な男だ。私たちの要望だけでなく、色々とプランを練り提案してくれる。例えば、私たちがチャーターをお願いした週末は、現地の人々が賑わう市場が行われており、そこでお昼ご飯やフルーツ、飲み物を調達して、エイブが持参した自前のクーラーボックスに入れ、常にキンキンに冷やしてくれた。しかし、追加料金は一切ない。彼の提案は全て完璧だった。

私たちが希望していた目的地を全て周りきり、約束の終了時間まで、まだ時間がある。そこで彼が提案してくれたのは、地元のコーヒー農家さんで、無料でコーヒーを飲みながらお話をしないかというものだった。

無料という言葉に、少し警戒してしまうが、私たちは半日一緒に過ごして、完全にエイブを信頼していた。そして何よりジョブズが大のコーヒー好きということもあり、彼の提案を受け、コーヒー農園へ行くことにした。

そこで迎えてくれたオーナーは、自分のコーヒー農園を見せながら、コーヒーの種を埋める1番最初から、最後のコーヒー豆を包装するまでの過程を一通り説明してくれた。社会科見学をしているようで、小学生に戻った気分になった。彼のご先祖様はマヤ人で、彼のコーヒーの工程やコーヒー道具はマヤの文化を取り入れた独特なものだった。

またベリーズではコーヒー文化は浸透しておらず、近隣のグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラスがコーヒー文化の一途だ。そんなベリーズで試験的に農園を始め、今ではビジネスをするまでに至ったという。

彼が見せてくれたコーヒーの過程は、お金を払うレベルの内容だった。そして彼が煎った豆からできたコーヒーは深みがあって、とても渋い、まるで彼の人生を語っているかのような味がした。私たちは帰り際に、お金を払いたいと伝えようとしたのだが、彼は先に私たちこう告げた。

「僕が欲しいのはお金じゃない。ここに来た人の心だよ。ここに来てくれた人が、僕のファームを他の人に伝える。それを聞いて誰かが訪れる。そしてその人がまた誰かに伝える。地道だけど、これを続けると不思議と素敵な人しか来ないんだ。君たちもそのうちの1人だよ。だから今日は来てくれてありがとう。そして今日見たこと、感じたことを、是非他の人に伝えてね。」

ガイドのエイブも、コーヒー農園のオーナーも、私たちの心を鷲掴みして離さなかった。


写真はベリーズの美しい海と生き物たち。
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