Web小説発掘記 その276 クスノキとアベリア 作者 蒼空 結舞様

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前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。

あらすじ

まだ雨の足音が聞こえない六月初旬に男たちによってなにかが廃棄された。そのなにかには意思があり自分の人生を終えようと瞳を閉じた。

……しかし通りかかった男、楠 麗也は生い茂った草木のおかげで再生していくなにかを運んで、問いかける。

記憶が戻った彼は自分はAB77―2005と名乗るが、楠によって阿部 稔と命名され、ネイチャードールという名目のもとで人間として生きていく術を、植物を通して学んでいく植物BLの始まり。

ストーリーと見所

植物を題材にしたBL小説。
主人公は植物の遺伝子を持った新しい人類で、廃棄されそうなところをもう一人の主人公である相手役の男性に拾われて一緒に生活をする。

二人の時間を過ごしたり、教授である彼の教え子達に囲まれて楽しい日々を送る中でメインの二人は少しずつ絆を深めていくのだが……的な物語。

主人公は元が植物的なあれなので、人間の生理的欲求は持ちつつも無知な部分がある。

なので衝動に戸惑いながら相手を求めるというちょっとした無知シチュ(BL界隈でこの言葉を使うのかは知らぬ)的なものも楽しめつつ、ストーリーの合間にはそれなりに濃いめの濡れ場シーンが用意されているのも魅力の一つだろうか。

また異種族同士の恋や、ちょっとした三角関係(?)のようなところなど、恋愛部分での見所はそれなりに多い。

……なのだがまぁ、ちょっとばかり詰め込み過ぎ感は否めない。

なんやかんやありつつもラブラブな二人を祝福しつつ応援する周囲の人々、危機に対して彼等が協力しての解決など、やりたいことは充分に伝わってくる。
伝わっては来るのだが、どうにも尺不足というか急激に物語が始まって収束していく感が否めず、今一つ感情がついていけない。

特に序盤の三人組登場からのうち一人からの告白→振られたけど友達として~という流れは急激すぎて少しばかり驚いてしまった。

後半に関してもSF的な要素や兵器などという物騒な言葉が次々と出ては来るが、やはりちょっと急すぎて飲み込めない。

とはいえ見目麗しい男性同士の不器用ながら確かな恋愛と、濃厚な濡れ場描写など見るべき部分は多く、そういったところも含めれば充分に楽しめる作品といっていいだろう。

キャラクター

阿部 稔

物語の主人公。
人間ではなく、となる理由によって破棄されていたが相手役の男性に拾われる形で一緒に暮らし始める。

妙に男性にモテて、実質ハーレムのような状態になるが、あくまでもメイン一筋。
人間の姿をしているが人間ではなく、知識や感情も不安定。

楠 麗也

主人公を拾う男性。
実質的なもう一人の主人公ともいえる。

何処か冷淡にも見える人物だが、意外と情に厚い。
またことに及ぶときはかなりオラオラ系になったりもする。

大きな秘密があり、それが物語のクライマックスで明らかになる……。

総評

評価点

登場人物達の心の交流や、濡れ場シーンなど二人の関係が進んでいく描写は丁寧且つ鮮明に描かれていて非常にわかりやすい。

またやりたいことや持って行きたい構図などは理解でき、そういった意味では物語の全体図は掴みやすい。

問題点

やはり細かな要素やエピソードが雑だったり、いきなり感は否めない。
分量に対しての登場人物の多さなどを含めて、どうにも詰め込み過ぎ感がある。

最終評価 48点(普通に楽しめるWeb小説)

濃いめの濡れ場や、登場人物同士の交流などBL作品としては見所は多い。

ストーリーはやや唐突感が否めないが、細かいところを気にせず登場人物達の心の動きや関係性を追いかけるなら充分に楽しむことができるだろう。

異種族間の愛情や、ちょっとした無知要素など、そういった点でも魅力的な要素は多い……と思う。(BLは詳しくないので断言はできないが)

所要時間は凡そ50分ほど。

極めて個人的な感想

上にも何度も書いたけど、やりたいことはわかる。

もうちょっと整理したり、一つ一つの要素を丁寧に描いてほしかったところではある。


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