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何がこれからの「こころ」の拠り所となるのか、「セルフコントロール」と「プリンシプルの再確認」


科学技術の進歩、グローバル化
による大きな経済圏の出現、
さらには近年の地球環境の
変化が加わって、人々の生活や
関係は大きく変わってきています。


そして、それらはおのずから
人々の「こころ」に影響を及ぼし、
ときには、これまでの世界観を
揺るがそうとしています。


これから世の中が変わっていく中で、
今まで十分、力を発揮できなかった
人たちがいよいよ日本の、
あるいは、世界の表舞台に出てくる、
本当に下克上の時代がすぐそこまで
きていると考えられます。


このときに大事なのは、
自分が”何を大事にするか”という
「プリンシプル」を再確認する
ことではないかと思っています。


”プリンシプル”という言葉は
普段あまり使わない用語で
曖昧な言葉だと思いますが、
「基本的な真理」であり、
物事を考える上での土台です。


ゴールに到達するための
最短ルートを示す
「根源となる法則」であり、
「ルールを策定する上での指針」


つまり、人類がこれまで
「こころ」をどのように
捉えてきたのかを踏まえつつ、
「こころ」とは何かを探究し、
さらに、何がこれからの
「こころ」の拠り所となるのかを
明らかにすることが必要に
なってくると思われます。


将来について想像し、目標や
計画を立て、その実現に向けて
労力をかけることは、人が持つ
能力の中でも他の動物よりも
優れている部分だと
考えられています。


実際に、私たちの日常生活の中で
将来を見据えて何らかの行動を取る
という状況は多く、


たとえば、
1 週間後に控えた模擬試験で
良い成績を取るために学習したり、
10年、20年先も健康で豊かな生活を
送るために栄養バランスを考えた
食事をとったり、貯蓄を行ったりと
時間のスケールや目標の内容は
多様ですが、将来を見据える行動は
日常生活の中に溢れています。


人は、
”今、ここ”にあるものに対して
「直感的・衝動的」に
振る舞っているのではなく、
遠い将来を見据えて
「熟慮的・統制的」にも
振る舞っているということです。


一方で、
こうした将来への目論見は
必ずしも実現するとは限らない、
なぜなら、学習をしようと思っても
SNSの通知が気になってしまったり、
練習をしようと思っていても
友人からの遊びの誘いに乗ってしまったり、
貯蓄をしようと思っていても
つい物欲に負けてしまったりと
「熟慮的・統制的」に
振舞おうと思っていても、


結局は「直感的・衝動的」な
振る舞いをとってしまうことも
あるからです。
将来を見据え、衝動的な誘惑に
負けないようにすることは、
心理学において、自制、すなわち、
セルフコントロールの問題として
扱われてきました。


ギリシャ神話
「オデュッセウスとセイレーン」
をご存知でしょうか。
自分で決めたことでも周りからの
誘惑や雑音に流されて、
思っていたとおりに進められない
ことは多々ありますよね、
この誘惑に打ち勝った人が
英雄「オデュッセウス」でした。


ギリシア神話では、セイレーンは、
顔が人間の女性で、それ以外は
鳥の姿をしているとされていますが、
中世以降は上半身は人間の女性で、
下半身は魚という人魚のような姿で
伝えられるようになってきました。


静かな夜の海で怪鳥セイレーンの
美しい歌声が聞こえてくると、
人々は正気を失い難破するような
海域に誘われてしまいます。
また、セイレーンの歌声を聴いた
乗組員は魅入られたように
海に飛び込んでしまうとも言われます。


ギリシャの英雄オデッセウスは、
怪鳥セイレーンのいる海域を通る際、
船が安全に通過できる方法を
魔女キルケから伝授されました。
それは船員には蝋で耳栓をさせる
というものでした、


しかし、1人だけセイレーンの
歌が聞こえるオデュッセウス自身は
耳栓をせず、自分の体をマストに
縛り付けました。
セイレーンの美しい歌声に惑わされて
船が座礁してしまわないよう、
オデュッセウスは自らの体を
マストに縛りつけたのです。


オデッセウスはセイレーンの歌が
聞こえてくると我を忘れ、
セイレーンのもとへ行こうと
暴れ出しましたが、
蝋で耳栓をした船員達が
オデッセウスを必死で抑えつけ、
まだ、このあたりは危険であると
判断して船をどんどん前へ進めます。


そして、セイレーンの歌が
聞こえなくなるとオデッセウスも
正気を取り戻し、船員たちも
オデュッセウスが落ち着くと
もう安全であると判断しました。


オランダの財務大臣室には、
「セイレーンの誘惑」という
タイトルの絵画が飾られている
そうです。
幻想的で魅惑的な”水の精”として
画材となる事も多く、
艶めかしい女性の姿で
数多くの名画にその姿が
描かれています。


誘惑に負けまいと必死に
頑張っている
「オデュッセウスの姿」は、
”甘い幻想に振り回されると、
財政は暗礁に乗り上げる”
財政健全化の難しさを
厳しい航海に重ねて、
自らを戒める意味があるようです。


「自我、つまり人間の自己同一的、
目的志向的、男性的性格が
創り出されるまでには、
人間は恐るべき試練に
立ち向かわなければならなかった」


フランクフルト学派の2人の哲学者
「アドルノ」氏と「ホルクハイマー」氏は、
啓蒙の光と闇を理論的軸に
独自に解釈することで、
「セイレーンの誘惑」に打ち勝った
英雄オデュッセウスの物語を、
近代的で合理的な主体の確立という
観点から、難解なことで知られる
「啓蒙の弁証法」を新たに現代に
よみがえらせました。


ギリシャ神話に見られるように、
”自制的に振る舞う”ことは、
人々の望ましい生き方のひとつとして
語られています、
現代社会においても、自制の能力は、
人々が獲得すべき、
忍耐力、社会性、自尊心といった
社会情動的スキル
(いわゆる非認知能力)の
一つとしても挙げられていますが、


発達的な視点から、
セルフコントロールの個人差を
測定する手法としては、
スタンフォード大学の心理学者、
「ミシェル・ワルタ」氏の
マシュマロテストが知られています。


このテストでは、
小さい子供が1人、机と椅子だけが
置いてある何もない部屋に招かれます。
(この実験が行われたときの
子供の平均年齢は4歳半)


そこで子供に実験者がこう言います。
「この机の上に1つのマシュマロがある。」
「これは今すぐ食べてもよいけれど、
15分間待つことができたら、あなたに
もう1つ余分にマシュマロをあげよう。
途中で食べてしまったら、当然だけど、
もう一つのマシュマロはもらえなくなる。」


「私はちょっと用があるので、
15分ばかり席を外す。
後で帰ってきた時に、机の上に
マシュマロがまだあったら、
もう1つマシュマロをあげるね」
これがマシュマロ・テストの概要です。


”つまり、
今すぐに目の前にある1つの
マシュマロを手に入れるか、

実験者が戻ってくるのを待って
マシュマロをもう1つ(計2つ)
手に入れるか”


我慢する方法は
いろいろありましたが、結果として
15分間しっかりと待てた子供は、
全体の1/3以下であり、
大部分の子供は我慢できずに
2分以内に机の上にあるマシュマロを
食べてしまったようです。
(この実験では、ただの我慢ではなく、
 先を見据えて、今の行動を
 抑える能力(自制心)を見たもの)


 
興味深いことに実験者がその後、
マシュマロ・テストに参加した
子供を追跡調査したところ、
我慢強く待てた子供は、
我慢できなかった子供よりも
大学入試の成績が概してよく、
社会的に成功しやすい傾向が
あることがわかったそう。


さらに21年後、実験に参加した
子供が中年(40代)になった時点で
脳の検査をしました。
我慢できた子どもたちの脳では、
計画、社会行動の調節に関係する
前頭前皮質が、我慢できなかった
子供より活発に働くことが
わかりました。


 
この結果から、科学者たちは、
「幼少期の自制心はその後、
数十年経過しても続く傾向があり、
自制心が高いものほど
物事に熱心に取り組む傾向がある、
そういったタイプの人は、
社会的に成功しやすい素因が高い」
という結論を導き出しました。


諸説あるとは思いますが、
このマシュマロ・テストでは
マシュマロを我慢できない子供は、
自制心がないというふうに
定義づけられていました、
実は、童話からお金について
学べることが多いという事実を
ご存知でしょうか。


「勤労と貯蓄」を美徳とした
イソップ寓話
『アリとキリギリス』、
昔話は、子供に楽しく
読み聞かせるだけでなく、
金融リテラシーを高めることにも
役立ちます。


物語に乗せることで、
お金の話はいっそう身近に
感じられるもの、
お金との付き合い方に
明確な正解はなく、
自分なりの哲学が必要です。


今から質問する内容を
選択してみてください。

Q、あなたは3ヶ月後までに
「ダイエットする」と決めました。
しかし、宣言した直後、
友人が有名店のケーキを
持ってきました。

あなたはケーキを
A:食べる(ダイエットは明日から)
B:食べない(痩せるまで欲しがらない)

太るとわかっているのに
食べてしまうのはなぜか?

ケーキを食べてしまったあなたは、

A:ケーキを食べる利益(現在の幸せ)
B:スリムさから得る利益(将来の幸せ)

私たちは常に現在と将来の幸せの
どちらかを選択しています。
これは「アリとキリギリス」の
お話にも重ねることができます。

アリの好きな言葉
→「働けば豊かになれる」

キリギリスの好きな言葉
→「明日は明日の風が吹く」

キリギリスの言葉
「明日は明日の風が吹く」は、
割と近い未来の幸福を
最大限にする事を第一として
行動する傾向がある、
だから、ケーキ(マシュマロ)
をすぐに食べてしまうタイプ。
その代わり、
10年後がどうなってるのかは、
あまり重要視しない。

A(現在の幸せ)



一方で、アリの言葉
「働けば豊かになれる」は、
遠い未来の自分を思い浮かべて、
そのときの自分がどうなって
いるのかが一番気になる、
どちらかというと遠い未来の
自分に、より親和性を感じる
ケーキ(マシュマロ)を
我慢できるタイプ。
近未来にはあまり親近感が
湧きにくい、
だから、今すぐ幸福になる
といった行為が非常に苦手。

B(将来の幸せ)


ある人は、
比較的近い未来の想像力を
働かせるのが得意な一方で、
ある人は、
近い未来よりも
遠い未来の方に想像力を
働かせるのが得意だったりもする、


「自分ならどうするか」
「その選択肢から考えられる結末は」
など想像することにより、
様々な気づきを得ることができます。
シンプルで示唆的な昔話は、
そういった思考のトレーニングに
最適なのですね。


私たちが生きているこの現代は、
過去に例がないほど、色々な分野が
ほとんど爆発的に進歩している
特異な時代です。
通信、エネルギー、科学技術、
遺伝子工学、医療、その中の脳科学も
長足の進歩をしています。



物事を考えたり、発想したりも
脳科学に裏付けされた手法が
主流になり始めています。
頭脳環境をいかに柔らかくできるかが
ビジネスの世界では重要な時代に
なってきましたが、


ビジネスの文脈でも、
「古典」と呼ばれるいくつかの
有名な書籍があります。
長い間読まれ続けてきたもの、
さらに世界中で読まれている
ものには理由がある、
そこには、今でも通用する理論や
理屈といった成功の原型が
あるんですね。


なかでも『孫子の兵法』は、
2500年も前から
語り継がれているもの。

孫子の兵法で一番有名な言葉、

『彼を知り己を知れば
    百戦殆うからず 』

<意味>

言葉の意味をそのまま解説すると、
「相手を知り、自分を知ることで
どんな戦いも負けない」
ということになります。

何事においても、
主観的、一面的に判断をして
しまうことを戒めた言葉。

なお、負けない、失敗しない
ということは、必ず勝つ、
成功するということではなく、
本当に現状を客観的に理解できれば、
避けるべき時は速やかに避け、
時機を見て、為すべき時に為し、
不足している所があれば
それを補って、後に為す、
故に百戦しても危うからずと
云いきっています。

自分の事を知るという事は、
「自己分析」でしょうか。
他人の事を知るには
「観察」でしょうか。

紀元前500年頃の古代中国で
戦争指導を行い活躍した
孫子による戦略論ですが、
原型的なフレームワーク、
普遍的な本質を語るものだからこそ、
幅広い分野で活かすことが
できそうですね。


どの時代においても、
何をやるにしても、物事の本質は
結局、変わらないものなのですね。


あなたをいつでも応援しています!
ありがとうございます。


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