連載小説 奪われし者の強き刃 第2章39話 「最後の一撃 生死の狭間」
悠の一撃に繋ぐため安倍晴明が召喚した勾陳と対峙していた氷室ら。勾陳の力に苦戦を強いられながらも3人のコンビネーションによって勾陳の動きを一瞬止めることに成功し、遂に5分が経過した。
悠:
「みんなありがとう。これで終わらせる。」
スターク:
「なんだあれ?」
スタークたちは悠の『百鬼夜行』を見て驚愕した。長刀の形から出刃包丁のような形に変形しておりさらに、悠の体には見合わないほどに大きくなっており悠の身長の倍ほどの大きさまでになっていた。そして、勾陳のもとまで走っていき、体の一部を凍らされたため高度が低くなっていた勾陳のもとまでジャンプして構えた。
悠:
『百鬼夜行 百鬼の舞』
体の一部を凍らされたことに混乱していた勾陳だったが、急に目の前に現れた悠を即座に敵と判断し、今までとは比べ物にならないほど大きな火球を悠に向かって放った。悠の攻撃に合わせて黒い靄を取り除こうとしたソフィアだったが、勾陳の放った火球に熱量と光に勾陳を直視できず磁力操作ができなかった。
氷室:
「悠!」
悠:
『鬼童丸(きどうまる)』
悠が刀を振る直前、勾陳は全身に悪寒が走り一瞬自身の死を悟った。すると、勾陳は自身の体にまとっていた黒い靄を顔の前に一点集中させ悠の攻撃に備えた。
悠:
「無駄だ。」
振り下ろされた一撃は、火球と黒い靄もろとも勾陳の体を一刀両断した。さらに、暗雲たち混めていた空が割れ、綺麗な隙間から夜空が見えた。勾陳は灰のように消滅していき、空も元の夜空に戻った。
『鬼童丸』はパワー重視の『百鬼の舞』の中でも攻撃力が2番目に高い技である。しかし、あらゆる雑念を捨て極限の集中状態に入らないと使うことができないため、その間敵を相手してくれる味方がいないと使えない。その代わり、条件を満たしたときの攻撃力はすさまじく、原子力爆弾を軽く凌駕する程である。
悠:
「勝った‥。」
悠は『百鬼夜行』をとき、元の『夜行』の形に戻した。着地した悠は地面に『夜行』を刺して何とか倒れるのを耐えていた。
ソフィア:
「悠ー!」
スターク:
「おーい!」
悠:
「みんな・・よかった。無事だったんだね。」
すると突然、悠は口から吐血し倒れてしまった。
氷室:
「!悠、大丈夫か。」
氷室は直ぐに悠のもとに駆け寄って上半身を抱き上げた。何とか息はあったが流れ出た血の量が多く、心臓の動きが弱かった。
氷室:
「まずい!寧々聞こえるか?」
寧々:
「はい、聞こえます。」
氷室:
「今すぐ彩音に通信を繋げて第1の医療班を呼んでくれ。このままだと悠が危ない。最悪の場合死んでしまう。」
寧々:
「!かしこまりました。」
寧々は直ぐに彩音に連絡して、数分のうちに医療班が到着した。悠は第1に基地に運ばれ5時間にも及ぶ緊急手術が開始された。悠が心配で氷室・スターク・ソフィアの師団長達と草薙総司令も第1の基地へとやってきていた。
千代:
「大丈夫かしら?」
氷室:
「今は医療班と悠を信じるしかないですよ。」
千代:
「そうね、私が慌てての仕方がないわよね。」
そうしているうちに手術が終了し、第1医療班最高責任者の渡直哉(わたりなおや)が手術室から出てきた。
直哉:
「アッ皆さまお揃いで、ちょうどいいです。結果と容体をお伝えいたします。」
直哉:
「結果としましては手術は成功です。命に別状はありません。後遺症も残らないでしょう。」
その結果にその場にいたみんなが安堵の息を漏らした。
直哉:
「ですが、今までで一番ひどいけがであることは確かです。あの人はすぐに無茶はしますがここまでは初めてです。正直生きてるのが不思議なくらいにひどいです。まずは骨折12か所とヒビが20か所、さらに靭帯損傷Ⅱ度が右膝と両肘。これだけでも全治1年近くかかるでしょう。それだけではなく、臓器も損傷しています。日常生活には差し支えない程度ですが、手術が成功した今でも油断できない状況です。しばらくは絶対安静です。」
そのころ悠は夢のようなものを見ていた。周りには何もなく暗い空間に自分だけがぽつんと浮いているようだった。悠がここはどこかと考えていた時、突然1人の女性が現れた。
謎の女性:
「こんにちはあるじ様。初めましてかしらね。」
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