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U2 VERTIGO//2006 TOUR

 17年前の2006年と4年前の2019年。
同じ日、同じ会場で同じミュージシャンを観た。
U2である。
初来日は渋谷公会堂だった。白い旗を持って叫んでいたボノは今も叫んでいる。
2023年12月

 U2のコンサートには初来日から毎回毎回足を運んでいて、その度に驚かされるのだが、今回もまたアドレナリンがジャバジャバ出まくったコンサートだった。
 当初は、今年の4月4日に日産スタジアム4日限りの予定だったがThe Edgeの娘の病気で公演が延期となり、会場がさいたまスーパーアリーナに移り3日間公演に変更された。
しかも、今回の公演についてアリーナは全て立ち見で席が最初から用意されていない。まるで海外のビッグコンサートの様相で、それだけでも観る方をやる気にさせる。
もちろん僕はアリーナを希望していたが、諸事情によりスタンドからの観戦となった。残念。

 さいたまスーパーアリーナの会場に入ったとたん、僕の目に飛び込んできたものは、アリーナで蠢く人の群れだ。開演まで小1時間はあったが、ステージ前方中央はオシクラ饅頭状態であった。きっとU2が登場したら、人の河が何個もでき、それは渦を巻くだろうな、などと勝手に想像していたら、めちゃくちゃ興奮した。やっぱりアリーナだったかな・・・。

 大きなフロアは、総立ち。眼下には大きなライブハウスが広がっているようだ。
みんな声を上げて興奮状態。大人数が暴徒となる可能性もある。そんなことも考えていたらもっと興奮してきた。
 薄暗い会場にBGMが響き渡り、それまでの音とは明らかに違う音が観客を戦闘状態に促す。
会場暗転、The Edgeの印象的なエコーのフレーズが会場に充満する。そして、オン・ビート!3人のメンバーは演奏に集中。しかしBonoはステージ上にいない!視線をずらすと、なんと上手花道で日本の旗を振っているではないか!(へっぴり腰で、あまり格好良くなかったけど・・・)
「City Of Blinding Lights」の伸びやかなフレーズと疾走感溢れるリズムは、一瞬にしてスーパーアリーナをU2ワールドに染めてしまった。
すかさずLarryのドラムで「Vertigo」へ。冒頭のカウントを「Unos, Dos, Tres・・・」ではなく「いちぃ、にぃ、さーん!」と日本語にするBono。
おっ!今日のBonoは親日家だね、と思いながらも最新のU2ロックを体感した。なんせ、テレキャスの空ピッキングだけでロックしてしまうThe Edgeのギター。彼のギターは、コロンブスの卵のような発見がたくさんある。普通、空ピックだけでワンコーラスは流さないって!
3曲目の「Elevation」を歌い終わったところで、Bonoの一言「アツイ・・・」。これはウケタ。
ホント、今回のU2は、今まで全部参加してきた中で一番日本語をしゃべっていた。例えば歌詞の一部を“Temples of Kyoto”と変えてみたり、バックのスクリーン上に“爆弾”や“共存”などの文字が躍ったり・・・。

 政治色が強くなって、敬遠するファンもいると聞く。メッセージが色濃く作品に反映され、加えて自ら活動を行なっている姿を、エセ活動家と罵る人もいる。
しかし、彼らのステージはあくまでもロックショーだった。体に素直に入ってくるビートと頭に直撃する歌詞、目に直撃する照明などどれをとっても1流のロックショーだった。
その中に社会的なメッセージがあり、わかりやすく我々に訴えかけてくる。

 彼らの国アイルランドは宗教間の戦争がいまだに続いている。
その中で、人権を軽視する大人たちを彼らはずっと見てきたのだろう。だから、誰かがやらなきゃってことをやっているだけなのかもしれない。
わかりやすさでいえば、選曲もさることながら、曲順が良かったことも要因のひとつだ。
「Sunday Bloody Sunday」~「Bullet The Blue Skies」の反戦ソング2連発ではイラク戦争批判もあり、Bonoのハチマキ(決してバンダナではない)には宗教の共存を訴えるメッセージが込められた。スクリーンにはでかでかと「共存」の2文字。
そして「世界人権宣言」第1条~7条がでかでかとスクリーンに映し出されナレーションが流れた後、キング牧師に捧げた「Pride (In The Name Of Love)」を持ってくるところは、ウンウンと頷いてしまった。
 そして圧巻は「Where the Streets have no Name」でアフリカを救え!と叫び、アフリカ大陸に位置する国々の国旗が次々と映し出された。もう、僕は過呼吸ですわ。

 アンコールではBonoが「魔法の旅を体験しよう。みんな携帯電話を出してくれ。会場を巨大なクリスマスツリーに・・・。」とのMCに合わせて会場が暗転。客がみんな携帯電話の明かりを振り回して美しいイルミネーションを作り出すと、スクリーンには貧困撲滅のメールアドレスが表示され、参加を促すメッセージが・・・。これは単なるロックショーではなく、これがU2のロックショーなんだ、といちいち頷いてしまった。

 今までのU2の中で1番良かったライブだった。Bonoはちょっと太って格好悪くなってたけど、ヴォーカルパワーは相変わらずだったし、The Edgeのギターもユニークなサウンドを響かせ、空間の美学がそこかしこにあった。Adam & Larryのリズム隊は一言でタイト。「Sunday Bloody Sunday」のイントロのドラムがちょっと年を感じさせたが、それもご愛嬌。
ホントいいライブだった。
客も大盛り上がりで、一緒に観ていた家内は、新興宗教の集会みたい・・・とコメントしたが、ある意味ロックコンサートは集会なのだ。アーティストが右向け!って言ったらみんな右向くんだから・・・。

 音楽とメッセージがうまい具合に融合されたすばらしい作品を見たという印象で、さいたまスーパーアリーナを後にした。

12/4 さいたまスーパーアリーナ

City Of Blinding Lights
Vertigo~She Loves You
Elevation
Out Of Control
I Still Haven't Found What I'm Looking For~In A Little While
Beautiful Day
Angel Of Harlem
The First Time
Sometimes You Can't Make It On Your Own
Bad~Ruby Tuesday
Sunday Bloody Sunday
Bullet The Blue Sky~When Johnny Comes Marching Home~The Hands That Built America
Miss Sarajevo
Pride (In The Name Of Love)
Where The Streets Have No Name
One
*****Encore*****
The Fly
Mysterious Ways
With Or Without You

*****Encore*****
The Saints Are Coming
Window In The Skies
Vertigo

2006年12月6日
花形

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