見出し画像

Beauty and the Beat The Go-Go's

 ヤンキーガールがロックする。
中学時代に「銀座NOW」で観たランナウェイズはよくわからなかった。
下着姿でガーターベルトをだらしなく着こなし、股を広げて「チェリーボム!」って叫んでいる。なんか、そういうところでしか表現できないのかという気持ちで、受入れることができなかった。
 スージー・クワトロもキャーキャー叫んでいるだけで何を歌っているのかわからなかった。しかし、音楽雑誌「ミュージックライフ」では大きく取り上げられ、絶賛している。どうして女性がロックを歌うとヒステリックになるのかわからなかった。ジャニスの亡霊にでもとり憑かれているのだろうか。
 黒人女性シンガーなら余裕で歌いきっちゃうところも白人女性シンガーだと青筋立ててキィキィ言っている感じが駄目だったなぁ。
だから、80年代に入りパット・ベネターが出てきた時は「おお、さすがジュリアード!歌うめぇなぁ」なんて思ったものだ。
 80年代に入り、あるバンドがデビューし(1981年)、女性ロックグループで初の全米1位に輝いた。The Go-Go'sである。
ストレートなロックンロールとパンキッシュなサウンドが融合し、たちまちブレイクした。

 デビュー当初は女性だけのバンドということで中々受入れられなかったようだが、持ち前の明るさと根性、そして何よりもMTV世代の申し子のようにプロモーションビデオでは屈託の無い笑顔で女の子がロックバンドを楽しむ姿が好感を呼んだのだ。
 1981年発表のデビューアルバム『Beauty and the Beat』は、6週連続トップを記録し、女性だけのロックバンドで初の全米1位に輝いた。
まだ、マドンナもホイットニーもジャネットもスターになる前の話。
 ロスアンゼルスのローカルシーンから全米に羽ばたき、大ヒットを記録。翌年は『Vacation』も大ヒット。The Go-Go'sは、一大ブームとなった。

 何はともあれ、明るいロック。
原色の衣装を身にまとい、後の女の子バンドの定番ステップになったピョコピョコとミニジャンプを左右に繰り広げながら演奏する。
 ヴォーカルのべリンダは可愛い顔に似合わずドスの効いたヴォーカルを聞かせることもあり、いろいろな表情を見せた。
演奏力というより総合演出力といったほうが理解されるバンド。
このバンドの出現で勇気付けられたガールズバンドは全世界に数多くいるのでは無いだろうか。

 バンドはメンバー間の確執やアルコール問題などお決まりの理由で1985年に解散するが、その後も何度も再結成を繰り返し、今でも活動をしている。
 ベリンダ・カーライルはソロ活動で一番成功した。セカンドアルバムからシングルカットされた「Heaven is a Place on Earth」は全米1位に輝き、世界中のチャートで1位を記録した。
 そのベリンダもThe Go-Go'sにもどり、バンド活動をしているという。
 若さ溢れるガールズバンドに時代がマッチし、結果的に全米1位に輝いたが、今再び活動を続けるメンバーの心にあの頃の気持ちがあるか・・・。
リスナーは出てくる音でしか判断できないが、明るいメジャーコードをかき鳴らしていても、この30年間の歴史はマイナーにも7thにも聞こえてくるに違いない。

 今、改めて『Beauty and the Beat』に針を落とす。
フロアタムを連打し、粋が良いビートがスピーカーを揺らす。
「We Got The Beat」の跳ねるビートを聴いていると・・・元気になるんだよ。
元気になる音楽なんだよ。そこに理由は何も無いんだよ。
若さ溢れる良盤である。

2016年4月1日
花形

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?