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『マッドドッグス&イングリッシュメン』 ジョー・コッカー

 NTV系列の「24時間テレビ」は募金の使い込みがバレて一気に悪評が立ち、放送の打ち切りも検討されたそうだ。アメリカ人が「なんでチャリティー番組にギャラが発生するの?」なんて素朴な疑問を投げかけていたが、チャリティーという名のエンタメぐらいにしか思っていないんだろう。当時のコラムでも書いているが、救われている人がいると思えばそれはそれ。僕にはそんな印象しかない。
2024年8月



 8月。今年も「24時間テレビ」がやってくる。このチャリティー番組は今年で28回目だそうだ。昨年は約7億円の募金が集まり、過去の募金総計は約300億円になるという。募金は福祉車両や海外援助資金として使われており、他人との関係がどんどん薄くなる現代日本において、公然と人助けがメディアによって推奨された例ではないかと思う。金の流れや実態はわからないが、救われている人が少しでもいれば、それはそれ。何もしないで文句を言っている人に比べればまだマシだと思う。
ちなみに、僕は過去27年間でメイン会場の武道館に行ったことも無ければ、黄色いTシャツを着たことも無い。但し、募金をしたことが1回だけある。1981年8月23日。場所は代々木公園の特設会場だった。
高校生だった僕は、前日から友人の家に泊まっていた。「24時間テレビ」がまだ珍しかったこともあり、夜中に酒を飲みながら見ていたら、徳光さんの口から驚くべき発言が飛び出した。
「明日、昼過ぎから、場所は代々木公園の特設広場でチャリティーコンサートが行われます。ジョー・コッカーさんがイギリスからわざわざこの24時間テレビのために来てくれました!是非皆さん、お集まりください!」ジョー・コッカーといえば、ウッドストックにも出ていた人だ!夜中にちょっとだけパニック。

 普段は大勢の人で賑わう公園も小雨のせいか人影はまばらだった。しかし、特設会場にはどんどん人が集まり、異様な雰囲気になっていた。
 間近で観るジョー・コッカーは、必要以上に怖い顔をしていた。怖い顔からしゃがれた声が絞り出ていた。体を硬直させ、右や左に傾きながら手をプルプル震わせながらシャウト!

当時のテレビ画像


 映画《愛と青春の旅立ち》の主題歌の大ヒットも無い時期だったので、本当に昔からのファンが集まっていたのではないか。丁度、ザ・クルセイダーズの客演ヴォーカルとして『スタンディング・トール』(1981)を出したばかりだったせいもあり、そのアルバムからの選曲が多かった。でも「DELTA LADY」や「YOU ARE SO BEAUTIFUL」などの往年の名曲も披露してくれたし、最後は「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」でしっかり締めた。
 この翌年、映画《愛と青春の旅立ち》の主題歌が世界中で大ヒットし、ジョー・コッカーは大忙しになる。日本公演も行われた。但し、この公演は、たった55分で終了してしまう。ジョーは根っからの酒好きで(アル中)、歌っていて気持ち悪くなっちゃったらしい。引っ込んだかと思うと、客電が点き、なんだかなぁって感じで終了。嘔吐する声が聞こえたもんな。
 そんな不完全燃焼の時に、聴くと効果的なアルバムは、『MAD DOGS & ENGLISHMEN』(1970)しかない。

 総勢43名のバックミュージシャンを引き連れて(レオン・ラッセルやリタ・クーリッジがいた)、57日間・65回のステージを繰り広げたライヴの実況録音版だ(録音場所は1970年3月のフィルモア・イースト)。エネルギッシュなステージが展開されており、オリジナル、カバー取り混ぜて内容の濃い作品に仕上がっている。本当、暑っ苦しいブリティッシュ・スワンプ・ロックとでも言おうか・・・。夏の暑い日に聞くと、さしずめ「夏のガマン大会でドテラを着て鍋焼きうどんを食っている」感じか・・・。でも、名演だよ。
            
 今でも現役のジョー・コッカー。長いミュージシャン・キャリア・・・ヴォーカル一筋38年間!
愛は地球を救う!という言葉を見るとヨレヨレのジョーを思い出すんだよな。ちなみに、募金した金額は1000円だったかな・・・。

2005年8月26日
花形

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