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映画『バンディッツ』 サウンドトラック

 映画をよく見る。映画館でもホテルのペイチャンネルでもテレビの吹替映画でも関係なく月に10本以上は見ている。で、気になるのはやはり音楽。つまらない展開の作品でも、ある瞬間そのシーンにリンクした音楽が流れるとついつい惹き込まれてしまう。良い例も悪い例もあるが・・・。
 最近見た映画で『バンディッツ』(2001)という作品がある。ブルース・ウィリス主演で、監獄を脱走した2人組が銀行強盗をしながら行きずりの人妻と一緒にメキシコを目指すというもので、何のことはない名作『明日に向かって撃て』のオマージュかな、と思って観ていたら最後は『スティング』のような展開。
 はっきり言ってブルース・ウィリスの抑えた演技や、緊張感のないコメディ調のクライム映画は、B級作品の匂いがプンプンしたが、劇中の挿入歌にディランやペイジ・プラント、ボニー・タイラー、アリサ・フランクリン、グローバー・ワシントンJr.、マーク・ノップラー、U2といった一流の音楽が流れる。すると一気に画面に引き寄せられたのだ。
 特にファイヴ・フォー・ファイティングの歌う「Superman(It’s Not Easy)」は、この映画のクライマックスに相応しい楽曲として心に残った。
この「Superman(It’s Not Easy)」は、元々は2011年のアメリカ同時多発テロ事件後に賛歌としてヒットしたものだ。
 同時多発テロの被害に遭った人々を救うために、レスキュー隊や緊急救命士たちが命を落とす事故が起きる中、その隊員たちは家族を持った普通の人々ではあるが、命を救うために懸命な努力をしたスーパーマンである、と。命を落とした隊員たちを称える歌として人々の賞賛を得た。

 この歌が映画の中で使用されたシーンは、強盗を繰り返しながら逃亡生活に疲れ、友情も枯れていくシーンであり、レスキュー隊に対する敬意とは違うが、映画のシーンにはマッチしており、寂寥感溢れるサウンドはとても心地良かった。

 I can't stand to fly
 I'm not that naive
 I'm just out to find
 The better part of me
(もう飛ぶのは疲れたよ 僕はイイ人なんかじゃない たださがしているだけさ 僕の少しいいトコロを)
 Wish that I could cry
 Fall upon my knees
 Find a way to lie
 About a home I'll never see
(膝をついて泣けるなら どんなに楽だろう 安心できる場所を探している 一度も見たことのない安らげる場所を)
 Up, up and away…away from me
 It’s all right…You can all sleep sound tonight
 I’m not crazy…or anything…
(もっともっと 僕から離れて きっと大丈夫 今夜はぐっすり眠れるよ 僕はクレイジーでもなければ 何者でもない)

 

 映画の中身よりも、音楽が気になることがしばしばある。
特に、映画の内容に関係ないヒットソングを使いミスマッチとなってしまう悪い例もある中(例えば「ダーティーハリー5」でガンズ&ローゼスの「ウェルカム・トゥ・ジャングル」を流しながらヘビメタ野郎に扮したジム・キャリーが悪魔のような当てぶりをし、それを映画監督に扮したリーアム・ニーソンが派手派手しく演技指導するという不可解な使われ方をすると、笑いも失せる)、この映画の挿入歌の入れ方は実に的を得ていると思う。
 
 『バンディッツ』は、映画のサウンドトラックとしても聞くことが出来るし、五目飯のようなコンピレーションとしても成立している。
 脱獄シーンではペイジ・プラントの「ギャロウズ・ポール」だし、放浪のシーンではディランのホーボー・ブルースがマッチしている。大人な雰囲気のシーンでは定番のグローバーが囁くように歌えば、ボニー・タイラーは定番の「ヒーロー」である。恥ずかしいくらいにベタな選曲であるがそれも楽しい。唯一の難点は契約の都合ではあると思うが、U2が収録されていないことくらいか。これは惜しいなぁ。

2021年7月7日
花形

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