〈 のうた〉
私のためのうただ
はじめてきいたときにおもった
いまもずっと私をしめつづけている
私の のうた
「やっぱりやめよう。やめた方がいい」
夏服に変わったばかりの白い腕が見える、半袖のシャツが乱れている。
武文のズボンと私の制服は、私達と同じように床に無造作に散らばっている。
私はやっとパンツとブラジャーをつけ終えたばかりで、なんとも間抜けな格好のまま終わりを告げられた。
「・・・なんで?なんでもするって言ったじゃん。武文が望むなら、わたし何だって」
「それを、やめよう。俺が言えた事じゃないけど、もっと自分を大事に」
それ以上聞きたくなかった。
気付いたら武文の首をしめていた。
小さい手で、もう大人の様な武文のくびを締められるわけなく。
「 っ・・・・」
一瞬力を入れたけど、私はすぐに床に崩れてしまった。
「生きてたくないよ。何も楽しくないよ。じぶんを大事にしてどうなるの。わたしなんかを好きになってくれる人がいない世界でどうやって生きればいいの」
「ごめん」
武文の短い言葉に私達のどうしようもない終わりが込められていた。
座り直した武文が、私の肩を掴んで顔を見合わせようとする。
「ごめん。俺から告白して、なのにもう付き合えないなんて言って悪かった。彩香の事、振り回して悪かった」
「言ったじゃん。付き合わなくてもいいよ。好きな時に呼んでくれれば。武文に彼女がいたって、わたし」
その先は言えなかった。
気付いたら天井が見えてて、押し倒されたんだってわかった途端、世界が暗転するような煌めいているような、とても素敵な感覚がした。
武文にとって
私は
もう
忘れられないよね?
首を絞められているんだと気付いた時に感じたのは幸せだった。
私の顔は苦痛に歪んでいたのだろうか。
幸せに満ちていたのだろうか。
武文の顔から、雫が落ちる。
泣いているの?
私が嫌だからくびをしめているんでしょう?
どうしてそんなかおをしているの?
「ご・・・めん・・・ね」
世界が終わる瞬間、どうしてあんな言葉が出てしまったのか。
武文は弾かれたように私から離れて、私の体に世界が戻ってきてしまった。
体はこの世界に戻ってきたことを喜んでいるのか、嘆いているのか。
様々な苦痛とえづきの後、武文を見ると小さくうずくまって泣いていた。
あぁ、この人は私の首を絞めた事を後悔しているんだな。
私は な して いんだよ。
あなたは 。
シャツに袖を通す
武文が小さく謝っている
スカートを履く
すすり泣く声が聞こえる
靴下を履いて
うずくまって表情はわからない
髪を整えてドアへ向かって歩き出す
「忘れて。大丈夫。もう連絡しないし連絡を待たないよ」
「ごめんね。バイバイ」
掠れた声が、醜い私の最後に相応しいと思った。
初恋の歌
あとがきを明日投稿しようかと思います。
よろしければそちらもどうぞ。