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キタダ、詩を読む。…VOL.14 古今集の春の歌


谷風にとくる氷のひまごとにうちいづる浪や春のはつ花  源當純


動きも音も温度も伝わってくる歌。

実際にはまだまだ春というよりは冬の終わりと言うべき時期ながら、わずかな春のしるしが心理的には大きなエポックとなって、下の句で一気に横溢してくる。まもなく訪れる春本番へのあこがれが起爆していく感じ。

「春のはつ花」は氷を解かして「うちいづる浪」のしぶきのことでもあろうし(それが一般的な解釈)、実際に開花した梅一輪のことでもあろうし、心の中に開いた春への期待値そのものでもあるだろう。切れ字「や」がそうした重層的な解釈を可能にしている。

教え子Aが好きだと言った歌。




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