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1999年から2003年までの阪神タイガース その㉛

キヨは阪神に来なかった。

僕らは肩を落とした。
2001年もタイガースは最下位。

キヨがもし阪神に来たら。
どこの応援団が旗を振るのだろうか。
横断幕はあるのだろうか。
どんなヒッティングマーチになるのだろうか。
サテンのロングハッピを作りたい。

色んな事を考えたものだ。

シーズンオフ。
各メディアはキヨの動向を取り上げるも
巨人に残留する事が決まった。

只々、残念だった。

デイリーモバイルは沸いた。
的場が投稿。
その内容に感銘を受けた。

キヨ、あの時約束したじゃん。
サインボールをこっちに投げてくれる時、
おれの目を見て言ってくれたよね。
「分かった、待っとけ!!」と。
おれ、ずっと信じて待ってたよ。
おれ、タイガースファンなんだよ。

来てくれよ、キヨ。
タイガースには、
おれにはキヨが必要なんだよ。



その現場を見ていた僕にとって、
この方の気持ちは痛いほど分かった。

あの時キヨは笑顔で応えていた。
「分かった、待っとけ!!」
黄色のメガホンが揺れに揺れた。

キヨが阪神に来る。
夢にまで見た。

あの殺伐とした時代、
巨人の選手に心を許す阪神ファンなどいなかった。
キヨはその場の空気を一瞬で変え、
タイガースファンの心を掴んだ。

的場はきっと涙を流していたに違いない。

2001年も最下位に終わった。
しかしタイガースの暗黒時代は終わろうとしていた。

夜が明けようとしていた。
長い長い、本当に長い夜だ。

あの時代のレフトスタンド。
ファンとプロ野球選手の距離は近かった。
レフトスタンドの、あの一画。

白鶴からリリーフピッチャーに罵声を浴びせ、
ビールを投げた。
どんなに罵声を浴びせても巨人のリリーフは眉ひとつ動かさずマウンドに向かった。

SSK・関西ペイントの常連。
日本一の声量だったよ。
狂気に満ちていた。
そして、覇気に満ち溢れていた。

巨人ファンとの大乱闘。
警備員がバリケードを張り、
機動隊が出動した。
何人も流血しているファンを見た。

暗黒時代。
レフトスタンド。

ビジターのファンが命を懸けて応援する
神聖な場所。

そして、キヨと的場のドラマがあった。

2002年。
暗黒時代を脱出したタイガース。
甲子園の巨人戦の風物は幕を閉じた。
僕らが巨人の選手と会話をする事は無くなった。

貴方が通う野球場。
あの時代、
どんなドラマがありましたか。


清原さん。
あの夏の出来事、一生忘れられないよ。
僕たちと笑顔で話してくれて本当にありがとう。




続く

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