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1999年から2003年までの阪神タイガース その④

アイパー軍団はみんなイカれていたけど高校生の僕に優しかった。
叩けば埃どころか前科が出てきそうな連中ばかり。

ワキガの治療薬が無かったあの時代。
夏場はとんでもない臭いが充満していた。

格好なんて気にしない。
試合前、軍団は15分前に起きたような風貌で集合。
アンスリー前で合流しダフ屋の誘いを断りながらダイエーへ向かう。

ダイエーのフードコートの二階でアイパー軍団が10人以上で飯を食う。異様だ。
アイパーが焼きそばとメロンソーダを注文する際店員が引いているのがよく分かった。ジャンクフードは軍団が注文し手にとった時点でフードロスだ。

軍団の中に「ジャイ子」という気の毒な位不細工な女がいた。
あの時代に地方に遠征に行くガチな巨人ファン。
好きな選手はガルベス。
たまにあのCMの真似をしていたが「全く」面白くない。
あれ以来牛乳が飲めなくなった。

顔は吹き出物だらけ、100kgは超えているだろう巨体で鼻息も荒い。
登場した時点でセルでも勝てないようなエネルギー弾をあちこちに放っていた。
一度ジャイ子の鼻息で注文したばかりの焼きそばが一気に冷めた事があった。
その時点で食うことは出来ない。3アウトチェンジだ。

ジャイ子の凄いところは「巨人ファン」である事。

2001年までの甲子園はいつもピリピリしていて、
お互いが憎み合っていた。
流血も何度も見たし甲子園ボウル付近の自由席販売所前で殺し合いのような乱闘も何度も目にした。
機動隊や救急車も何度も見た事がある。
巨人戦の阪神ファンは怖かった。
阪神電車も怖かった。

阪神ファンと巨人ファンが仲良く飯を食う事なんて絶対に無かった。
そんな中ジャイ子は軍団に紛れ込みジャイアンツの法被を身に纏い、
軍団の連中に入団したばかりの阿部選手のリストバンドやタオルを見せつけてくる。
「これ、ええやろ〜??」
あのアイパーが引いていた。

巨人の選手を引かせるアイパー。
そのアイパーを引かせるジャイ子はベストナインの一人だ。

ジャイ子は開門時バイバイ、みんな〜!!と笑顔で手を振り三塁側へ消えていく。
「白鶴に遊びにきてな〜〜!!」
あの不細工な笑顔を忘れる事は出来ない。

ジャイ子、元気かな。
2001年を最後にジャイ子の姿を見ることは無くなった。
ジャイ子がいなくなり、やっと呼吸ができるようになった。

レフトの白鶴を見ると思い出す。
ジャイ子の好きな指定席。

リリーフカーに乗った投手も
ジャイ子の声援が耳に入ると打たれるだろうな。

続く

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