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『百年法』



上下巻でボリュームがある作品だが、面白くて一気読みしてしまった。

舞台は太平洋戦争で6発の原子力爆弾が投下されたもう一つの日本。アメリカで開発されたHAVIという不老化処置が導入され、多くの国民が不老不死を手に入れた。しかし、HAVIを受けてから100年後には死ななければならない「百年法」が存在する。

100年目を迎える前年から物語は始まる。
内務省官僚の遊佐は国民に百年法を受け入れてもらおうと働くが初年度対象者の閣僚が怪しい動きを見せる。なんとか阻止しようとする遊佐だが、首相から百年法凍結についての国民投票を行うとの発表。国民投票の結果、百年法は凍結されてしまう。

老いることなく、法律によって死ぬこともなくなり、永遠の命を手にした人間は驚きの行動を取り始める。

その後、百年法の制定、遊佐の活躍と衰退、百年法から逃げる者などが書かれており、最後に驚きの展開が待っている。


この小説を読むと自然と生きることと死ぬことについて考えていた。
死にたくはないなと思う一方で、永遠に生きていたいとは思わない。
その一見矛盾している考えを現実に行うとどうなるか、まるで実際にあったことのように書いてあり、ホラーではないのに読んでいると怖くてぞわぞわしてくる。

また、官僚である遊佐を中心に書かれているので、普段意識することのない政治の裏側を覗いたような気になれる。
やっぱり政治家って保身しか考えてないよね、とか
官僚って普段表に出てこないけど、こんなことしてるんだ!とか、政治について興味を持つきっかけになる作品だと思う。


読み応えのある小説を読みたいという人や、腐った政治家にスカッとする展開が読みたい人などにおすすめ。
わたしもまた何年かしたら読み返したい作品です。

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