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08.エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス #映画感想

1.今日の余談(マルチバース)

観る前になんとなく知っておくと楽しめるはず。
今作で使用されているSF要素、マルチバース。
昨今話題になっているので簡単に説明する。

私たちが存在する宇宙のほかに、似たような宇宙が複数存在する「多元宇宙論」のことで、これを受け入れてほしい。
そこにある宇宙達は、この宇宙と非常に似ている。
しかし、例えば自分が別の性別で生まれている。
他にも例えば、自分が別の人種・別の生物・もしかしたら生物ですらないかもしれない宇宙。
そういう異なった部分がある。

言わば「もしもの世界」だ。

2.あらすじ

ある時突然、いくつもの世界が並行して存在するマルチバースに飲み込まれてしまった1人の女性。やがて、それぞれの世界に存在する別の自分の記憶や特殊能力を手に入れた彼女は、すべての世界に迫る重大な危機に立ち向かう。

3.こんな日に観て

・人間関係を見直したい日
・渡辺直美を見て癒されたい日
・SFの最先端を楽しみたい日

4.評価・感想

★★★★☆4.5 みんな今すぐ観てくれ。
視聴方法:映画館
・現代版マトリックス。
 ∟出会いにより、無限の可能性を受け入れるか否か。
・アクション
 ∟柔であるカンフーと、人間関係表現の相性の良さが観れる。
 ∟見たことのないバトルが映像として面白すぎる。
・マルチバースの説明
 ∟自分の失敗の数だけ、夢がある。
 ∟常識にとらわれないほど、今と違う自分になれる。

以下、抽象的解釈。(最後にネタバレを含む)
哲学的思考について、自分の考えと一致を感じたのでまとめていきたい。

テーマ
【「なんでもできる」「好きなことをやれ」は聞き飽きた。】

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【第一段階】自己肯定感という現代病
この病の元々の原因は、他者との比較だと考える。
「何ができるん?」「長所は?」「ランキングを見てみよう」
これを迫られることで、他人との比較に目が行き、自身の喪失につながるのではないだろうか。
マイノリティーの生きづらさもここにある。
厄介なことに、この質問を投げかけてくるのは他者だけではない。自分自身もなのだ。
「このままで大丈夫?」「なんかあの人はいつも楽しそうやなぁ」「自分との差は?」
誰かに認めてもらわないと自分の良いところなんかわからない、だって長所は人と異なって優れているところ。
つまり長所は自分にとって当たり前の行動や思考なのだから。気づきようがない。

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【第二段階】処方箋としての“可能性”
この症状に対して処方されたのが“可能性”だ。
「やればできる。」「思考は現実化する。」「人生を楽しめ。」「世界は美しい。」
なんだってできるという無限の可能性、そこに希望をのせてくれる、無条件の肯定
今回のテーマである「なんでもできる」「好きなことをやれ」だ。

もしも人生を終えたくなった際は、2時間だけ時間をください。
このジャンルで見てほしい作品があります。
ディズニー+にある、ピクサー映画「ソウルフルワールド」です。

映像作品で描かれるのは、ここまでが多かったように感じる。

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【第三段階】強烈な副作用“自分とは”(自責と内省)
しかし思い返してみてほしい。
せっかくの処方箋も、希望にあふれる効果は、一時的ではないだろうか。
理由はこれに対してのカウンターがあるからだ。

それが「じゃあ君は何がしたいの?」

そして求められるのが、自己分析、自己分析、自己分析。
「今後の夢は?」「志望理由は?」「何のために生まれてきたんや…」
第一段階は他者比較であったのに対して、今度は自分と向きあうものになる。
そして、自分の中でどこかスッキリしていない行動原理を、人に説明するために論理で武装する羽目になる。

自分の思考と一致していないのだから、現実は現実味を失い、どこかゲームのような感覚で、いつ終わっても良いとさえ考えるようになる人もいるだろう。
気は休まらず、楽しくない。

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【第四段階】悟り
自分ばかりを見つめていると葛藤が続く。
そして自分を肯定するために、他者に対して自分を理解してもらおうと、なんとか行動原理の辻褄を合わせようとする。
もう疲れましたよね。

残念ながら、この症状を和らげる方法はまだない。

そこで提示されるのが、目を背けること。

自分から他者へ目を向けなおすことだ。
第一段階のような他者比較ではなく、目的として、他者を肯定するために目を向けるのだ。
自分では上手にできているつもりでも、自分より無事にこなす人はいる。
自分の苦手なところは、人に補ってもらおう。
自分を肯定してもらうために、論理の刃物を突き立てるのではなく、
相手の力を借りるのだ。
相手が攻撃的な場合でも、接する方法を模索しよう。
無限の可能性があるのだから、その人に合った接し方があるはずだ。

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人を愛し、尊重し、その人と合う方法でコミュニケーションをとる。
症状を和らげるには弱いかもしれないが、せっかくならくだらないことで笑って生きていきたいですよね。

自分を肯定することに躍起にならず、適度に目をそらし、他者を肯定する。
少しだけ、優しい世界になるはずだ。

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【映画の内容と照らし合わせると】
また小難しいこと書いてますね。
ただ作中ではこれが描かれていると受け取った。

娘は同性愛というマイノリティー。
なんだってできると知ったが故の、絶対感をもち。
そして目的のない暴走。
母親からの愛を受けることで、彼女に初めて愛を注ぐシーンが映る。

主人公は、理想と異なる現実でいっぱいいっぱいになりながら生きている。
国税庁からルール(マジョリティー)通りを求められる。
他の世界の自分と比較する。
そしてなんでもできるようになった際は、実際の旦那を疎ましく思う。
しかし、それでは勝てず。
旦那の器用さを目の当たりにする。
そして相手の力を借り(カンフー)、倒すのではなく、それぞれに適した(無限の可能性の中にある、その人との親しい間柄の宇宙での)接し方をすることで、受け入れてもらう。
最後は家族にも愛情を注ぐのだ。

5.まとめ

慈愛に満ち溢れた素敵な作品です。

この作品で、おいしいポイントは
「無限の可能性に出会えるものの、その世界へ飛ぶには、普段は絶対にやらない馬鹿馬鹿しい行動をする」ところだ。
(そういう行動をした、異なる宇宙の自分とつながれる)のが面白い。
これは現実でも一緒ですよね。
常識にとらわれないことが、面白い自分に出会える可能性を広げる。

しかも、これが圧倒的なコメディ要素につながってくる。

かつ、オマージュをたくさん体験できる。
・マトリックス
新しい価値観が現れ、自分で選択する。
オフィスビルでの戦闘。
あらゆる可能性が現実化する。
・MCU
話すアライグマ
マルチバースの鏡表現、第三の目。
やってますね製作のルッソ兄弟、さすがMCUフェーズ3を支えた男たち。

そして、誕生日おめでとう俺。
スターウォーズとかMARVELとかのフィギュアとか買っちゃおうかな。

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