「ほまこそ」 if BSSルート

 小さい頃から、ひねくれ気質で、かつ臆病者だった俺。

 だから、高校に入学して、みんなが燦然さんぜんと輝くアイドルの松林花梨まつばやしかりんさんに注目している中で。

 あまり目立たないけど、でも実は可愛くて、何よりも豊満ボディがたまらない、俵田育実たわらだいくみさんを狙っていた。

 この着眼点こそ、正にひねくれ者。

 あとは、ボッチさを活かして、誰にも気付かれず、その魅力が拡散する前に、何としてもモノにしたい……のだけど。

 前述の通り、憶病でもあるから。

 何だかんだ、行動に移せない。

 彼女がトイレに立った時、偶然を装ってアプローチする。

 それって何だか、ストーカーじゃね?

 とか。

 2人きりで同じ委員会になれるチャンス。

 でも、ここで手を上げたら、何か恥ずかしくね?

 とか。

 ひよっていたら……

「……あの、先生」

「おっ、どうした、桐生きりゅう?」

「あの、俺やっぱり……美化委員になっても良いですか?」

 教室内がひどくザワつく。

 なぜかって、桐生祐介きりゅうゆうすけは、クラス1のイケメンで。

 まさか、そんなやつが、リア充系の体育祭実行委員の座を蹴って、地味子、あるいは陰キャ向けの美化委員に行くなんて……

 みんなからお似合いと言われる松林さんと一緒にその委員になった、はずなのに……

「いや、でも桐生……」

「すみません。でも俺、前から美化委員の仕事に興味があって……」

 そう言う桐生のことを、俵田さんは、ジッと見つめていた。

 そして、桐生もまた、チラっと彼女に目を向ける。

 心なしか、微笑んだ気がした。

 おい、待て、何だ、これは?

 そして、その後、少し揉めつつも、何だかんだ、桐生の希望通りになった。

 俺はその晩、一切眠れなかった。

 いや、でも、まだ大丈夫。

 桐生は、松林さんとお似合いで、くっつくだろうし。

 まさか、俵田さんを狙っていた、なんてことは……

「……おい、祐介マジかよ?」

「えっ、どうした、どうした?」

「いや、こいつ……俵田と付き合うんだって」

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