【超短編小説】 希望の光
大人からの何気ない視線が気になる。
どう見られているのだろうか。
嫌われたらどうしよう。
中学生の朱里は、そのことばかり気になって仕方がなかった。
でも、数学の堀内先生は違った。
先生は私のことを馬鹿にすることはなかったし、
何よりどんな生徒にも温かった。
きっと、堀内先生はとても頭が良いんだと思う。
でも、先生はそういう姿を見せない。
先生は程よい距離感で色んな生徒を見つめていた。
朱里は、堀内先生に聞いてみた。
「どうして、先生は誰にでも優しいんですか?」
先生は「うーん、何でだろうな」と少し考えて、
「学校ってさ、いつの間にか出来上がった見えない壁みたいなものがあると思うんだよね。
そういう壁の中に取り残される生徒がいないように、先生はみんなに関わりたいと思ってる。
だから、どの生徒に対しても優しくなるんじゃないかな」と答えた。
「ありがとうございました」
朱里はお辞儀をすると、職員室を後にした。
いつになく、気持ちが穏やかになった自分がいる。
朱里の心には、希望の光が灯ったのだ(完)