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【超短編小説】 逆世界


変な世界だった。

人々は傘を反対に差していた。

しかし、それを誰しも疑うことはなかった。

雨はどんどん溜まっていく。

「持ち手が小さいから、雨の重さで手が痛くなるんだよね」と言っていた。

僕は変だなと思った。

次の日、人々はサングラスを後頭部につけていた。

しかし、誰も気にせず街を歩いていた。

太陽は容赦なく照りつけた。

「今日は眩しいな。眩しくて歩けやしない」と言っていた。

僕は変だなと思った。

次の日、人々は望遠鏡で地面を見ていた。

しかし、誰も退屈そうじゃなかった。

「アリが行列になってる。何匹いるのかな?」と言っていた。

僕は変だなと思った。

すべてが変だった。

傘は反対で、サングラスは後頭部につけて、望遠鏡で地面を見ていた。

でも、これがこの世界だった。

僕はいつの間にか、逆世界にいたのだ。(完)