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【超短編小説】 苛立ちを帯びたカケラ


上手くは説明できないが、彼女はその日、少しイラついていた。

なぜ、そう思ったのだろうか。

同じ店で毎朝買ってくるコーヒーを片手に持ち、

自分のデスクの上に置いた音が微かに大きかったからなのかもしれない。

あるいは普段は使うことのないボールペンをペンケースから取り出し、

ササッとメモを書き始めたからなのかもしれない。

特に目立った訳ではなかったが、

それがこれまでの雰囲気と違ったのは確かだった。

この事象をどう表現すれば良いのだろうか。

私は少し考え、次の言葉が浮かんだ。

【苛立ちを帯びたカケラ】

その11文字がしっくりと来た。

彼女の目線はまだメモの方にあった。

私はどう声をかけようか迷ったが、今はそっとしておこうと思った。

欠片はどこにだって、落ちているのだから(完)