【超短編小説】 砂時計を止める
砂時計を止めた。
私の行為を知る者は、誰もいない。
しかし、砂時計を止めなければ、世界は今頃とんでもないことになっていた。
この行いが公表されることは決してないだろう。
日の目を見ることはないけれど、確かにそれは必要なことであった。
この世の中には、ニュースにならなくても成し遂げなければならない陰の支えが数多く存在する。
これらの支えが無くなれば、人々が今日と同じように生活を送ることは不可能になるだろう。
それだけは何としても避けなければならない。
この時計の扱い方次第で、どれだけの犠牲が生まれることか。
「また、次の時計を止めに行かねば」
さもなければ、世界は崩壊する。
私は動き出した。
もう後戻りは出来ない。
待っている時間もない。
なぜなら、砂は絶えず落ち続けるのだから(完)