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食べ盛りはとうに過ぎても

先日の三連休初日に夫は出張で大阪へ向かった。
関西の商業施設でのイベント視察。
夫は仕事が終わって自分の実家で一泊した。

義父は大病したが、頑強な体力の持ち主で見事に生還した。
肺の病気で入院した病院で、あと4日か5日と言われたのだ。
義母は一度は覚悟したと思う。
回復してから、
「あの人は幸せな人だわ。」
と、心配して駆けつけた人みんなに感謝した。ポロポロ涙をこぼした。

義父は薬の副作用の一環で、倦怠感や気分の落ち込みがあったりするが、息子一家や孫が帰省すれば明るく話し、食欲も旺盛で元気も出るようだ。
何より義妹一家が近所に住んでいるのでこれほど心強いことはないだろう。

遠方に住む息子の帰宅もまた、義父と義母にとってはうれしいものらしい。

夫が自宅を出発した後、私は義母に電話を入れた。
義父に対するいつもの義母の愚痴は、50年もののビンテージで、
聞いている分にはおもしろいので私はいつも遠慮なしに大笑いする。
仲が悪いわけじゃない。
ふたりの様子が目に浮かぶ。

しばらく喋ったら

「お買い物行ってきますわ。あの子(夫)が帰ってきたら焼き肉を食べさせてやれってお父さんが言うのよ。嬉しいんやね。」
嬉しいのはお義母さんも一緒だ。
お肉も夫に持たせるおみやげも山のように買ってくると私は予想した。

翌日は私の母のかかりつけクリニックの受診日だった。
その日の夫のスケジュールは、
まず帰る支度をして実家を出て、同じ市内の私の実家に移動。
母の通院に付き添う。
診察室には父が一緒に入るので3人で病院に行く。
それから私の両親と昼食を食べて、夕方早めの新幹線で東京へ。
そうしてもらえるのは助かる。

病院が終わって家に帰ってきたところで夫が電話をかけてきた。
いつもより空いていたようだ。
薬のことを尋ねたら、薬局に処方箋をまだ持っていってないと言う。
実家を出て徒歩30秒のところに薬局があるが、父も母も夫も、3人とも忘れたらしい。

今すぐ薬局へ!
厳しい娘が指令を飛ばす。
電話の向こうでざわめく3人。

処方箋どこ置いた?
この薬は何?
ビオフェルミンや!
俺が飲んでるねん。
お母さんがもろたやつやけど。

電話の向こうを忘れる3人。

今朝、母に尋ねたら飲み忘れはないと言っていた。
明日の薬がないわけでもないのだが、夫がいる間に来月分を揃えておきたい。

夫と電話で話しているうちに、
母が自分で薬局へ行ったようだ。
一包化をお願いしているため受け取りまでには時間がかかる。
診察はいつも土曜日で、処方箋を提出して一旦家に帰り、閉店の14時前に取りに行く。
母の服薬ミスが発覚してから、ここ半年ほどは私が管理していたが、今日は夫に確認してもらおう。
「お義母さん帰ってきたわ。」
徒歩30秒なのでありがたい。

これから昼ビールと言う。
夫が小声で
「こっちも焼き肉やねん。」
がんばれ夫53歳。
実家をハシゴで焼き肉三昧。


薬局が閉まる14時前に電話したら、案の定、誰も薬を取りに行っていなかった。
「今すぐ薬局へ!」

埼玉から遠隔操作でやっと薬をゲットした。
母は近ごろは脳を活性化させる薬も飲んでいる。
薬の仕分けができなくなったが、
一包化した今は降圧剤と共に間違いなく服用できている。

夫は埼玉の自宅に大荷物で帰ってきた。
義母が、今が旬の金柑やら多種多様ないろんなおみやげを夫に持たせた。私の好きなお菓子もある。
母が作ったちらし寿司もあった。
みっちりと詰めてある。
我が家は大好き、母のちらし寿司で夕食だ。

夫はちらし寿司を実家で食べてきたと言う。
しかもてんこ盛りだったそう。
母のてんこ盛りはよく知っている。
焼き肉の後のちらし寿司を夫は断れずに完食した。
「腹パンパンや!」
夕食はパスした。
53歳、年相応の夫であった。

どっちの両親も息子(娘婿)がそんな年齢だとは思っていないのだ。
帰ってきた者にはとにかく食べさせたい。
一方で、高齢の両親たちが息子と一緒にいっちょ焼き肉でも食べようかという気になるのは健康な証拠だ。
まだまだ頼もしい。
食べ盛りの息子がいる。
両親たちもまた、それほど歳は取ってないという気分になるのかもしれない。
親がひとときでもそう感じたのならいいね。
腹パン夫と語りあった。



























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