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車中生活45日目:小さな車の温もり


朝6時。いつものように目が覚める。車の窓越しに薄明るい空が見えた。道の駅の駐車場は静まり返り、時折聞こえる鳥のさえずりが新しい一日の始まりを告げている。車の中はほんのり暖かく、外の冷たい空気を感じさせない。昨夜もカーテンをしっかり閉めて寝たおかげで、朝方の冷え込みもさほど気にならなかった。

厚手のエアーマットの上で寝袋にくるまりながら、もう少しこのままでもいいかなと思ったが、気を取り直して起き上がる。「さて、今日も始めるか。」と心の中でつぶやきながら、いつもの道の駅のトイレへ向かった。

トイレに入ると、ひんやりとした水が手に触れる。歯磨きをして顔を洗う頃には、すっかり目が覚めていた。このルーティンは、家に住んでいた頃と何ら変わらない。それなのに、どこか違う感覚がある。それは、自分のペースで暮らしているという実感。周囲のルールや固定費の重圧に縛られることのない、この自由さ。

車に戻ると、窓の外で日差しがだんだんと強くなっているのが見えた。エンジンをかける前に、温かい飲み物でも飲もうと、コンパクトなカセットコンロを取り出してお湯を沸かす。コーヒーの香りが車内に広がり、簡素な朝食でも十分な満足感が得られる瞬間だ。

「45日か…」とふと自分に問いかける。最初はどうなるか不安だった車中生活。寒さや不便さに耐えられるのかと心配していたが、今ではそんな感覚は薄れ、むしろ快適さを感じている。小さな空間での生活は、必要最低限のものだけを残すことで、心まで軽くしてくれる。

午後は、少し遠くの道の駅を目指して車を走らせた。道中の景色は美しく、これまで住んでいた家から見える風景とは全く違う。「こんなに自由でいいのか」と、時々思う。

日が暮れる頃には目的地に到着。夕食を買いに寄ったスーパーでは、安売りされていた弁当を手に取り、車に戻った。カーテンを閉め、ランタンを灯して食事をとる時間は、穏やかで静か。

この暮らしは、確かに便利さには欠ける。でも、心地よい不自由さとでも言うのだろうか、どこか懐かしいような感覚が心に残る。車中生活が45日を過ぎて、ようやく自分にとっての「家」の定義が少しずつ変わってきた気がする。家というのは、ただの建物ではなく、自分が安心できる場所。その意味では、今のこの車の中は、間違いなく「家」と呼べるだろう。

明日もまた新しい場所で、同じような一日が始まる。けれど、それがたまらなく心地よく感じるのだから不思議だ。

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