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【読書日記】 「奇跡のフォント 教科書を読めない子どもを知って UDデジタル教科書体開発物語」を読む

以前からフォントには関心があり、オンラインやテレビ番組で著者が語られているを拝見し、共感共鳴していたのでした。


初版:2023年4月6日
発行元:株式会社 時事通信社
著者:高田 裕美
内容:読み書き障害でも読みやすいフォントが生まれるまでのノンフィクション!  (Amazonより)


「奇跡のフォント」の本当の意味

最初にこの本のタイトルを見た時、「UDデジタル教科書体を使用することで、これまで文字を読むことが困難だった子どもたちが読めるようになった。奇跡のようなフォントなのだ」という意味だと思いました。

しかし、それは間違いでした。
UDデジタル教科書体は、多くの子どもたちに、「読める」という体験を提供してくれた優れたフォントであることは確かです。
加えて、長い間温めて開発されてきた、そして時代の変化によって幾度も追い風になるようなことが重なり、世の中に出たということなのでした。
まさに奇跡が重なって生まれたのです。


いろいろなフォントがありますが・・・

この本は、単なる「フォントの開発記」ではありません。
内容の濃い、濃いものです。

・著者である高田裕美さんの仕事の仕方、生き方が語られている
・フォント開発において、エビデンスをとっている
・フォントに関わって、いろいろな機関が関わっている
・フォントの見方について具体的に書かれている
・教育現場の私たちが教わることがたくさんある   など

子どもたちにとって、見せるフォント、字体がいかに重要であるか、改めて考えさせられました。



私はこれまで「文字の形」にこだわっていた

私は長年、学校で障害のある子どもさんに関わってきました。
私の出会った子どもさんたちはみな、ひらがなを私たちと同じように読んだり書いたりすることはできません。
ひらがなに興味を持ち始めている、少し読むことができる、一文字ずつだったら読めるなど、実態は様々です。


最初にどのような文字を見せるかが大切



しかし、どの子どもさんにとっても、私たち教師がどのような文字を見せるのかは非常に重要です。

私は次の2つのことを大切に考えています。
1 子どもたちに今後書いてほしいと願っている文字の形で書いてみせる
2 フォントを使う時には、書いてほしいと考えているものと大きく異なるものは使わない

1についてですが、こんな経験があります。
初めて小学校に勤務した時のことです。その小学校では、ひらがな導入期の一年生に対しては、独特の文字を使っていました。「はねない」「2本の線はできるだけ平行に書く」など、いくつかルールがありました。
私は最初非常に違和感がありましたが、今、障害のある子どもさんに対して、この文字を使って学習をしています。
子どもさんにとって非常にわかりやすく、書きやすいのです。
ひらがな導入期の、発達がゆっくりの子どもさんが、初めから「はね」も上手に書くことよりも、文字の主要な要素をきちんと捉え、正しく認識してもらえるような文字を書くことの方が大切だと思うのです。

「ひらがなを書いているけれども、なんと書いているのかわからない」という子どもさんが時々見受けられます。残念でしかたがありません。
導入期に、どのような文字を見せ、どのような文字を書かせたいかをきちんと考えて指導しなければなりません。


どのような文字を書かせたいか


2については、こんなことがあります。
なぜかよく使われる丸ゴシック体。学習のプリントやカードの文字にこの文字を使用するのをよく見かけます。なぜ多用するのかわかりません。

かわいいから?
いや、学習に「かわいい」は必要ないでしょう。

なじみがあるから?
いや、なじみがあると考えているのはあなただけでしょう。子どもさんにとっては、判別しにくい。また、こんな形の文字を書かせようと思ってないでしょう?

教師は、どんな文字を書くか、見せるか、使うかを子どもの目線に立って選ぶ必要があります。(当たり前のことだと思うのですが、現場では割と軽く扱われているように思います。)


教育現場の先生方に是非読んでいただきたい本です。


ダイバーシティの視点も大切







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