見出し画像

【読書日記】 「初老耽美派よろめき美術鑑賞術」を読む

高橋明也さん、冨田章さん、山下裕二さんの3人の対談、「おもしろくないはずがない」と読み始め、あっという間に読み終えました。



第1刷:2019年12月5日
発行元:毎日新聞出版
著者:高橋明也 冨田章 山下裕二
内容:名画・名作を堪能したい! と思っても、人気の展覧会はどこも激混み。意外に初老のカラダにはきついもの。加えて、いまさら熱心に美術の“お勉強"もつらい……。そんなお悩みを解決する1冊。仲良し美術史家3人によるユニット「初老耽美派」が常設展をめぐって楽しみ方を紹介! ベテランたちがたどりついた美術鑑賞の極意とは?読めば、「美術ってこんなに気軽に楽しんでいいんだ! 」と目からウロコ。さっそく美術館、博物館に出かけたくなるはずです。(毎日新聞出版ホームページより)


おもしろおかしい初老3人組

高橋明也さんは三菱一号館美術館長。
冨田章さんは東京ステーションギャラリー館長。
山下裕二さんは明治学院大学文学部芸術科教授。
こんなすごい方々3人がいっしょに国立西洋美術館、東京国立博物館を鑑賞し、作品について、観賞の仕方について、初老ならではについて、など、非常におもしろおかしく対談されています。
ゆるくて時々「プッ」と笑ってしまうこともありました。「代表的な美術史家たちがこんな話をされるんだ〜」という驚きもありました。


クスッと笑えるところもある

作品についてのエピソードがおもしろい

お気に入りの作品、嫌いな作品、気になる作品、意味のある作品などについてエピソードを交えて話されています。
私はその中の「カペちゃん」のエピソードが大変おもしろかったです。国立西洋美術館にある「マリー=ガブリエル・カペ(自画像)」の魅力や購入までの話は3人ならではのエピソードです。是非、この「カペちゃん」の絵を見てみたいと思いました。


カペちゃんってどんな人だろう


作品のカラー写真が口絵に数点掲載されています。
対談には、それ以外に多くの作品が出てきます。
私は知らないものが多かったので、その都度、ネットで画像検索したり、ウイキペディアで他の情報を得たりしながら、読みました。
その過程が実に楽しかったです。

3人が夢中になって話されている作品の画像を見て、
「これか!」と納得したり、
「ん?」と疑問に思ったり。
私なりの鑑賞ができました。


その作品が「好き」か、「嫌い」かでいい

冨田さんが話されていることが非常に印象に残りました。
以下、引用です。

専門家ではなく、美術館に行って純粋に楽しみたいという人たちは、好きか、嫌いかがまず、作品の基準を測る出発点でいいんだよ。「なんか、好きだな」「なんか、嫌いだな」という感覚は、見る人のそれまでの経験や知識によって変わるもの。要は見る人それぞれの「自分」が出る。一人ひとり違う人間なんだから、そこに良しあしの絶対的判断を持ち込むのはナンセンスだよ。美術を見る時の「好き」「嫌い」は、非常に重要な感情。

p154~p155


好きか嫌いかという感情が大切

私は美術館に行くのが大好きです。
そんな話をすると、「私は絵のことわからん」とか「美術館行っておもしろい?」などと言われることがあります。
「絵のこと、わかってるかわかってないかはわからんけど、とにかくおもしろい」と答えます。

絵や建築物について本を読むなどして知識は増えました。
けれども、「わかるから美術館へ行く」のではないのです。
美術館という空間が好きなのです。
その時々で、惹かれる作品にどっぷりと気持ちをそそぐのです。


私は、冨田さんがおっしゃる「好き」「嫌い」の感情をまさに美術館の中で味わっています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?