ポンコツ忍者チームのキラキラな日常⑤厠の花子さん
ここは伊賀の杜大忍術専修学校の旧校舎。
その現在は使われなくなった厠には、ある言い伝えがあった。
「厠の花子さん」と呼ばれるおかっぱ頭の幼い童の霊が、用をたしにきた生徒を脅かしては、ふんどしに新たなシミを作るという悪辣非道なものだ。
そこで、ポンコツ忍者チーム改め、悪霊罵星図(あくりょうばすたぁず)は、その悪霊退治のため、噂の厠へと向かっていた。手元を照らす蝋燭は心許なく、薄暗い廊下、軋む床、吹き込む風で揺らめく僕らの影、あのゆるりんとひらりんが静かになっている!一階の廊下を曲がった先にある古い厠。花子さんが出るというそのいわく付きの場所へ辿り着いた時、僕は重大な事実に気がついてしまった。
その厠が女子専用だということに!
当然、男子である僕はこれ以上の捜索はできない。つまり、これより先は、ゆるりんとひらりんの2人だけで悪霊討伐に挑まなければならない。その事実を2人に告げると
「ふ、ふ、ふざけふざけんじゃないわよ。このメガネ!メガネ指紋でベタベタにするぞぉ!」と、泣きながら怒るゆるりん。
「だめ!一緒に!だめ!」
高速で首を横に振り続けるひらりん。
2人ともすごく必死である。
しかし、ダメなものはダメである。古今東西、未来永劫、如何なる理由があろうとも、男子が女子トイレに踏み入れるなど、あってはならないのである。例え、ゆるりんとひらりんの頼みであろうと、その鉄の掟を破ることは、万死に値する。
と、いうわけで、泣き叫ぶ2人を無理矢理厠に押し込める。と、同時に蝋燭の火がフッと消える。暗闇が辺りを包む。半狂乱の2人はトイレのドアをバンバン叩くが、扉は開かない。
「ねぇ、あそぼ」
やけに甲高い声色で囁く声。
ケタケタケタという笑い声が響き渡る。
その時、厠の扉が開き、ゆるりんとひらりんの2人が廊下に転がり出てきた。そのまま脱兎のごとく走り去り、校舎外へと消えていった。
僕は、声色を変えた笑い声を止めると、おかしさを堪えられず腹を抱えて笑った。
(いつも、2人には色々イタズラをされているから、今日はおもいっきりやり返してやった!)その達成感と優越感が僕を包んでいた。
「ほんと、おかしいよね」
おかっぱの童が、にっこりと微笑む。
僕も脱兎の如く駆け出した!
ふんどしに新しいシミが増えたことは、2人には内緒にしておこう。
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