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「孫子の兵法」を喧嘩仕様に訳したらやばかった 2.作戦篇


(作戦篇①)自分には価値がある

■【原文】
『孫子』曰く、
およそ兵を用うるの法は、
馳車千駟、革車千乗、帯甲十万にて、千里に糧を送る。
則ち、内外の費、賓客の用、膠漆の材、車甲の奉、
日に千金を費やして、然る後に十万の師挙がる。

●【訳】
孫武先生は言いました。
今まで自分が生きてきたことには、食費とか、衣服雑貨費とか、医療費、学費、住宅資金など、決して安くはない経費がかかっています。
自分には誰かにとって生きる価値があります。
誰にでも生きる価値がある。
そのために、自分を傷つけに来る者に対して、戦う価値があるのです。

▲【解説】
原著では、軍隊を動かすには莫大な費用がかかりますよ、ということが書かれてあります。だから時間をかけて戦争(ケンカ)をすべきではないということです。
これを、私は全く違う意味に改訳しました。
軍隊を派遣するためにかかる経費を、これまであなたにかかってきた費用に置き換えて、自分自身に生きる価値があることに結びつけました。
特に自衛のために戦う場合については、大きな意味を持つはずです。
また原著の意味する費用については、そのままでは個人レベルのケンカに置き換えると、ほとんど意味はないです。




(作戦篇②)喧嘩は早く終わらせる

■【原文】
その戦いを用うるや、勝つも久しければ、則ち兵を鈍らし鋭を挫く。
城を攻むれば、則ち力屈す。
久しく師を曝さば、則ち国用足らず。
それ兵を鈍らせ鋭を挫き、力を屈し貨を尽くさば、則ち諸侯、その隙に乗じて起こらん。
知者ありといえども、その後を善くすること能わず。
故に兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久を見ざるなり。
それ兵久しくして国利あるは、いまだこれあらざるなり。
故に尽く用兵の害を知らざれば、則ち尽く用兵の利を知ること能わざるなり。

●【訳】
ケンカは長引かせると害が多い。
だから、ケンカは早く終わらせないといけません。
スタミナが切れたら反撃される。
そのうち他の人間から横槍が入る。
長く続けていれば非難される。
少しでも相手に反撃の隙を与えると、そこから盛り返してきて勝てなくなります。
だから、早く相手を倒すことが(ケンカや戦争では)正しい戦い方なのです。
ケンカにルールはありません。
無様でも汚くても卑怯でも勝てばよいのです。
負けたら終わりなのです。
ケンカは遊びでもスポーツでも格闘技でもありません。ただ相手を早く倒したほうが勝ちとなります。
このように、暴力を使うことの弊害を知らなければ、暴力を使って利権を得ることはできません。

▲【解説】
※巧久を見ざるなり…………巧妙に優れていて長びく例はない。

∞【リンク】
暴力はひと思いにやってしまわなければいけない。『君主論』
2つの条件が揺るぎなくそろったら『強力行使』をする。『小説 ケンカの神』



(作戦篇③)敵に依存せよ

■【原文】
善く兵を用うる者は、役、再び籍せず、糧、三たびは載せず。
用を国に取り、糧を敵に因る。
故に軍食足るべきなり。
国の師に貧するは、遠く送ればなり。
遠く送れば、則ち百姓貧し。
師に近き者は貴売す。
貴売すれば、則ち百姓、財尽く。
財尽くれば、則ち丘役に急なり。
力屈し財尽き中原の内、家に虚し。
百姓の費え、十にその七を去る。
公家の費え、破車罷馬、甲冑弓矢、戟盾矛櫓、丘牛大車、十にその六を去る。
故に知将は務めて敵に食む。
敵の一鍾を食むは、吾が二十鍾にあたり、
萁杆一石は、吾が二十石にあたる。

●【訳】
ケンカや戦争の場合は、自分に必要な敵から奪えるものは奪ったほうがよい。敵の利用できることは利用しなければいけない。


▲【解説】
原著では、物資を敵地で調達せよ。と説いているのが本来の意味です。
ここは、有事では敵に頼れることは敵に頼ればよい。自分に必要な敵から
奪えるものは奪ったほうがよい。つまり、敵は利用すればよいという意味に改訳しました。もちろん、ケンカだから許されるということで、普段から人間関係でこのようなことをしていては、自分も同じ事をされてよいということになります。
※萁杆…………当て字。(原著ではくさかんむりに忌とのぎへんの杆。キカンと読み、豆がらと藁のこと)



(作戦篇④)怒りなくしては、喧嘩で相手を倒せない

■【原文】
故に敵を殺すものは怒りなり。

●【訳】
自分よりも強い相手を倒すためには、強い怒りが必要です。
ムカつきではなく、憤りです。
それは個人的な一時の感情よりも、
義憤ははるかに長続きするでしょう。
恐怖を乗り越えて、臆病さを克服するためには、
この内に秘めた怒りこそ、喧嘩で勝つことに必要な感情です。

▲【解説】
とくに素人同士のケンカの場合だと、原文そのままでも通りがよいですが、早まった解釈が一人歩きしそうな危険性はあります。
若年の怒りは間違った方向に発展することがありがちだからです。
岩波版『孫子』では、
「敵兵を殺すのは、奮い立った気勢による」と訳しています。
守屋洋版『孫子』では、
「兵士を戦いに駆り立てるいは、敵愾心を植えつけなければならない」と訳されています。

∞【リンク】
「戦争論」…………軍事的天才の怒りは、義憤であり激情であり長続きする。



(作戦篇⑤)喧嘩の素人は勝って負ける

■【原文】
敵の貨を取るものは利なり。
故に車戦して車十乗以上を得れば、その先ず得たる者を賞し、而してその旌旗を換え、車は交えてこれに乗り、卒は善くしてこれを養わしむ。
これを敵に勝ちて強を増すと言う。

●【訳】
ケンカで相手を倒しても、
それによって自分の社会的評価が下がると、
それは本当に勝ったとは言えない。

▲【解説】
原著では、敵の戦車や軍需物資をたくさん奪ってきた者に、手柄を明らかにして報償を与え、兵士の士気が上がり、ひとつの戦闘に勝つことで、こちらの物資が増えていき、物資と士気の両方から、軍がさらに強くなっていくということが書かれています。
兵は詭道の考え方のように、戦争という特殊な状況においては、敵の物資を奪うことは盗んでも罪として数えません。それは次の語句に続くのですが、何よりもまず勝つことを尊ぶからです。
この段落も、護身術版『孫子』では、そのままでは使えなかったので、せめて「勝ちて強を増す」という箇所をヒントに広げたことを書きましたが、原著とはぜんぜん違うことを書いています。




(作戦篇⑥)喧嘩は最短で終わらせよ

■【原文】
故に兵は勝つことを尊び、久しきを尊ばず。
故に兵を知るの将は、民の司命、国家安危の主なり。

●【訳】
ケンカは最速で勝つことこそ全てである。
これを知らない者は、よく争いをおこしたがる。

▲【解説】
※どのような人物を、将軍に任命するべきか。               




『孫子』の極意をわかりやすく→『ケンカの神』~例えば いじめっ子を倒すには~


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