「コップ」《詩》

レストランの水の入ったコップはみんな同じ顔で
同じところから生まれた兄弟みたいにシンとして
私の前に立っている
公安警察より静かに
きっと人間たちの何かを監視してる

私はコップに何かを知られてしまったかもしれない
そのせいでもしかしたら運ばれてきたハンバーグに
食べる前に食べられてしまうかもしれない
フォークを入れる瞬間パカッと割れて
チーズの舌がびよ~〜んと伸びて喉仏に
くっついてくるかもしれない 
そして私の頭をハンバーグの中にスポンと
吸い込んでしまう
シィィーン

いつの間にか頭はハンバーグやカキフライの人間がたくさんうろつくようになるかもしれない
肉まんの頭をした店員が「あんまんお一つですねンピッナオピッ」と言うかもしれない
人間頭を持った残り少ない人間はきっと恐怖だ 
会社や学校ではみんながふり返る

たべもの人間たちは水入りのガラスコップを持って夜な夜な海まで行進する 
トロントロン カポォームカポォー厶
チャポチャポン チャポチャポン 
海の中には頭だけになったエビフライやチーズつくねがスイスイ泳いでいる
そのうち地上には人間が一人もいなくなって建物と人工知能だらけのワンダーランドになるかもしれない
ガラスコップの水滴はそんな世界を夢みて日夜
人間の前に立ち続けるコップの脂汗だったりして、

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