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自由エネルギーと感情熱力学(7/15/2022最終版)

※自由エネルギー原理については、こちらに最新版の解説がありますのでご参照ください。
  自由エネルギー原理について誰でもわかる、明快かつ深い解説 -1-
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 この考察は、従来のNote記事(熱力学と感情ポジティブ感情サイクルとカルノーサイクルなど)で展開してきた感情作用を熱力学的に理解する試みについて、Fristonの自由エネルギー原理などの情報理論アプローチを援用し、その妥当性を確かめるとともに発展を期するものです。

 当初、自由エネルギーとカルノーサイクルの同型性を考えていたが、正確には期待自由エネルギーとカルノーサイクルが同型であるという結論に至った。

 Fristonが提唱した、自由エネルギー原理(FEP)とは、「環境と平衡状態にある自己組織化システムは、その自由エネルギーを最小にしなければならない」という原理である。この原理は「適応的なシステムが、無秩序へ向かう自然の傾向に抗して、持続的に存在し続けるための必要条件」 とされている。(Friston 2010, 吉田・田口 2018)

 ここで注意すべきは、生命などの自己組織化システムは、非平衡開放系であるという点である。平衡状態にとどまるものは生命ではない。生命はその動的過程で自由エネルギー最小化を目指す局面があるが、自由エネルギー最小化は生命の最終目標ではない。また上記の定義にもあるように、生存の必要条件ではあるが十分条件ではない。

 逆説的だが、自由エネルギーを最小化するためには、最小化限界より大きな自由エネルギーの存在が必要である。最小化限界より大きな自由エネルギーの存在こそが自由エネルギー最小化の必要条件なのである。そこで、生命は、最小化限界より大きな自由エネルギーを得るという行動に出る必要がある。さらに、最小化限界より大きな自由エネルギーを得るという行動には、生きていること(生命の存在)が必要である。

 すなわち以下のように必要条件が連鎖する。

生命の存在→自由エネルギー最小化→最小化限界より大きな自由エネルギーの存在→最小化限界より大きな自由エネルギーを得るという行動→生きていること(生命の存在)

 このような条件の連鎖が生命の本質であろう。

 Fristonは後年、自由エネルギー原理を発展させた期待自由エネルギーの考え方を発表したが、これは、最小化限界より大きな自由エネルギーを得るという行動(認識価値による行動)も含めたものであり、その意味では、期待自由エネルギーの考え方が生命の原理であると言えるのではないだろうか。
2022/11/9削除 自由エネルギー原理について誰でもわかる、明快かつ深い解説 -5- を参照ください。


2022/12/16 一部名称のみ最新版と統一

<参考・引用文献>

Friston, K. (2010): The free-energy principle: a unified brain theory?
吉田 正俊・田口 茂 自由エネルギー原理と視覚的意識 日本神経回路学会  Vol. 25, No. 3, 2018
https://doi.org/10.3902/jnns.25.53
国里 愛彦・片平 健太郎・沖村 宰・山下 祐一 計算論的精神医学 - 情報処理過程から読み解く精神障害 勁草書房 2019
田崎 晴明 熱力学‐現代的視点から 培風館 2000




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