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ポジティブ感情サイクルとカルノーサイクル(10/28/2021修正版)

感情の3次元モデルの右側面は、感情価が高い、つまり快の平面になります。私は、この平面で、冷静→興奮→活気→弛緩→冷静という感情が、スムースに循環していくことが、Well-beingだと考えており、これをポジティブ感情サイクルと呼びたいと思います。

図2

感情の3次元モデルでは、Russell(1999)やApter(1989)などの従来のモデルでは1変数であった覚醒という変数を、強さと広がりという2変数に分けています。これは、熱力学における示強変数と示量変数の考え方にヒントを得ています。

熱力学においては、示強変数として温度、圧力、化学ポテンシャル、示量変数としてエントロピー、体積、物質量などの変数があります。示強変数と示量変数はかけ合わせるとエネルギーの次元になります。エネルギーは示量変数でかつ状態量(stock)(系のある状態が決まれば一意に決まる量)ですが、仕事や熱は、変化量(flow)(ある状態から別の状態への変化が起こった時に、その変化に対して一意に決まる量)です。仕事は体積など「見える」変数の変化に比例する変化量ですし、熱はエントロピーという見えにくい変数の変化に比例する変化量です。そして、それぞれの係数が圧力(仕事の向きの定義によってマイナス符号がつく)と温度という示強変数になります。

熱力学以外でも、力(示強変数)✕変位(示量変数)=仕事(エネルギー)や電位(示強変数)✕静電容量(示量変数)=静電ポテンシャル(エネルギー)等の例があります。

以上物理学の分野で、数多くの実験事実に裏付けられている考え方を、感情にあてはめて考えてみます。なぜならば、神経科学の発展は、感情の基盤に神経活動を置くことの妥当性を高め、更に神経活動の基盤に、生化学や物理学、そして熱力学の対象となるものを想定することことが認められてきたからです。

熱力学においては、カルノーサイクルという理想的熱機関が考えられています。

画像2

覚醒の強さをカルノーサイクルの圧力、覚醒の拡がり(覚醒のボリューム)をカルノーサイクルの体積に置き換える、または、覚醒の強さをカルノーサイクルの温度、覚醒の拡がりをエントロピーに置き換えると、ポジティブ感情サイクルとカルノーサイクルは、下図のように一致します。

図3

生体が、感情価が快の何らかの接近目標を発見し、これが刺激となって覚醒の強さが増加します。これはカルノーサイクルの圧力や温度の上昇にあたります。しかし、この時点ではまだ、生体と目標には距離があります。生体と感情価の高い目標との距離が縮まれば興奮が起こります。これはカルノーサイクルで言えば体積やエントロピーの上昇にあたり、熱が吸収される過程です。生体が目標に達すると刺激は遮断され、その結果徐々に興奮は静まり生体は活気に満ちた状態となります。カルノーサイクルで言えば、熱の吸収が止まり、温度や圧力が減少する過程にあたります。最後に生体は、興奮した過程で否応なく取り込んでしまった排出すべきもの(疲労物質、燃え滓、仕事にならなかった熱など)を排出して、弛緩とも言える状態に至ります。カルノーサイクルで言えば体積やエントロピーの減少にあたり、熱を放出します。さらに、新しい接近目標を発見すると、体制を準備し(カルノーサイクルの圧力や温度の上昇)冷静な状態に戻ります。



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