見出し画像

中小企業の業績向上のポイントは・・・

 中小企業における業績向上のポイントは「流れ」を整理することにあると森下(2018)は説きます。そして、その「流れ」には、事業の流れや業務プロセスの流れ、価値の流れ、ステークホルダーとのコミュニケーションの流れなどがあって、こうした「流れ」は顧客からのフィードバックによって循環していると述べています。

 ここに流れているもの(要素)が、企業の持つ価値であり、知的資産と呼ばれるものです。

 森下は、そうした知的資産を把握し、その「流れ」を整理することが事業価値の向上へと繋がっていき、結果として流れを好循環させていくことができれば、これが企業価値の向上になると主張します。

 わたしもこの主張に賛同します。

 では、そもそも知的資産を経営に活かすにはまず何をすればいいのでしょうか?

 以前にも述べましたように、わたしたちのアプローチは組織開発の手法によるものですが、とにもかくにも、まずやらなければならないのが、自分たちの持つ知的資産を把握すること。その上で、知的資産の流れを明らかにして全社的に共有することです。

 知的資産経営を促進するには、自社の強み・弱みを正しく認識し自社の価値の流れを顧客視点で確認する作業が欠かせません。

 知的資産を把握する方法は、前出の森下(2018・2021)に詳しいですし、ツールとしては、経済産業省の推奨するローカルベンチマークなどがつとに有名です。とはいえ、決まった方法やツールがあるわけではありません。殊に、方法という意味では、クライアントの数だけあると云っていいかもしれません。

 知的資産を明らかにする段階で、わたしたちがよく活用するツールに、SWOT分析表カスタマージャーニーマップがあります。いずれも古くから活用されてきたシンプルな経営分析ツールですが、なかなか奥深さを感じるツールです。万能とはいいませんが、これまでの経験から、議論を活性化し、その内容を整理するにはうってつけのツールだと思っています。

 SWOT分析表は、一般に企業や事業の現状(強み・弱み・機会・脅威)を把握するツールとして知られていますが、質の高いクロス分析ができれば新たな商品やサービスの開発のためのツールとして威力を発揮します。

SWOT分析表

 一方、カスタマージャーニーマップは、顧客の体験に着目しながら商品やサービスの流れを明らかにしていく中で課題を発見するツールですが、タッチポイントごとの顧客の感情を推察しながら新たな体験価値を創出する議論にも有用です。

カスタマージャーニーマップ

 わたしたちは、これらのツールを用いながら、クライアントの強みを把握し、その流れを明らかにします。

 とはいえ、中小企業の経営者の中には、SWOTなどという用語を聴いただけで毛嫌いされる方もたまにいらっしゃいます。きっと過去にこうしたツールを振り回すだけの経営コンサルタントかなにかに不快な思いをされたことがあるのかもしれません。そんなときに、こうしたツールに固執するのは得策ではありません。

 所詮、ツールはツール。手段の道具であり、そのものが目的ではありません。ここでの目的は、分析ツールを芸術的に使い熟すことではなく、クライアントが自社の知的資産を確と認識し、これを有効活用して新たな価値創造に結び付く何かを見出すところにあります。

 こんなとき、ツールを使わずとも数度の面談を通して明らかにしていく手法もあります。ダイアログ(対話)という手法です。この場合、コンサルタントには、ヒアリング相手に心を開いて話していただくだけの「場」を作るための問う力聴く力が試されます。この力量は、コーチングやキャリアコンサルティングの訓練によってある程度身に着けることが可能です。

◉     参考資料
森下勉(2018)『流れ"の整理だけで会社が良くなる魔法の手順-知的資産経営のすすめ-』西日本出版社
森下勉(2021)『持ち味を活かす経営支援~選ばれ続けるための知的資産経営のすすめ』銀行研修社

いいなと思ったら応援しよう!