2021シーズン、ファジアーノ岡山編成考

 各チームの新体制が続々と発表されてきたここ数日、2020年から2021年にかけてのストーブリーグもひと段落ついたと言えるでしょう。2020シーズンの終了が普段のシーズンよりも遅く、それでいて2021シーズンは普段のシーズンとそう変わらない時期に始まることもあって、今回のストーブリーグは一日に出てくる情報量が非常に多かった気がします。

 今回のストーブリーグ全体の感想を言わせてもらうと、「キャリアのある選手に対して非常に世知辛い」ストーブリーグだったように思います。昨年突如猛威を振るった疫病によって各クラブの経営が非常に厳しくなり、どうしても高額になりがちな、キャリアのあるベテラン選手の契約満了というリリースが多かったように思います。われわれファジアーノ岡山もこの流れに抗うことはできず、これまでチームを長いこと支えてきてくれた選手たちとの「契約満了という名の別れ」を多く経験するオフとなってしまいました。

 それでも、いつまでもそんな別れにしんみりとしているわけにはいかず、新しいシーズンはもうすぐそこまで迫ってきています。ファジアーノ岡山もあらかたの編成作業が終了し、新しい背番号が発表され、コーチングスタッフの新体制が明らかになり、既に2021シーズンに向けたトレーニングも政田で始まっています。今回の記事では、各ポジションごとに2021シーズンの編成についていろいろ考えてみたいと思います。

 上の記事は、2021シーズンに向けた新体制発表関連の記事になっています。特に北川社長のコメント、原強化部長のコメントは今季以降の戦い方をどう考えるかの参考になると思いますので、まだ読んでいないという人は是非読んでいただければと思います。

 では、次の段から各ポジションごとの編成についての考察をしていきたいと思います。ポジションは、有馬監督になってからのベースとなっている1-4-4-2で、戦い方も一昨季、そしてそこに上積みを図ろうとした(意図はあったが図れたとは言ってない)昨季とそう変わらないであろうとして考えていきます。参考資料として昨季を振り返った感想文記事を張っておきます。


GK

IN
梅田 透吾(←清水エスパルスよりローン移籍)

OUT
ポープ ウィリアム(→川崎フロンターレへローンバック、大分トリニータに完全移籍)
イ キョンテ(→川崎フロンターレへローン延長)

 シュートストップはもちろんのこと、シーズン途中からはハイボール処理も安定するようになってきて、最後の砦としてチーム内MVPクラスの活躍をしたポープ。後方からのボール保持の起点になったり、精度の高いロングフィードを飛ばしたりと、現代型GKという今までの岡山になかった概念を持ち込んだ選手でもあった。これだけの活躍をした選手をJ2の中~下位チームに引き留めておくことは当然ながらできず、川崎へのローンバック後、大分に移籍することとなった。

 そんなポープに代わって加入することになったのが清水からローンでやってきた梅田。昨季は主にモフモフスキー政権時に1stGKとして扱われており、弱冠20歳ながらJ1リーグの17試合に出場していた。なお出場試合数とほぼ倍の失点数(32失点)のことは言わない約束である。ハイボール処理や味方の守備を動かすコーチングなどにどうやらまだまだムラがありそうな感じではあるが、シュートストップにおける反応の速さや、最後の一伸びで身体を大きく使えるようなセービングなど、シュートストップのスキルは十分に高いと言えそう。後方からボールを動かしていこうとしていたモフ将のときの清水で使われていただけあって、躊躇うことなくボールを持つ、味方に繋ぐことができるのも、ポープと同じような現代型GKの素養を感じさせる。多分有馬監督(というか岡山強化部)は、GKにそういう攻撃の起点的な部分を大いに求めているのだろうなと感じる編成である。

 このように1stGKとして、梅田にかかる期待値は現時点ではかなり高い。ただし、金山も十分に1stGKのポジションを確保できる実績と能力がある。セービングやハイボール処理の安定感はもちろん、十分に攻撃の起点としても機能するキック精度もある。この1stGK争いに、未だその能力はベールに包まれている馬渡がどう絡んでくるのか。カタログスペックでは、どうやらポープや梅田同様に現代型GKの部類にいるっぽいが。そして、その大きな声で政田を引き締める椎名がしっかりと3rdGKとしてGKチームのケツを叩いていく。昨季以上に盤石なGKチームになりそうな予感はする。

CB

IN
井上 黎生人(←ガイナーレ鳥取より完全移籍)

OUT
後藤 圭太(→SC相模原に完全移籍)
チェ ジョンウォン(→水原三星に完全移籍)

 J3リーグの鳥取で主力としてプレー、ここ3シーズンフル出場を続けている井上を獲得。代わりに長年に渡って主にゴール前でのダイハード業務で貢献してきた後藤と、自信を持ってプレーしていたときはそのポテンシャルの高さを見せていたチェジョンウォンが退団することになったCBのポジション。昨シーズンの途中で増田が藤枝に移籍(今オフに秋田に移籍)したことを加えると、昨季から頭数が大きく減っているポジションではある。

 鳥取での井上のプレーを見た限り、2年越しの有馬監督のリクエストであった「足の速いCB」を獲得することができたと言えそうである。特に個人的に良いなと感じたのが、シュートブロックの多さやクロスを跳ね返す回数の多さに見ることができる、CBとして、守備者としているべきポジション(≒ここは埋めておかないとマズいスペース)を埋めることができる危機管理能力の高さ。鳥取では3CBの中央CBとしてプレーしており、3バック(自陣に引いた場合は5バック)守備特有の後ろに余るポジショニングが基本的に2CBでプレーすることになるであろう岡山で修正できるかどうか。

 CBセクションの1stチョイスとして迷うことなく選ぶことができるのは、昨季の個人的チームMVPで、今季はチームキャプテンにも就任することが決まっている濱田。できるだけ第一ラインから最終ラインまでの3ラインをコンパクトに、高いラインを保とうとする中での最終ラインからの統率能力、対人守備でも身体能力や技術の高い相手の最前線の怪獣退治と、有馬監督の求めるサッカーに欠かすことのできない最重要ピースの一人である。もともとケガがちな選手であったが、昨季はあの超過密日程で一度もケガによる離脱がなかった。今季もフル稼働が期待されるが、昨季のフル稼働のツケが回ってこないとは言えないので、休ませるところは休ませたいところではある。

 濱田をCBの1stチョイスと考えると、2CBだとしてその相方が誰になるかであるが、個人的に濱田の相方として求めたい役割は「積極的に前に潰しに行ける守備」と「後方からのボール保持でGKとともにビルドアップの起点になれる役割」である。もともと有馬監督から機動性のあるCBとして起用されてきた実績から見ると田中がもっとも有力だろうが、田中も今季で35歳。昨季も長い中断期間の後のコンディショニングに苦しんだ印象があり、特に前者の「積極的に前に潰しに行く」役割をこなせるかどうか、主力として考えると懸念がないわけではない。

 そうなるとやはり今オフに獲得した井上と、そして昨季の終盤戦になってようやく再び出場機会を得ることができるようになってきた阿部といった若いCBの突き上げが欲しいところである。どちらも「積極的に前に潰しに行ける守備」と「ビルドアップへの関与」という求められる面での素養は高いように見えるので、昨季以上のCBセクションのポジション争いによる活性化に期待したいところ。ただし、毎年ケガ人(しかも長期離脱)が多くなりがちなチームでCBとして考えられる選手が4人しかいないのは、頭数的に不安がないわけではない。

右SB

IN
河野 諒祐(←水戸ホーリーホックより完全移籍)

OUT
椋原 健太(←現役引退)

 水戸から河野が加入し、代わって3シーズンにわたって岡山の右サイドに君臨してきた椋原が引退することになった右SBのポジション。頭数自体に変化はないと言えるが、やはり椋原の引退は大きく、現状では戦力的には昨季と比べてダウンしていると言わざるを得ないセクションだろう。

 昨季、水戸ではまずまずの出場機会を得ることができていた河野。映像で確認することはできなかったのだが、データ的に見たり、いろいろな人の感想を見たりすると、かなりイケイケの攻撃型の選手と見ることができそう。高い位置を取ってそこから仕掛けたりクロスを上げたりするプレーに強みがあり、そうなると4バックのSBというよりは3バックのWBに適性があると言えなくもない感じだろうか。対人守備でどうなのか、その部分が非常に気がかりではある。

 そんな右SBの1stチョイスだが、ケガさえ癒えれば増谷になるのだろう。SBの本分としてサイドでの対人守備にも安定感があるのはもちろんだが、何より良いのがボールを持ったときの役割。大外でのボールの逃がし所、いわゆるビルドアップの出口として機能し、相手の寄せを上手く引き付けてボールを逃がしてスペースを作れるプレーは、昨季は開幕戦の一試合でしか見ることができなかったが、やはり非常に質の高いものであった。ただ恥骨結合炎という本当に厄介なケガを患っており、昨季は結局開幕戦以降一度もベンチ入りもなし。約一年のブランクがどう出るか、頭数に数えていいのかも不透明と言えなくもない。

 そうなると増谷以外の選手たちがどうかということだが、椋原の引退を考えるとやはり次に有力なのは新加入の河野になるだろうか。前述したようにボールを持ったときの働きは十分に期待できるだろうから、SBの本分としてのサイドでの対人守備の強度、逆サイドにボールがあるときのスペースの絞りなどの守備の気配りがあるかどうかだろう。昨季は超過密日程の中で出場機会を得ることができた下口は、昨季の出場経験を何とかして生かしたいところ。積極的に駆け上がる運動量と、粘り強く食らいつける対人守備には見所があるだけに、ボールを持ったときのスキルと周りを使う細かいところを何とかして積み上げたい。増谷同様に恥骨結合炎を患ってしまった松木は、まずはその負傷を治すところからだろう。

左SB

IN
なし

OUT
なし

 加入もなければ退団もなし。今オフ全くの無風状態だったのがこの左SBのセクションであった。個人的には徳元がJ1チームとか資金が比較的あるJ2のチームとかに引き抜かれるとをある程度覚悟していたので、徳元が無事に契約更新をしてくれて心底安心したところはある。一昨季のスタメンであった廣木が増谷と同様に恥骨結合炎に苦しみ、昨季は一度もベンチ入りすらなし。本来は徳元と廣木で極めてハイレベルなポジション争いを期待していたのだが。徳元の離脱時期が長かったらと想像するだけでゾッとする事案である。

 左SBの1stチョイスは今季も徳元で間違いないだろう。右の増谷同様に、大外でのビルドアップの出口となって、相手のプレッシャーを引き付けてそこから斜めだったり前方だったりにパスを供給できる低い位置での役割に加えて、時間帯を問わずに繰り返し高い位置まで駆け上がりそこから質の高いクロスボールを上げることができる運動量と精度を兼ね備えた攻撃面だけでなく、守備面でも相手に簡単に剥がされたり背後を取られたりするようなことなくしっかりと相手を遅らせることができる、サイドでの特に地上戦における対人守備、前の選手を動かしてサイドでのプレッシャーをチームとして強めることのできる声掛けの部分でも非常に質が高かった。

 徳元に続くのは廣木になるのだろうが、プレー面がどうのというよりとにかく恥骨結合炎の回復具合がどうなのかという点が何よりの不安要素。増谷と同じで1シーズンを棒に振っているわけで、いきなり戦力として考えるのも危険な気はする。復帰することができれば、サイドでの対人守備の粘り強さだったり運動量だったりの、質より量タイプのサイドプレーヤーとしての安定感は間違いない。。ボールタッチの質には難ありも、ビルドアップや攻撃参加におけるポジショニングやタイミングの勘所の良さにも魅力あり。左SBセクションのタイプの違う選手同士で2年越しの極めてハイレベルなポジション争いに期待したいところである

 昨季は徳元が体調不良で離脱していた時期には、松木や野口、下口が左SBに入ることもあった。その中では下口が一番無難にこなしていたので、特に下口には両SBをこなせる守備のマルチロールとしての期待も大きい。

CH

IN
疋田 優人(←大阪体育大より加入)

OUT
上田 康太(→栃木SCに完全移籍)
武田 将平(→ヴァンフォーレ甲府よりローンバック、京都サンガに完全移籍)

 昨季の関西大学リーグ王者の大阪体育大より疋田が加入したが、上田の契約満了とローンバックと思われていた武田将の退団に見舞われたCHセクション。特に上田の契約満了は今オフの世知辛さの象徴的な、そして衝撃的な案件だったと言える。展開力とセットプレーの強みを長年にわたってもたらし続けてくれたレフティが抜けるのは非常に痛く、現時点では頭数でもそうだが戦力的にも大幅なダウンと言わざるを得ないだろう。だからこそ、昨季のチームMVPクラスの活躍を見せた白井が契約更新をしたというのは非常に大きいと言える。

 大阪体育大での疋田のプレーを見ると、運動量豊富に動いてボールに触ってほとんどのボールタッチを無難に叩き、ここぞというところでミドルシュートを打ったり攻め上がりを見せたりする中盤の選手という印象。キック力は思った以上にありそうだが、大きな展開をするようなプレー選択はほとんど見られず。岡山で今までにいた選手で最も近いタイプで言うと、個人的に近いなと感じたのは仙石廉。スペースを埋める感覚はありそうだが、対人守備の強度だったりボールの奪い合いの強度だったりにはまだまだ課題がありそうである。

 CHの1stチョイスは白井とパウリーニョのコンビが最有力候補だと思う。理想的な構造としては、運動量豊富に攻守両面で「効いている」ポジションを取り続けられる白井をミドルゾーンの軸に、ボールの奪い所を定めたところでパウリーニョがガツンと相手からボールを刈り取る形を作ることができるかどうかだろう。こちらのボール保持では、ボールを持ったときでもミスが少なくビルドアップに関与し続けられる白井と、広い視野とキック力の高さで逆サイドに広げることができるパウリーニョがミドルゾーンで上手いこと展開し、チームで敵陣に押し込む形を作ってミドルシュートやゴール前への攻め上がりという厚みのある攻撃を構成することができるかどうか。昨季の最終節の甲府戦の先制点のような形はCHの攻撃参加の理想形のような得点であった。

 その1stチョイスを追いかけるのが、声をかけて中盤の底でプレッシャーを引き締めることができる喜山と、運動量とポジショニングの両立ができるようになった関戸という、チームに安定感をもたらすことができるベテランの域に差し掛かってきた選手たちであり、前述した新加入の疋田と、縦に入れるパスのセンスに大いに光るものを感じるユヨンヒョンという若い選手たちである。喜山と関戸に関してはある程度計算が立つので大丈夫だとして、やはり疋田とユヨンヒョンがどこまでポジション争いに絡んでいくことができるかどうか。特にユヨンヒョンに関してはそろそろ本格的に試合に絡んでいくことができないと来季の契約にもかかってくるかもしれない。

SH

IN
宮崎 幾笑(←FC東京よりローン移籍)
木村 太哉(←甲南大より新加入)

OUT
三村 真(→テゲバジャーロ宮崎に完全移籍)
武田 拓真(→いわてグルージャ盛岡に完全移籍)
デューク カルロス(→FC町田ゼルビアにローン移籍)

 甲南大からの新卒選手である木村、かつて金沢で存在感を発揮しJ1のFC東京に引き抜かれた実績のある宮崎が加入し、契約満了となった三村と武田拓、そしてローンでデュークカルロスが退団する形となったSHのセクション。チーム生え抜きで10年近くいた三村の契約満了は上田同様になかなか衝撃ではあったが、SHとしての存在感を出し切れていたとは言い難かったので、宮崎の加入もあって戦力的にはそこまで大きな変動はないと言えるセクションである。

 J1のFC東京ではケガが相次いだこともあってフィットするタイミングをなかなか掴み切れず、主戦場はU-23のJ3リーグになることが多かった宮崎だが、対面の相手を剥がして局面を打開できるドリブル、クロスやシュート、サイドチェンジといった左足のキックの質、オフボールで相手の背後を突くことができるランニングと、金沢時代のプレーが錆びていないとすれば攻撃面で十分にJ2で無双できるレベルの選手である。SHの守備のサボりを一切許さない金沢時代の柳下監督、そしてFC東京での長谷川監督仕込みの攻守に関わり続ける運動量も持ち合わせているので、SHの軸として期待値はかなり大きい。

 甲南大初のJリーガーとして岡山に新加入することになった木村。x甲南大での木村のプレーを見ると、テクニックというよりは馬力を生かして対面の相手に仕掛けるプレーだったり、相手の背後に飛び出すプレーだったりを見せていて、「キャプテン、10番」として自分が敵の本陣にいの一番に攻め入るんだ、というアグレッシブな姿勢がうかがえた。甲南大というチームが4-4-2で戦術的にしっかりと整備されたチームだったので、プレスのかけ方だったりボールの受け方だったり、戦術理解度も高そうなのがさらに好印象。宮崎にしろ木村にしろ、有馬監督がSHに対して「敵陣に仕掛ける役割」を強く求めてリクエストしたんだな、というのが伝わる編成でもある。

 自分たちがボールを持ったときには、SHは内側に絞ってポジショニングする傾向の強い(その代わりにSBが大外のポジションを取るようにする)今のチームでは、SHを逆足配置(左SHが右利き、右SHが左利き)にすることで、内側のポジションでボールを受けてそこから決定的なシュートであったり仕掛けであったりを求められる。そう考えてもSHの1stチョイスは、現時点では右が宮崎、左が上門で決まりだろう。前述した宮崎もそうだが、上門も前を向いてそこからパンチ力のある右足を振り抜くことで決定的な仕事をすることができる選手である。昨季は上門以外に相手に対してボールを持って仕掛けることのできる選手が出てこなかったこともあって、どうしても上門へのプレッシャーが必要以上に強くなってしまっていたが、前評判通りに宮崎が機能すればそんな上門へのプレッシャーも分散されるのではないかと期待。

 その2人を追う形になるのが、新卒の木村であり、大卒2年目となる野口であり、U-18から昇格して2年目となる山田になるのだろう。昨季は超過密日程の中である程度の出場機会を得た野口は、前を向けたときの左足のキックだったりポジショニングだったりはまずまず良さを見せていたが、どうやって前を向くのかという工夫や相手のプレッシャーを受けてすぐにボールを離してしまうという部分での課題も多く残した。トレーニングの中でどこまで課題を解消できるかがポジション争いに加わるポイントだろう。昨季一度もベンチ入りできなかった山田は、まずは公式戦で何でもいいからベンチ入りの機会を掴みたいところ。

 ここまで書いてきた選手たちとタイプは違うが、CHセクションに挙げた白井、関戸、ユヨンヒョンあたりが運動量とレシーバーという持ち味を生かしてSHに入ってくる可能性もある。また、後述するFWセクションから齊藤だったり新加入の川本だったりが入ってくることもありうる。

FW

IN
川本 梨誉(←清水エスパルスよりローン移籍)

OUT
赤嶺 真吾(→FC琉球へ完全移籍)
清水 慎太郎(→FC琉球へ完全移籍)
ハディ ファイヤッド(→アスルクラロ沼津へローン移籍)

 沖縄のレジェンドである赤嶺の琉球凱旋、清水も同様に琉球に移籍し、ハディに関しても契約更新後に沼津にローンで移籍と退団者が多く生まれたFWのセクション。その代わりに清水からユース上がり2年目となる川本がローンで加入することとなった。ここのセクションは頭数自体の減少もあるが、特に赤嶺の契約満了による退団はプレー面だけでなく、チームの精神的な柱にもなっていただけにチームとしては非常に痛いトピックであったと言える。

 清水からローンで加入した川本は、映像で見るとボールを持って相手に仕掛けていく推進力、打開力に自信があるのかなという印象である。またJリーグ初ゴールのように相手最終ラインの背後に仕掛けるオフボールの動きも持ち合わせてるようである。SHセクションで書いた宮崎や木村のように、有馬監督のリクエストである「オンボール時に対人で相手に仕掛ける役割、オフボールで相手の背後を突く役割」を果たす素養が十分にあるアタッカーだと言える。評判によると、しっかりと守備をする意識も持ち合わせつつ、自分が得点を取るという野心にも溢れているようで、ユース上がり2年目の選手ながら、来季の戦力としての期待値の高い選手である。

 現時点でのFWの1stチョイスは、やはり実績込みでイヨンジェであるのは間違いないだろう。チームとして一昨季以上に後方からボールを持とうとする意識が増えたことでシンプルに相手の背後を狙うような長いボールが減った昨季は、一昨季やその前のシーズンによく見られた長槍隊のように単騎で突っ込むという回数が減ったことでどのように起点となる動きを取り、そこからゴール前に入り込んでいくかでフィットに時間がかかった印象。チームとして、有馬監督がやりたいことと、イヨンジェの良さを生かす形をどうマッチングさせるかは、今季のチームの浮沈を左右する大きな案件になるはずである。個人的には、イヨンジェにはもう少しサイドに流れる動きを増やしてそこからもう一度ゴール前に入り込むという形を作ってほしいと思うのだが。

 そんなイヨンジェの相方になるのが誰かだが、昨季のパフォーマンスだけを見ると現時点では齊藤が最有力候補なのかなと思う。一列下りて一度ボールを受けて起点になる動き、サイドに流れてそこからボールを運ぶ動きができるので、上手くやれればイヨンジェのゴール前以外での負担を減らすことができるのかもしれない。ただ、イヨンジェと入れ代わり立ち代わりに相手の背後を狙う動きを起こして、最終ラインのストレスを溜めていきたいのならば、山本を優先的に起用することも十分に考えられる。そうなった場合は前線での起点をどのように作っていくかは大きな検討事項になる。カタログスペックを見ると、前述した川本はイヨンジェの相方として一番フィットするのではないかと期待しているのだが。そしてイヨンジェとタイプが一番似ていると個人的に感じる福元は、少ないであろうベンチ入りからの途中出場の機会を逃さず、まずは何とかしてJリーグ初ゴールを狙っていきたいところ。

 今季も最有力視されているフォーメーションである、1-4-4-2のフォーメーションに今の選手たちを当てはめると、編成としてはこんな感じになるだろうか。

画像1

総評

 今オフは30歳以上の選手を中心に契約満了を行い、昨季は最大で37名いた選手の人員を現時点で30名までに減らし、加入した選手も大半が25歳未満という、明らかな「スカッド全体のスリム化と若返り」を図った今オフのファジアーノ岡山。若返りを図らないと流石に無視できないほどに平均年齢が徐々に上がっていたのはあったが、今のご時勢によるクラブ運営の難しさから、一気に今オフで若返り(+スリム化)を行わなければならなかったという部分はあるのかもしれない。多分普段通りのオフシーズンならば上田の契約満了はなかったように思う。

 上田や椋原、赤嶺という昨季までの押しも押されぬ主力選手だったり、清水のような主力になることを見込んでいた選手が退団したのは確かに大きなトピックであった。ただ、そんな中でも移籍流出が懸念されていた徳元や白井、上門といった選手たちは軒並み残すことに成功している。そういう意味では、最後尾のポープは抜けてしまったが、濱田-徳元-白井-上門という昨季のチームとしての軸、骨格そのものを解体されることはなく何とか凌ぐことができたオフシーズンであったとも言える。

 さらに有馬監督の戦力補強のリクエストであった、「足の速いCB」の素養を持った選手として井上、「オンボール、オフボール両局面で相手に仕掛けることができるアタッカー」の素養を持った選手として宮崎、川本、木村といった選手を補強することに成功。またポープの抜けた穴を、ポープと同じ現代型GKの素養を持った選手として梅田を補強。河野や疋田といった選手の加入を含めて、ネーム的にはそこまで大きくはないものの、軸や骨格を残しつつそこに肉付けを行うというような補強戦略が取れたと言えるのではないだろうか。

 37名→30名という戦力のスリム化を図った以上、今季加入した選手(+昨季までの若手選手も)がしっかりと戦力として計算できるようにならないと、ポジション争いというチーム内での競争、チーム内の活性化を見込めるようにはならない。昨季までの主軸選手に今季加入した若手選手たちがどう組み合わさって化学反応を起こすのか。これまでに見たこともないような美しく価値の大きい物体を生み出すのか、はたまた爆発してこれまでの軸ごと飛び散ってしまうのか。加入した選手たちのポテンシャルはどの選手も十分に高いので、前者となることを大いに期待したいところである。


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