J2第1節 ファジアーノ岡山vsヴァンフォーレ甲府 試合レビュー
こんにちは、ファジ・リオです。
J2 第1節 ファジアーノ岡山vsヴァンフォーレ甲府の試合について書きましたので、ぜひ読んでみてください。
【写真提供】
岡山キジ太郎(@kijitaro2004)
写真提供ありがとうございます!
フォーメーション/スタメン
ホームのファジアーノは、木山新監督を招聘し、新システムの[4-3-3]を採用した。一方の甲府は吉田新監督を迎え、昨シーズンから継続の基本システム[3-4-2-1]で臨んだ。
ファジアーノはスタメンの11人中6人が新加入選手となり、特にCBの柳、バイスには注目が集まった。他にも2人の大卒ルーキー本山遥・田中雄大、そして清水エスパルスから完全移籍で加入した河井陽介、期待のアタッカー チアゴ・アウベスが名を連ねた。
甲府はトップに強力FWウィリアン・リラ、シャドーには昨シーズン2度のJ2月間MVPに選ばれた長谷川元希、ディフェンスラインには41歳のベテラン山本英臣と、実力のある選手を起用した。
試合評
開幕戦ということもあり、序盤はロングボールを蹴り合い、ハーフウェーライン付近での空中戦が続いた。
5分、ファジアーノがいきなりビッグチャンスを演出する。フリーキックの流れからペナルティエリア中央で大卒ルーキー本山とGKが1対1、本山がボレーシュートを放つも甲府のGK河田がファインセーブ。決定機を逃した本山は頭を抱えた。
ファジアーノは最終ラインでボールを持っても簡単にはロングボールを蹴らず、パスを繋いでビルドアップを積極的に行なった。
膠着状態が続く中で、1つのミスがファジアーノの失点に繋がってしまう。
35分、ビルドアップに参加していた河井のパスを甲府の選手にカットされ、そのまま前線のウィリアン・リラに抜け出されてしまった。柳とバイスの2人が対応するもリラの個人技が勝り、マイナスのパスに反応した松本凪生が押し込み、甲府が先制に成功した。
ミスから失点、という嫌な空気が漂いかけた直後の36分、FKを獲得したファジアーノは田中雄大が供給したボールを柳が繋ぎ、ディフェンスをかわした河井が絶妙な優しいクロスを上げ、FW川本が頭で押し込み、すぐさま同点に追いついた。
スタジアムの雰囲気が盛り上がった状態の42分、柳のFKを宮崎幾笑が頭で逸らしてエリア内のチアゴ・アウベスが何とかキープし、こぼれたところを田中雄大がゴール右上に鮮やかに突き刺し、見事に逆転した。
プロデビュー戦でプロ初ゴール、田中雄大はチームメイトと喜びを爆発させた。
前半はこのまま 2-1 で折り返す。
52分、期待のアタッカーが度肝を抜くスーパーゴールを決める。自陣センターサークル左前で相手のパスミスを拾ったチアゴ・アウベスが、なんとその位置から左足を振り抜くと、前に出ていたGKの頭上を越え、ゴールに突き刺さった。 ゴールから60mは離れていたのではないかという距離から、見事に移籍後初ゴールを決めて見せた。
止まらないファジアーノは56分、ボールを奪取した河井が右サイドに流れた宮崎幾笑へパスを送ると、河井はスルスルとニアゾーンに進入し、宮崎からパスを受け、エリア内でフリーになっていたチアゴ・アウベスにラストパス。左足で上手くコントロールしたボールを右足で蹴りこみ、チアゴ・アウベスがこの日2点目を決めた。
その後、ファジアーノは、オーストラリア代表のミッチェル・デューク、津山市出身の高卒ルーキーの佐野航大などを投入した。
試合はそのまま終了し、ファジアーノは2022シーズンの開幕戦を快勝で飾り、それと同時にホーム通算100勝目を挙げた。
少し見えた木山ファジの戦い方
木山監督は、シーズン開始から主に次の2つのテーマを示してきた。
まず「相手のコート内でボールを奪いきる」について、このテーマが顕著に現れたシーンが今節いくつかあった。
11分のシーン、敵陣左サイド奥で相手がボールを持つと、すぐさま田中雄大がボールホルダーに対してプレスをかける。それに続くように川本・徳元・チアゴ・アウベスの3人がが素早くプレスに行き、相手が蹴り出すしかない状況を作り出し、その蹴り出したボールを本山が回収しマイボールとした。
いわゆるゲーゲンプレスのような、相手にビルドアップをさせない、思うようなパスを出させない守備が上手くハマったシーンだった。
次に、IH(インサイドハーフ)の田中雄大が相手の最終ラインにまでプレスをかけ、たまらず相手が蹴ったロングボールを柳が持ち前の高さで回収する、といったシーンもあった。
前線のFW3枚とIH田中雄大による素早く、連携の取れたプレスが相手を苦しめたことに間違いない。
ただ、簡単にかわされ、本来居るはずの田中雄大のスペースがガラ空きになってしまうシーンが何度かあった。その点を修正すれば十分に武器として用いることができる。
次に「[4-3-3]の形で守る」について。実際のところ、本当に[4-3-3]でブロックを敷くのかどうかが疑問であったが、今節である程度その答えは出たと思う。
今節では、ブロックは[4-5-1]の形を敷いていた。両WGが落ち、アンカーとIHと合わせて横に5枚、という形だ。
あれ?[4-3-3]の形で守ってないじゃないか!と言う声が聞こえてきそうだが、おそらく、[4-3-3]で守るというのはある特定のエリアで相手がボールを持っている時に適用されるのだろう。それはアタッキングサードと呼ばれるエリアだ。
今節では、そのアタッキングサードにおいては1トップと2人のWGが横並びのまま守備をするという形が見られた。
それにアタッキングサードにおいては、「守る」と言うよりは「プレスをかける」と言う方が正しいのではないだろうか。筆者は「守る」という言葉を聞いて、勝手にブロックを敷くということと勘違いしていた。ブロックを敷いて、引いて守るだけが「守る」ではなく、前線からプレスをかけることも「守る」ことであった。
しかもこの[4-3-3]で守る、改め[4-3-3]でプレスをかけることは、上述した相手のコート内でボールを奪いきることに通じている。
前線の3人のうち2人が圧力をかけ、その後ろからIHやアンカーがフォローをする、組織的なプレスが随所に見られ、相手が仕方なく蹴り出したボールを難なく回収するシーンも何度か見られた。
まとめると、[4-3-3]で守るという言葉の意図は、アタッキングサードでは[4-3-3]で連携したプレスをかけ、ブロックを敷く時は両WGが落ちて[4-5-1]の形にする。ということになる。
気になった点(悪い点)
開幕戦だから仕方ないだろうとは思ったが、やはり「ん、ここ不安だな」というところに目がいってしまったのでいくつか挙げる。
まずは、「ビルドアップのミス」
今季の木山ファジの特徴の1つであるビルドアップ、今節では前半からビルドアップで自分たちの流れを掴もうとする姿勢がよく見られた。それもかなりビルドアップにこだわりを持っているように感じた。昨年までの有馬賢二監督のサッカーでは、ビルドアップを大切にしていたが、そこまで執着して行なっている感はなかった。
今節を見て「あれ、ロングボール蹴らないな」「そんな狭いとこ通すの?!ヒヤヒヤする!」と思った方も少なくないと思う。実際ミスが多く、しかも失点に繋がっているのだから、心配になるのは仕方がない。
ミスが多かったのはインサイドハーフとサイドバックの間のパス交換だった。相手のプレスもあり、どうしてもサイドに追い込まれる形になる。蹴り出してしまえば安全なのだが、どうやら木山監督はそれをできるだけ許容したくなさそうに感じる。難しいところを通して相手を外す、自分たちのサッカーを構築する、といった意図が読み取れる。
ミスを減らすためにも、サイドバックの足元は精度を高める必要がある。
ただ、悪いところばかりではない。アンカーの本山を経由するビルドアップは安定感があった。本山は走れる選手だという情報しか筆者の耳には入っておらず、足元の安定感があるとは考えていなかったが、相手をいなす体の動かし方やボールの置き方が上手かった。
木山監督の求めるビルドアップ像に、彼の存在は必須なのかもしれない。
次に、「あの、スペース空いてますよ」
これは今節のワンシーン。15分、甲府のウィリアン・リラがゴール右隅を狙ったシュートを放ったシーンだ。
ここで気になったのは、田中雄大と本山遥が1人の相手に対して2人ともが食い付いてしまったことだ。(ボールホルダーは手前の甲府の2番の選手)
上の画像を見てもらえれば分かるように、手前のボールホルダーに対して、田中と本山が同じ方向にベクトルを向けてしまっている。本来は、どちらかが1人で行けば良いのだが、2人が行ってしまったため、ペナルティアーク前に広大なスペースが空いているのが分かる。
結局このスペースにパスを入れられ、リラに繋ぎ、シュートに持ち込まれてしまった。
後ろからのコーチングなどは無かったのだろうか、この辺りの連携はしっかり確認して欲しい。次節以降の改善を求む。
次に、「バイスさんそっちじゃない」
これは先制点を取られたシーン。
このシーンでは実際、バイスは上図の青い矢印の方に行ったのだが、ウィリアン・リラは柳をかわして内側に突破した。つまり、バイスが赤い矢印の方に行っていれば、リラをフリーにすることは無かったのかもしれない。
個人的な考えとしては、内側に突破されるより外側でキープされる方がまし、ましというよりその方が良い。外に追い込む時間で中のディフェンスの人数が揃うからだ。
バイスは京都に在籍していた時にも同じような形で失点しており、「えっ、嘘だろ…」といった感じのミスが時折ある。バイスの勢いは相手からしたら脅威だが、勢いのコントロールを正確にお願いしたい。
良かった点・ニアゾーン
木山ファジの攻撃のキーワードは何だろうか。それは、ニアゾーン である。ニアゾーンとは、ハーフレーンのペナルティエリア内のゾーンのことである。(下図参照)
このニアゾーンを使うことで、チャスメイキングが多くなる。そして今節、ニアゾーンを使ってそのチャンスをものにすることができた。
それが4点目のシーンだ。
上の画像のように、手前の赤丸で囲んだ河井陽介がニアゾーンに進入しようとしていることが分かる。
それと同時に、反対側のニアゾーンにいたチアゴ・アウベスがペナルティエリア中央に、相手の視界に入らないように移動している。
河井がニアゾーンで完全にフリーになり、相手もここで河井をフリーにすることの危険性は分かっているだろうから、エリア内のほとんどの甲府の選手が河井に釘付けになり、チアゴ・アウベスも、ある程度フリーの状態を作ることができた。
河井、チアゴ・アウベスをフリーにした甲府の対応が遅れたことで、落ち着いてゴールを決めることができたシーンだった。
開幕前からニアゾーンの話題が挙がっていたが、まさかいきなりニアゾーンを使った攻撃で点を取るとは思わなかった。今節ニアゾーンに侵入した回数(セットプレーを除く)は筆者の集計では3回あったかないかであった。木村太哉がベンチスタートだったことも影響しているのだろう。木村太哉のカットインには期待したいし、パスでニアゾーンに進入するプレーをもっと増やして欲しい。
今節のように何時もニアゾーンでフリーになれるわけではない。その辺りは今後の試合でどのようにしていくのか、楽しみだ。
A Notable Player In The Game
筆者が今節、注目した選手を取り上げるコラム的なものを少しだけ。
筆者が今節、注目したのは 田中雄大 だ。
田中雄大は早稲田大学出身、早稲田大学ア式ではキャプテンを務めた期待のルーキーだ。
宮崎キャンプでは得点を決め、開幕前の予想フォーメーションにも名前が挙がっており、実際に開幕スタメンに名を連ねた。
彼のプレーを見て非常に驚いた。プレスの速さ、球際の強さ、運動量。全てが想像を越えてきた。
特にプレスの速さ、その瞬間、瞬間の速さがすごい。速いだけでなく、きちんとコースを切りながらプレスをかけているのだから、その点に関しては文句をつけ難い。
木山監督の相手コート内でボールを奪いきるというテーマに完全に合致するようなプレースタイル、後ろには強力なディフェンス陣が構えていることも、躊躇なく激しくプレスに行ける要因なのだろう。
運動量に関しても言うことは無い。
今節フル出場を果たした田中雄大はインサイドハーフとして、積極的に攻撃に参加し、時には最終ラインの手前まで落ちてボールを要求し、ゲーム作りを自分から行なっている様子もうかがえた。
今年、彼には注目しなければならない。既にゴールも決め「田中雄大」の名前は完全にファジアーノサポーターに知れ渡った。
今後の活躍が楽しみで仕方ない。
終わりに
最高の形で開幕戦を飾ったファジアーノ。失点で課題を見つけ、追いつく展開、逆転する展開を既に経験できた。これはかなりのアドバンテージだと思う。
開幕前もかなり注目されていたが、今節の結果によってもっと注目されることとなり、筆者も「もっと追いかけたい」と思った。
次節の徳島戦、今回のように上手くはいかないかもしれない、それでも苦しみを乗り越えていく、そんなファジアーノを期待して週末を迎えたい。
最後まで読んでくださりありがとうございます!自分としては初レビューで、伝わるように書けたかは不安なので、感想などを頂けるとありがたいです!
目標は42試合全てのレビューを書くこと。
継続できるように頑張るので、応援よろしくお願いします!
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