長崎坂宿ソーシャルデベロップメントツアーを楽しむ。
昨年の年末に行ってきた長崎坂宿視察ツアー、その余韻冷めやらぬまま年明け早々の1月16日〜18日の二泊三日で再び長崎へ。
今回のツアーはリアルに空き家を見て周り、
あわよくば購入して遠隔で民泊経営までやっちゃおうというすごいツアー。
そんなビジネススタディツアーに参加した体験記をまとめてみました。次回のツアーは2023年4月の第2週か第3週で調整中との事。
今回の記事で雰囲気を感じて頂き、次回のツアーに一緒に参加するなんて人が現れたらめちゃくちゃ嬉しいです。
前置きはこれくらいにして、ツアーの本編へキーボードは進みます。このツアーの運営は長崎坂宿のオーナーである小笠原さん。
こんなツアーをtwitterで告知し、参加者を募集するもんだから東京や大阪からもツアー参加者が現るわけで。僕は家内と二人で参加。
おもしろいのは、今までのこの手のツアーには、熱血まちづくり系建築士や、単純な不動産投資系の小金持ちが集まるところに、某大手広告代理店の一社員とか、デザイン事務所の代表とか、つながりを科学しながら新築はやりませんとか言ってる設計事務所代表とか、一見場違いな面々が集まったこと。
そんな面々と共に、いよいよツアースタートしたわけですが、まずは長崎坂宿の見学とそのコンセプトの解説をいただく。
去年一度聞いてる内容だったけど、一人で聞くのと複数人で聞くのでは印象が変わったし、飛び出す質問もなるほどと頷くものばかり。
このツアーの面白さは、同時に複数人で、同じ空間を体感したり話を聞けるというところだったのかも。三組という縛りもちょうど良かった。
そしていよいよ物件巡り、坂宿ツアーなので当然坂を堪能することになる。
まず最初は空き家物件ではなく、すでにリノベされ、民泊として運営されている坂宿近くの「長崎町家さかさるく」へお邪魔することに。
迫力ある石積みに囲まれた築90年ほどの古民家。そもそも階段を登った小高い敷地なのに、この建物はさらに2階建てで寝室からの眺めは大迫力。
手を入れすぎない、当時の建物の雰囲気を残し、タイムスリップしたような錯覚を覚えるのは、この宿のオーナー堀さんの小物の設えのせいだろう。実は堀さん、すでに金沢でゲストハウスを運営されていた。
金沢市と長崎市、多拠点生活はたまに聞くようになったが、ここまで遠隔での宿運営までできるのかと、参加者一同ひっくり返りそうになった。
スッタフが大勢いるわけでもなく、ほぼオーナー堀さん一人でのオペレーションで実現できているとのこと。これを聞けただけでもこのツアーに参加した甲斐があったと強く思った。
さかさるくの見学で感じたのは「どこでよしとするかの線引き」への意識。僕みたいに建築業界や空き家問題の解決をーとか言ってるものたちは、ついついやり過ぎる傾向に。
何をやるにも経済的側面からも物事を眺めてみて、それが持続可能なものなのかどうか、ただの自己満足になっていないだろうか。
建築以外の方達のリノベに対して「それは邪道」だの「水平が取れてない」とか「やるならここまでやるべき」などぶつぶつ小言をいう専門家たち。
実際にやってみて、しっかり運営できてからものを言わないとなんの説得力もない。長い時間業界に関わってきたので、この感覚を脱ぎ捨てる努力はまだまだ必要そうです。
次に訪れたのは、長崎坂宿第一号館である「離れ」。階段を何段登ったか数えたくないくらいの傾斜地です。
なんとも趣のある佇まい。こちらも手を入れ過ぎないリノベが好感持てました。ほんと、田舎のおばあちゃんちに来たって感じです。
手を入れ過ぎないと言いながらも、おおってなったのがこちらの浴室。
この浴室にはなんか小笠原さんの怨念というか執念を感じました。この離れが長崎坂宿の第一号と言いましたが、その制作過程はなかなか過酷だったそうです(↑の開発ストーリー参照)。
海外の観光客って半袖率高くないですか?代謝がアジア人に比べていいんだろうなぁと思ってたけど、僕もいっぱい歩いたら1月だけど半袖になってました。
それでは、いよいよツアーのメインである物件探訪の始まりです。すでに1800文字くらいになってるのですが、4000文字くらいには納めたいと考えているので、何卒お付き合いのほどよろしくです。
なんと一件めは集合住宅、2階建てで4戸の部屋数を持っています。現在空室が3つなのですが、運営的には1戸だけでもプラスだそうです。
アパート脇の階段から各居室へアプローチします。建物自体に階段はなく、敷地の傾斜なりに作られた階段が上下階の移動に使われます。
玄関の位置が敷地の傾斜によって、裏と表に分かれていました。中の間取りもそれに合わせた形なので、1階の山手側は面白いことに。
部屋の窓を開けると目の前には石垣。天井からは2階アプローチ脇に設けられた波板から光が降り注いでいます。
なぜだかわからないけど、変な場所に壁があったり、窓の位置ズレていたりと使いにくそうな間取り。でも、この内容ならデザイン力で魅力ある賃貸にできるのも想像できましたよ。
オーナーは手放したいけど一般的な不動産流通にはそぐわない条件だそう。うまくやれば一気に4戸の賃貸オーナーになれる物件。かなり魅力的なものだけどまずは一件目ということで、次の物件へ向かうのでした。
なかなかシュールな状況です。ここからは地元不動産屋さんの案内にて、不動産情報に載ってるけど、なかなか動きのない物件をご案内いただきました。
間取:5DK 面積:99.66㎡ 築年:1974年 価格:400万円
400万円と価格設定されていますが、まずこの価格で取引されることはないとのこと。理由はやはり車の寄り付きができない傾斜地だからとのこと。
建てろ建てろがスローガンだった時代、使われている照明器具や天井のデザインなど、当時の元気の良さが伝わってきます。そんな昭和の雰囲気を生かしたリデザインを施せば、建物自体は間違いなく魅力的になると思います。
問題は、何に使うかです。車の寄り付きができないとなると、定住して日常的に暮らすという選択は難しいでしょう。ただ、階段を歩くとか、階段そのものの存在は50年以上の日常として受け入れられています。
その象徴が都市ガスと上下水道のなどのインフラ整備。ほかの都府県でこんな階段や坂の街なのにここまでインフラが整っているところは少ないんじゃないかなと。
確かにここは長崎市で県庁所在地ではあるけど、このインフラが現代的生活を送るには地味に必須だったりするんですよね。
熊本の中山間地の空き家活用とかやっていると、建物やロケーションはすごくいいんだけど、トイレが汲み取り式で水洗化が難しく、現代的暮らしという選択肢が持てないというのはかなりデメリットになってしまう。ここが整っている長崎の傾斜地のポテンシャルはかなり高いと思うのです。
日常的暮らしは厳しいけど、非日常であれば階段や坂道、高台などはアトラクションになる。傾斜地に面白いお店などが点在していたら、そこに歩いていくという行為も楽しめそう。
そんな使い方、生かし方ができるんじゃないだろうかと思うのです。
さて次の物件へ移動。相変わらず階段を黙々と登ります
間取:5DK 面積:96.76㎡ 築年:1971年 価格:330万円
330万円という値付けも実際の流通価格にはならないだろうとのこと。
こちらは築年数こそ他のものと変わらなかったですが、雨漏りが発生しており、そこに修繕費を相当使ってしまいそうでした。
やっぱり雨漏りやシロアリ被害があるかないかで、その建物の「値段」はかなり変わりますね。空き家所有者の方はその辺りも意識しておいた方がいいです。
次の物件は目の前に川が流れています。小さな滝まであって、川のせせらぎ音が心地いい案件です。
間取:5DK 面積:88.33㎡ 築年:1976年 価格:150万円
価格が150万円、不動産屋さん曰くこの価格でもなかなか動かないらしいです。
規模や条件を見ると↑の400万円とか330万円とかと変わらないはずなのに、ここまで価格の差があるっていうのも、情報を流すために仕方なく値付けしているって感覚なのかもです。
全てではないとのことですが、相続してなんとなくそのまま所有している方が多いらしく、とはいえ所有し続けるには、固定資産税や草木の手入れなどにそれなりの経費が必要で、それが所有者の悩みになりいくらでもいいから売ってくれという依頼があるらしいのです。
年間数万円程度の固定資産税、最初は安く売るより持っていればいいかぁと思っていたものが、2年3年と何にも使わないものにお金をかけ続けるのが勿体なく感じ始めるのは当然でしょう。
そんな所有者の悩みと、新しいビジネスを始めたいと思っている我々のようなものが繋がり、地域の価値の向上(売れなければ地域の価格は下がっていきます)や維持に貢献できるのではないか。
地元不動産事業者・地元建築事業者・地元金融機関・地元サービス提供者、そして地域外の個人デベロッパーとが連携し、新たな価値の創造を目指したのが今回のツアーだと思っています。
運営企画者の小笠原さんは言います。「ただのよそ者が、地域を食い荒らすような開発(投資)はしたくない。だから今回のツアー参加者は選考制として、この人だったら長崎の課題解決を面白く、自己投資ビジネスとしてやってくれるんじゃないか」
さらに「ただの投資家っぽい方からの参加申込みも排除しました。莫大なお金をかける開発はそれだけ地元へも負担がかかる。身の丈にあったスモールスタートができるデザイン系投資家を選抜したつもりです」
今回参加の三組はそんな選考基準をクリアして、ここにいるのかと思うとますます面白いツアだなーと再認しました。
そしていよいよ最後の案件へ。ここも坂の上の街として知られる立山地区へ。
今回のツアー最後の物件をみんなで吟味。間取りが使いにくそうだけど、まぁどうにかなるねと、かなりこなれてきた雰囲気です。
立山をあとに、市内方面へ歩いて帰ることに。その途中でいきなり視界が開けました。この範囲は解体が一気に進んだ地域のようです。こうなってしまうと、車の寄り付けないところでは新たな開発は難しいでしょう。逆に、広場としての利用はアリかもです。
どんどん降っていくとこんなものがありました。なんと普段使いのモノレールです。2人が乗れて階段部分を昇降してくれるとのこと。ただ現在は故障中で無期限運休とのことでした。
こんな空き地は宅地としては使えなくても、坂の街階段の街のポケットパークとして機能しそうだなと。
市内へ降りてきました。ランタンフェステバルを一週間後に控えた街中は飾り付けでキラキラしてたな。
コーヒー飲みたいねと入ったお店は、こんなラテ作ってくれるカフェでした。坂本龍馬と岩崎弥太郎を注文、デベロップメントツアーの締めとしてはいい二人だったと思います。
ということで、今回のツアー報告はここまでです。ツアー参加しての感想は「足パンパン」です。随分な距離を歩きましたが、そのほとんどが階段という。
ビジネスツアーだけど、それだけでないアトラクションツアーの要素もあり、夫婦で参加できたのも新たなツアーの形かもと思いました。
これまでワーケーションって成立するのかなと思っていたけど、今回のツアーは明らかにワークとヴァケーションが見事に融合し、充実した旅を堪能することができました。
この記事で書いたことは「なんか始めたい」と思ってる人にとって、旅行についでに少し真面目にことを体感するには良いきっかけじゃないかなと。スマートニュースあたり取り上げてくれるとgoodじゃないかい。
今回は、物件購入までには至らなかったけど、すごい未来が見えたのは確か。このnoteを読んで、真似してみようと思った方いたら、じゃんじゃん真似してもらいたいものです。
そうすることで、日本各地の地方が価値を生み出し、やがて全体が元気になれればと思います。ただ主催者はこうもいいます「いいね、すごいねっていう人は多いけど実行する人は少ないんです」
「まずはやってみろ!」今回のツアー懇親会ででた言葉。なんてことない言葉だけど、一緒に歩き回った仲間だからすごく沁みた言葉でした。
参加の皆さま、主催してくれた小笠原さん、そして地元不動産会社の方々、取材やバックアップをやってくれた長崎新聞社さんや、DMO長崎の方々、大学院生でありながら同行して写真撮ってくれた紫苑くん、本当にありがとうございました。
この繋がりを一生のものにして、新たなビジネスを生み出していきたいと思います。最後に、長崎三日目の完全趣味の写真を貼って締めたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。結局、文字数は6000文字に達そうとしています。空き家を使った新しいビジネス、今後もバンバン紹介していくので、なんかやりたいと思っている方は、ご意見ご感想お待ちしております。一緒に何かやりたいという方も大歓迎です。
ちなみに、直近で開催した解体ワークショップは今後も定期的に開ければと思っています。DIYを楽しむための第一歩として、解体を知るのは非常に面白いのです。↓は前回開催分のチラシです。
ということで、今回の長崎坂宿デベロップメントツアーの報告は終わります。ありがとうございました。
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