普通の田舎でパン工房|空き家をリノベで地域密着型パン工房のススメ
|築古住宅空き家をフルリノベーション
熊本県山鹿市長坂、山鹿の中心部から車で5分、熊本市内からは車で40分の農村地帯。福岡太宰府ICから高速使ってちょうど1時間という、至って普通な田舎。
北へ向かうと「2000年の米作り地帯」として日本遺産に登録された菊池川がゆったりと流れています。
そんな山鹿市長坂にあった築45年の築古木造住宅、その空き家歴は10年ほどでした。
手入れされずに朽ちていくばかりの地域の空き家。こんな風景、田舎ではどんどん増えています。そんな空き家を↓のように再生させました。
生まれ変わったこの空き家を↓で絶賛売り出し中です。
住宅としての売り出しなのですが、訪れる方々は「わー、お店屋さんみたい」「かわいいー」って声が多いです。
おそらく、大きくてフルオープンできる玄関ドア、そしてそこに広がる白い六角形の床のタイルがそう感じさせるのかなと思います。
物件ファン↓でも異例の数「いいね」や「コメント」をいただきました。
そんな声を毎回聞くと、暮らす場所(単純に住宅だけ)というより、お店の方がいいのかと本気で考え直しています。
そこで今回は、パン工房としての可能性について、探ってみようと思います。なぜパン工房なのかも解説してみますね。
|パン工房との出会い
地域に増え続ける空き家問題、その解決のためにできることを!と普段活動しています。
そんな活動やってると、意外な繋がりも増えてきて、めちゃくちゃ美味しい食パンに出会いました。
小麦粉などの素材が吟味され、効率性を重視したものではなく、パンへの愛が溢れ出るような素朴だけど、めちゃくちゃ美味しい食パンです。
それが↑の「めりめろ」のパン。「めりめろ」ってひらがななのでイメージしにくかったけど、フランス語で「ごちゃ混ぜ」とか「盛りだくさん」「いろんなもの」という意味があるそうです。
食パンというシンプルなパンなのに、なんでごちゃ混ぜなの?と思いましたが、店主はパン工房の他にもいろんな活動(子ども食堂とか子育て支援ボランティアとかets)をされていて、人生そのものが「めりめろ」なのかと勝手に解釈しました。
ところでパンについてです、僕のパンについての意識は相当低く、「やっぱりご飯だよね〜」とか、「炭水化物は少なめにね」とか言って、最近ではご飯すら食べる量ずいぶん減っていました。
そんなある日、こちらの店主が八代市でマルシェに参加するとのこと。日曜日でお天気良かったので家内と二人で出掛け、食パンとそのほか創作パンをいくつか買って帰りました。
見た目は普通のパンなので、すぐに食べようとか、正直思いませんでした。そんな僕を横目に、家内は速攻袋を開けて食べ始めます。
「おいしーっ」っと車中に絶叫が響きます。そんな驚き方ある?って思っていると、ちぎられた芋パンを、口に突っ込まれました。
うまーーーーーーーーーーーいっ!
僕の口からも絶叫出てしまいました。なんだこれ、これまで食べたパンと違う。これが厳選した素材の威力なのか?
いや、これまでにもそんな謳い文句のパン食べたことありましたけど、こんな衝撃は初めてでした。
家内は、続けて食べてましたが、僕は車を運転しながら食べるようなもんじゃないなと、食べるの我慢して家路を急ぎました。
|晩ご飯での衝撃
晩ご飯には晩酌することが多いです。先にも言ったように炭水化物を食べないで、おかず(主に居酒屋系)を肴に、いろんなお酒を楽しみます。
今日はなんかワインな気分だったので、帰りに近所のシャトレーゼによってこれを購入。店頭で樽からリターナブルボトルに詰めてくれる最高コスパの美味しいワインです。
肴は特に買い物せずに、家にあった豚細切れ肉とモヤシを、さっと和風出汁と塩胡椒で炒めただけ(これは家内が作ってくれました)。
和風出汁だけどワインとの相性、すごく良かった。そして目の前には今日買ったパンが並んでいます。晩ご飯で食パンなんて食べたことなかったけど、モノは試しにということで。
さっとトーストして、豚さんと一緒に口の中へ。んんっ、なんかいけるな。んじゃワインはどうだ?
フォーっっっっっっっっっっっっ!
めちゃくちゃ合うじゃないですか、次々にパンをちぎって口に運び、そしてワインをチビっと。
こんなにワインとパンが合うとは、イタリア人の食卓にワインボトルと、パンが並んでいたのが、やっと理解できました。
|パン作り体験してきました
あまりに美味しかったので、パン作りの体験を申し込みました。快くお許しいただき、店主のパンへの愛情を垣間見ることに。
この前にこねたり色々あったのですが、誌面の都合上一次発酵完了の確認の画。
秤できっちり重さを測って、狙いの大きさに切り分け。
ニ次発酵まで済ませて
ふわっふわの成形された生地にそっとナイフを入れ、その切れ目にオリーブオイルを注ぎます。この時点で生地からは美味しそうな香りがほのかに。
オーブンへ投入、時間が経つとともに、いわゆるパン屋さんのいい香りが部屋中に漂います。「幸せの香り」という表現がぴったりな感じです。
出てきましたー、なんかほんとに我が子誕生!的な感動がありました。
今回の体験で作ったパンです。小麦粉の量としては250g〜300gとのこと、全くパン作りを知らなかった者としては、ちょっと驚きでした。
そして実食。ちょうど娘の誕生日だったので、大好きなシュリンプサンドにしてやりました!想像いただけると思いますが、めちゃくちゃ美味しかったです。
|パン食が普通に楽しめる感覚
前回の夕飯、そして今回のパン作り体験。今更ですがパン食でいいんだ、パン食も美味しいし、その食するまでにもドラマがあって面白いと思いました。
51年生きてきて、初めての経験。ネットやテレビで、人気のパン屋さんとかよく見るけど、正直そんなに売れるのかな?
みんなそんなにパン食べてるのかな?って思ってたけど、ごめんなさい。
近所に、今回出会った「めりめろ」パンがあったら、週に3回は、絶対食パン買いに行くなと、強く思いました。
それと同時に、先日放送されていた「人生の楽園」、楽しそうにパン屋さんやってるご夫婦を思い出したのです。
神奈川の山奥にあるパン工房、金曜日と土曜日だけの営業。
その工房での直接販売と、ご主人のラーメン店(市街地)でのテナント販売。
テレビということもあるでしょうが、ちゃんと売れてるし、常連さんがいるのもわかりました。
そう、今回の「めりめろの食パン」に対する僕の感情は、まさに常連さんのその姿と重なったのです。
|田舎でパン工房
ここで、「長坂の家」と「パン工房」という組み合わせが、僕の頭の中で生まれました。
先に書いたように、長坂は田園に点在する、農村集落の一つにしかすぎません。
でも、その集落には、ざっと地図で見ただけでも、300戸以上の暮らしがあって、さらに半径3kmまで広げれば山鹿市の市街地までカバーします。
市街地には公共施設や各種事業所、それに福祉施設など、多くの働く人が行き来しています。
ここで、美味しいパンが作れれば、きっとちゃんと売れるんじゃないか、そう思いました。
そんな簡単に?と感じるでしょうが、僕のような、食パン未経験者が殆どなはず。
そこにきちんと、この味と感動を届けることができれば・・・。さらに素材を吟味し、スーパーやコンビニのパンと違うものが提供できれば・・・。
絶対うまく売れるんじゃないだろうか。もう、僕の妄想は止まらなくなりました。
|実際にシミュレーションしてみる
ここからは、山鹿市にある長坂の家をモデルに、実際にパン工房開店、そして営業までをシミュレーションしてみようと思います。モデルは↓を想定しました。
まずは物件費、これは土地と建物及び外構費(駐車場整備・庭整備含む)で1500万円(税込)。
暮らし始めるために必要なものは、冷蔵庫や洗濯機などの家電と寝具くらい。
これまでアパートで使っていたものを持っていけば、エアコンや照明、ソファーまで付いてるので、簡単に生活はスタートできます。
これに、工房を始めるために必要な設備費をプラスしていきます。
|パン工房の設備
ガッツリ稼ぐパン屋さんは想定していないので、大袈裟な設備投資はありません。
営業スタイルとしても、初めての子育てを楽しみながら、金曜日と土曜日だけしっかりパンを焼く。
その日だけは、実家のお母さんへ子育てのヘルプをという、ちょっとゆとりあるパン工房です。
でも、食パン作りには妥協せず、本当に美味しいものを作りたい!と強く思っているんです。それでは、設備費について計算してみます。
オーブンやミキサーの数は、作るパンの数で増減も可能ですが、今回は金曜日と土曜日で、100斤の食パンを焼く想定です。
わかりやすいように、食パンだけで計算していますが、他のパンももちろん焼けます。
食パン100斤焼いて、それを半斤に切って、200個になったものを440円(税込)で売った場合、売り上げは88,000円になります。
これは1週間での数字なので、×4週で352,000円が月の売り上げになります。
そのうち原材費は100,000円くらいで、水道光熱費を別にして、差額が252,000円。ここから、工房に投資した分の返済を考えると・・・。
工房設立に伴う資金を、全額融資でまかなうのであれば、一般的には日本政策金融公庫になると思います。
条件によりますが、今回は↓の内容(全額融資)で考えてみます。
これをまとめると、月々の利益が252,000円。そのうち借入金への返済が28,200円なので、月々の差額は223,800円。
ここから、電気や水道光熱費、移動販売のための燃料費をざっくり30,000円として、193,800円程度は手元に残る計算になります。
お気付きだと思いますが、この借入計画は7年なので、今生まれたちびっこが、小学生になった頃には、252,000円が丸っと利益になっているはずです。
|机上の空論問題
これはあると思います。計算上は↑が成り立つけど、本当にそうなるの?絶対そんなツッコミあるはずです。でも、よくよく考えてみて。
今回のシミュレーションは、全額借入であり、工房への設備投資もある程度やってる。
作るパンの数についても、2日間で100斤と絞っているし、ここは自分好みにカスタマイズも可能です。
もっと利益上げたいなら、金曜日土曜日の2日日間だけでなく、3日間パンを焼いて400斤にできれば、利益はもっと上がります。
あるいは、移動販売先を、うまく開拓できれば、もっと大きなパン工房も夢ではないはずです。
とはいえ、売れ残りリスクはあると思います。その時大事なのは、「売れなかった」「売れ残りそうになった」時、絶対に安売りをしないこと。
近所のスーパーで、夕方や夜間になると、惣菜が安くなるのが分かっていれば、消費者はその時間を待つはずです。
それって、「美味しい」ということよりも、「安くなる」という情報の方が、イメージ強く残っている状態ですよね。
もし、売れ残る可能性が見えたら、それはタダで配った方がいい。売れ残りを安売りするより、「素材に徹底的に拘ったパンです。是非食べてみて下さい!」って試食に使った方が、消費者の印象は良くなるはずです。
出張販売でも、この試食を盛大にやって、「あそのこパンめっちゃ美味しいよ」って言ってくれる応援団や、僕みたいにファンになる人を増やした方が、結果的に売り上げも伸びるはずです。
もちろん、ずば抜けて美味しくなくては、この作戦は通用しませんので、美味しくするための、日々の研究は必須です。
|だから田舎のパン工房はいける!
ここまで語ってきたことは、建築業界で生きてきた、おじさんの戯言かもしれません。
でも、自分でやれるならやってみたいな、チャレンジしてみたいと、ほんとにワクワクしたので記事にしてみました。
実は、銀行にこの長坂の家を自分で購入し、このパン工房事業について、融資申し込みしました。物件費と設備費、合わせて17,200,000円の融資です。
普段取り扱っている、住宅ローンで考えると、少額の部類に入る融資額です。なのに、銀行からの回答は「これまでの融資の分が、まだ残ってるので、もう少し残額を減らしてからにして下さい」。
あえなく、僕のワクワクは途絶えてしまいました。
話を元に戻して、再度シミュレーションです。総額17,200,000円のうち、住宅ローン(超低金利)で利用できるのは、15,000,000円の住宅部分だけです。
設備資金は、事業資金として、日本政策金融公庫で2.1%くらいでしょう。これは先に紹介した通りです。
これが街中であれば、物件価格が高くなって、総額は25,000,000円くらいになるかもしれません。しかも、パン屋さんの競合も、当然多いはずです。
だから、山鹿市長坂でオープンする「田舎のパン工房」には、すごいメリットがあると思うのです。
こじんまりと、趣味+αというスタイルもいけるし、営業戦略をゴリゴリに練って、バリバリのパン屋さんに仕上げるのも可能。
敷地も広くて、北側にはまだ土地が余っています。建物の増築や、定期的なマルシェの開催なんかもできちゃいます。ということで、実際マルシェやってみた!
|設備備品は他にも必要だけど
設備投資としては、先に書いた機械類以外にも、ボールやミキサーの替え刃、まな板やヘラとか必要です。
使い込まれた食パンの型箱や
オーブンなんかも愛おしく感じました。愛情持ってパンを作る人の思いが、こんな調理器具にも宿るんでしょうね。
この辺りの機械類以外のものは、少しずつお気に入りのものを揃えてくのも楽しそうだなと、またまた妄想してしまいました。
|お問い合わせはいつでもOKです
もし、この記事を読んで「やってみよう!」と思った方、全力で株式会社Reborn協力します。
山鹿市内の販売ルート開拓とか、融資に対するアドバイスとか、メインのパン作りに関する師匠の紹介とか。
この長坂の家で、そんな夢溢れる活動が生まれるとしたら・・・。
増え続ける空き家の利活用と、ショップや工房を、小さく立ち上げたい人たち、その繋がりに関われるのであれば、めちゃくちゃ嬉しいです。
気になったら、↓から、なんでもいいのでご相談下さい。また、長坂の家はいつでも見学OKなので、見学申し込みもこちらからどうぞ!
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