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港区のマンションが値下がりすると予想する理由

下のグラフは、都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)のオフィスの空室率を表わしたものです。一般的に空室率は「5%」(赤の点線)が、好況と不況の分かれ目になるといわれています。

コロナ禍の始まりを2020年2月とした場合、その数か月後から空室率は上昇を続け、
1.渋谷区
2.港区
3.新宿区
4.中央区
5.千代田区
の順に5%を超えました。2022年9月の時点では、渋谷区と千代田区が5%を下回り回復の兆しを見せる一方で、港区は高止まり中央区に至っては上昇を加速している様子がうかがえます。都心のオフィス市況も二極化に入ったといえそうです。

都心5区オフィス「空室率」

次に、平均賃料の推移を表わしたのが下のグラフです。

都心5区オフィス「平均賃料」

空室率の上昇に合わせて、平均賃料が下落している様子がうかがえます。コロナ禍の始まりを2020年2月とした場合、2022年9月と比較するとそれぞれ下落率は以下のようになります。

オフィス賃料下落率(数字の大きい順)
1.渋谷区 :▼15.6%
2.港区  :▼12.8%
3.千代田区:▼10.6%
4.中央区 :▼8.8%
5.新宿区 :▼7.0%

これらのデータからエリア毎の市況の変化を言い表すと、例えば渋谷区は市況の悪化に対して家賃を思い切って下げる方法で対処し、早期回復に向かいつつある。逆に、中央区は市況の悪化に対してそれほど家賃を下げずに粘ったが、ここにきてどのエリアよりも不況が深刻化しそうな気配である、といった表現になるでしょうか。

では、港区はどうか。

港区はコロナ禍が始まった1年後にはどこよりも市況が悪化。どの区も経験していない「空室率8%」を2021年6月に超えて以来、15か月以上連続で高水準を継続しています。では、平均賃料はというと、渋谷区に次いで2番目に大きい「12.8%」の下落を記録しています。

つまり、港区は家賃のダンピングを実施したにも関わらず、テナントが埋まりにくい状況が続いている、と推測することができます。

ある財閥系ビル大手のトップは、「老朽化した小中規模のオフィスは今後マンションかホテルに建て替わるだろう」と言及していました。

分譲マンションは、コロナ禍の在庫減少による需給の引き締まりで相場が高騰しています。しかしながら、テレワーク浸透により賃料を下げても埋まらないオフィスビルが解体され、その後に新規分譲マンションとなって市場に供給されることが十分考えられる、ということです。

ここで、留意すべき点は2つあります。

ひとつは、再開発などの大掛かりなプロジェクトではなく、総戸数100戸未満の中小規模のマンションが主流になるであろうこと。空地の大きさ(緑の量)や共用施設の充実をそれほど期待できない商品企画になるのではないでしょうか。だとすると自ずと価格も(大型再開発案件等にくらべると)こなれた設定になるのではないでしょうか。

もうひとつは、長い時間をかけて結構な量が出るのではないか、ということです。港区は赤坂、虎ノ門エリアを中心に大型再開発が集まっています。巨大なオフィスの大量供給は、競争力の劣る老朽化した小中規模のオフィスを少なからず解体に追い込むのではないかとみています。

大型再開発の中の新規分譲マンションが驚くような高値で売り出される一方で、競争力の劣るビルが建て替えられた分譲マンションは回転重視(早期完売)の値付けでマーケットに出てくるのではないかと推察します。

よって、5年から10年かけて港区のマンションの平均価格は緩やかに値下がりすると予想します。