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第五回 点群転生デザイン原論

2023年秋学期前半科目として開講された寄附講座「点群転生デザイン原論」。2023年10月31日、巷の喧騒をよそに都心から外れたSFCでもひっそりとハロウィンの雰囲気が漂っていた。サウジアラビア帰りの會澤大志も現地に訪れ、講師も履修者も好き好きに転生(仮装)している。

前回講義、第四回はこちらから

点群転生デザイン原論
慶應SFCで2023年秋学期開講。會澤高圧コンクリート株式会社による寄附講座。本講義では、使用済みのものを廃棄するのではなく、形を変えて新たな利用先を生み出し循環させる際に、新たな「物語(ストーリー)」を介在させる方法を「(ものの)転生」と捉え、その新しい方法を開拓する。


ヤマトコトバと転生

さて、読者の方々。これは何をしているでしょう?

神主の格好をした男が、右手に尺を持ち、左手にはスマホ、目には近未来を感じさせるサイバーサングラス….

答えは、点群転生デザイン原論のラップ。何ともクレイジーでエンターテイメントなオープニングから講義が始まった。

第五回の講義、ゲスト講師はシシドヒロユキ(敬称略。以下、CCD)である。第二回ほかこれまで何度も聴講に来ていただいたCCDが、『ヤマトコトバと転生』のテーマで前半講義を行った。第一回から何度も日本に住んでいること、日本人であること、日本から発信していくこと、として点群転生デザインが語られてきたが、今回その日本のルーツであるヤマトコトバに迫っていく。

念の為注釈しておくとCCDは本物の神主である。ラップやHipHopと日本文化を合わせた存在は一見はちゃめちゃのようにも感じるが、どこか魅力的だった。イノベーションがいつだって異端なものであったように、ヤマトコトバ・ラッパーも次の未来を見せてくれるかもしれないと期待に胸を膨らませてみる。

シシドヒロユキ(ししどひろゆき)
ヤマトコトバ・ラッパー、ノマド神主。1977年宮城県仙台市生まれ。医師一家の次男。
長崎県、東京都清瀬市育ち。中学・高校時代を愛媛の愛光学園で過ごす。
カナダ暮らしの後、慶應義塾大学環境情報学部(SFC)卒業。
博報堂勤務、一青窈マネージャーなどを経て、
東北福祉大学大学院臨床心理学部、國學院大學神道学専攻科を卒業。
2001年よりヤマトコトバ・神道霊学などを学ぶ。
2012年より都内を中心に各地でご奉仕をするノマド神主、
大祓詞を歌うヤマトコトバ・ラッパーとして活動している。通称CCD。

シン・ヤマトコトバ学より

柏手は左右がないとできず、日本語は一つの漢字に複数の意味があり、いろいろな掛詞がある。それらを例に挙げながら、「日本人や神道は他者を肯定的に捉えて相手と統合することが得意である」という一言が印象的であった。点群転生デザインは、日本人が成す存在論的転回の可能性を秘めている。

また、言霊についての説明もあった。言葉は単なるコミュニケーションの手段だけでなく、音であり、その背後には情報やエネルギーが宿っている。言葉にすることで、まことに向かっている。古の人たちは、言葉に特別な意味を見出し、その力を信じていたことがわかる。今を生きる私たちも、言霊を信じて言葉にしてみることがあるだろう。講義では言霊祭祀実践として、

  1. 点群転生デザイン原論の学業成就を祈るみまつり

  2. 大祓詞

  3. 十種神宝祝詞

が行われた。YouTubeで公開されるアーカイブ映像でその様子を見ることができる。

バーチャル浅間神社

講義の最後は、もののあはれ、大和言葉の和歌三首が詠まれた。

世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば

万葉集 / 山上憶良

この秋は雨か嵐かは知らねども今日のつとめに田草取るなり

二宮尊徳

よもの海みなはらからと思ふ世になど波風のたちさわぐらむ

明治天皇御製

最終課題発表

講義後半では、最終課題が発表された。ここから2週間最終課題に向けて履修者はグループワークを行う。

最終課題は、中間課題で行った2033年の1年間のインスタレーションを想定したメディアセンター第二形態から、メディアセンター第三形態へ。1990年に情報化時代に先駆けて生まれたメディアセンターから、次の40年を生きるための新たな「メディア〇〇〇」を考案する。

マテリアルレベルでの制限は、第二形態の壊したコンクリートの形を見立てて再利用するリユースから、材料の状態に戻して再度型枠や3Dプリンティングを行なって造形をすることが想定され、より課題の幅が広くなった。かたちの制約がなくなり、自由度が増したことで、LLMとの関わり方も変わっていくだろう。

中間課題同様、課題文を明記しておく。

次回は、3Dモデリングと生成AI、SFC点群データとのマージ、AIを用いたレンダリングを行う。

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