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第三回 点群転生デザイン原論

2023年秋学期前半科目として開講された寄附講座「点群転生デザイン原論」。2023年10月19日、少し涼しくなり、金木犀の香りが漂う。やっと秋が始まった。βドームで行われる第三回は転生の秋とでも言えようか。

前回講義、第二回はこちらから

点群転生デザイン原論
慶應SFCで2023年秋学期開講。會澤高圧コンクリート株式会社による寄附講座。本講義では、使用済みのものを廃棄するのではなく、形を変えて新たな利用先を生み出し循環させる際に、新たな「物語(ストーリー)」を介在させる方法を「(ものの)転生」と捉え、その新しい方法を開拓する。


中間課題に向けて

第三回講義は、中間課題に向けてのオリエンテーションと、作業時間に充てられた。木材・コンクリート・プラスチックのリユースとリサイクルの話や専門であるリサイクルプラスチックにおける付加価値・物語の重要性、転生する際の注意点が挙げられた。

何より印象的であったのは、「命名」への提言である。子が生まれる際「生物としては私が産みます。社会的な存在としてあなたが名前をつけてください」とパートナーから告げられるなんて話もあるそうだ。つまり、"命"名と言うように名前をつける行為は大きな命の誕生とその祝福を意味する。本講義でもコンクリートのかけらに名前をつけることで、何でもなかったかけらが生き生きとした固有のオブジェクトになるだろう。

中間課題の一例を紹介するSA

中間課題

「点群転生デザイン原論」は学際的であり日本的な視点から生まれた試みである。日本の学生らが本noteを読み、同時多発的に実践されたら面白いのではないだろうか。本講義では、SFCメディアセンター(コンクリート)を点群転生させるが、近所の公園や自分の家、捨てられないものやこれまでゴミとして扱ってきたものなどを点群転生するのもいいかもしれない。

参考となるよう中間課題文を添付しておく。

SFCは新しいデザインの方法論を教育研究する大学です。そこで今回、「ChatGPTとともに」、それらの破片に新たな意味と価値を与え、「強力な魅力を持つ物語=神話」が宿る庭園・公園をつくるということにチャレンジしてください。

命名する

前回講義で破壊したコンクリートブロックをLuma AIで3Dスキャンして名前をつけた。かつてメディアセンターであったコンクリートは、それぞれ別の名を持って転生する。

Luma AIでスキャンしたデータ
作業途中、名前をつけて寸法を測る

点群データを処理する

3Dスキャンでは処理しきれなかったメッシュを閉じるなど微調整をBlender上で行った。

Blenderで調整

Chat GPT-4 と神話をつくる

ここではコンクリートブロックを扱うが、石にまつわる神話は実際多く存在する。兵庫県沼島の上立神岩は「古事記」「日本書紀」の神代巻にて、イザナギ・イザナミが夫婦の契りを結んだ天の御柱であり、国生み神話の舞台である。宮崎県高千穂峰の山頂に突き立てられた天之逆鉾は、イザナギ・イザナミが日本列島を作るために大地に突き刺しかき混ぜたとされている。海外でもギリシャ正教の聖地として知られるメテオラの奇岩群などが神話の舞台として語られる。

奇怪な形に見える奇岩は、神話になりやすい。日本では奇岩を舞台とする神話が数多く残される。古事記に「見立」という言葉が記載されているように、日本の見立て文化が神話に色濃く表れている。

履修者は、かけらの名前をChat GPT-4に読み込ませて、神話を創り出した。そのほかにも、Blenderでメッシュを処理したかけらの .objデータを読み込ませたり、テンプレートとなる神話をあらかじめ学習させたり、情報を小出しにしながら徐々に物語を作ったり、会話をしながら物語に指摘を入れてブラッシュアップするなど、自由で多様なプロセスから物語を生成する。

ここでの神話は「1000年後に残りうるであろう物語」と定義づけられた。強度ある物語が生まれるのか、それを私たちは判別できるのか。グループメンバーの対話し続ける根気と決断がわかる中間発表が楽しみである。

庭をつくる

Chat GPT-4と対話を繰り返して出来上がった物語をもとにして、配置を考える。コンクリートブロックを配置した庭は、さながら枯山水のようだ。庭はCluster上のSFC点群マップにブロックを設置して作庭していく。かつてメディアセンターだったものは、形を変えて新たな人生を歩み、関係を再構築していくだろう。

物語から生成した配置図

来週は、中間課題の発表だ。1つのメディアセンターが転生し、数種類のメディアセンター第二形態が生まれる。


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