「お疲れ様」

帰りの地下鉄車内。どこかで何かの仕事をしている人ばかりがホームに立ち、無言で地下鉄の到着を待ち、開いたドアに吸い込まれていく。その中に自分もいて、自分も前に並んでいる人に続いて車内へ。空いている席を見つけて座ると、ドアが閉まって発車。そして次の駅に到着してまたドアが開き、降りる人は降りて乗る人は乗ってくる。それはいつものことであり、地下鉄に乗っている限りはその繰り返し。
車内に聞こえる音は、天井から女性の次の駅の案内(日本語・英語)と、床下から聞こえるモーター音と、日立製インバータ装置特有の「ブ~ン」という全電気ブレーキ音(気になったら検索してください、もしくは地下鉄乗車時に気にしてください)。だからまあ、乗客同士の会話は基本的に聞こえてきません。そういう自分も「お先に失礼します」と言って一人で会社を出ているから、1階へ下りるエレベーターも一人なら、地下鉄に乗るのも一人。周囲に人はいても知らない人ばかりだし、みなスマホに目を落としているから、自分も何も話すことはありません。

そんな、押し黙った地下鉄車内に男性の声が聞こえました。それは
「お疲れ様でした」
の一言。50代と思われる男性は、地下鉄車内の別な場所に知り合いというか同僚を見つけたようで、声をかけてから降りていきました。

自分に挨拶してきたわけではないから態度も顔色も何も変えなかったけれど、地下鉄車内にいる人はみな何かの仕事をしているはずだし、一日の仕事を終えて帰宅する人がほとんど(自分もそう)だから、誰ということでもなく、みんなにあてた挨拶のようにも思ってしまいました。なので、どこの誰かはわからないけれど、その降りていった男性に対して心の中でこうつぶやいたのでした。

「お互いに、お疲れ様」

自分も8時間働いて疲れたもん。
で、明日の夕方も同じことが繰り返されるのかしらん。


(お読みいただきありがとうございました。内容に共感していただけたら心付もお願いします)

ここから先は

0字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?