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【日記、感想】生け棚について

以下のイベントに行った。

池袋にあるジュンク堂書店本店で開催されたイベントだ。リニューアルオープン記念のイベントだ。

リニューアルされたジュンク堂書店に新設された9階奥のイベントスペースのこけら落としの意味を持つ。

登壇者は、wedメディアオモコロの編集長である原宿さんと、会社員でありながら本を執筆している岡田悠さんの二人だ。

内容は、本および本屋の楽しみ方についてだ。

話題は、二人が最近読んだ本の紹介から始まり、岡田が経営している小さな透明書店へ移り、最後は本棚あるいは、本を棚に並べる行為への言及となった。

岡田さんも司会をされた書店員の方も、棚へ本を並べる作業が業務の中で一番楽しいとおっしゃっていた。

イベントの後半は、上記の楽しみを味わえ、さらに総合書店であるジュンク堂という場を生かした「生け棚」というゲームのような催しをした。

各々がテーマを決めて、本を選び、制限時間5分以内で50cm×50cm程度の小さな棚に収めるというルールだ。

選ぶ本は、総合書店であるジュンク堂が実際に販売している本だ。

漫画、小説、実用書、専門書籍、絵本、雑誌など、形式やジャンルを横断する128冊の本の中から自由に選ぶ。

本が好きな方が密かにゆっくりと楽しんでいる行為を、観戦者がいて、制限時間のあるスポーツのような競技へ変換する行為だ。ユニークで当然、面白かった。

内容の詳細は伏せる。

現在は配信された動画は非公開だが、後日アーカイブ配信するとアナウンスがあったので、気になった方は見てほしい。

ちなみに、私は開演時間ギリギリにジュンク堂に着いて、イベントスペースの一番端の席に座っていた。

トーク中は登壇者の顔が見にくい位置だったが、私の横にちょうど生け棚を行うための本棚があり、登壇者二人の悩む様を間近で見れた。運が良かった。

また、ジュンク堂の書店員の方が選んだ、生け棚に使う128冊の本もじっくりと見ることができた。

イベント終了後、私はさっさとイベントスペースを出て、ジュンク堂で買い物をした。二人が選んだ本あるいは、二人が選ばなかった本を買った。これは本屋ならではの面白さだ。

各階の本棚を物色していると、生け棚に使われた本は、面陳列してある本が多かった。

あの128冊の本は、分野を超えてその時、ジュンク堂がおすすめしている本だった。あの棚は、ジュンク堂書店本店を圧縮した生け棚の一つなのかもしれないな。と勝手に思ったりもした。

128冊の内、4冊を買った。ついでになので、ご紹介する。

ちなみに、買った本はパラパラと見ただけだ。

読んだ本は、大体読んだはしから忘れていくので、ちょっとだけ見た本を紹介しても問題ない。と勝手に思っている。

センスの哲学

著、千葉雅也。出版は文藝春秋。

センスがある、センスがない。これらの言葉は人間をドキッとさせる言葉だ。

センスという言葉は非常にあいまいだが、なぜかその人の本質を評価するような不思議な言葉だ。

本著では、センスを「直感的にわかる」と定義して、センスという言葉が使われる事例を紹介し、外堀を埋め、センスという言葉の意味を浮き上がらせる試みをする……っぽい。

そして、最終的にはセンスの良し悪しという価値観から離れ、アンチセンスという考え方を展開する……らしい。

センスの哲学はイベント中に目に入って、買うのを忘れていたことに気づいた本だ。


土と内臓 微生物がつくる世界

著、デイビッド・モントゴメリー+アン・ビクレー。出版は築地書房、訳者は片岡夏美。

この本は背表紙が厚く、白地に黒文字で大きくタイトルが書かれていたので、生け棚を見ているときからずっと印象に残っていた。

置いてある棚まで行き、本著をめくると以下のエピグラフが書かれていた。

E pluribus unum
多くから成る一つ

土と内臓 微生物がつくる世界 エピグラフより

短いラテン語のエピグラフはずるい。そんなの、カッコいいじゃん。

という訳で買った。本は勢いで買うものだ。

内容は地質学者と生物学者であり夫婦でもある二人の著者が、微生物研究と人間の歴史を包括的に紹介し、これまで医学と農学が無自覚におこなってきた人体や土地への滅菌や消毒について問題提起する……っぽい。

たぶん沈黙の春とかに近い……のかな? 技術への明確な批判はない……と思う。


インドのけもの

編集はカンチャナー・アルニーとギータ・ウォルフ、訳者は清水玲奈。

原宿さんが選んだ本だ。タイトルの語感で選んでいた。イベント中この本ついて触れる機会があった。

インド現地にある出版社が発行した絵本で、インドでハンドメイドされた本だ。背表紙にはシリアルナンバーが記載してある。

所有欲をとても刺激されたので買った。

インド各地の少数民族が描いた鹿、虎、ライオンなどの原生動物のイラストを収録した作品集だ。

同じ動物を書いたとしても、民族によっての見え方や感じ方の差が絵で表現されていて、かなり面白い。

手漉きの紙の風合いや、シルクスクリーンの印刷のズレ。匂いを嗅ぐと、嗅ぎなれない湿布のような少しツンとした匂いがした。

紙の本を手に取って読む楽しさも分かる絵本であり、本自体がまるでインドの工芸品のようだった。

ねじ入門

著、橋村真治。出版は日刊工業。

岡田さんが選んだ本だ。背表紙の赤色で選んでいた。ちょうどネジについて知りたかったので、買った。

私の本業は工場設備の設計および製作だ。知識ではなく実務の知恵として、ネジを知りたい数少ない一人だ。

私の専門は電気なので、機械工学について一から学びたいと思っていた。入門書はぴったりだった。

ネジの破損原因の章では、破損したネジの写真が多く掲載されていた。

折れたネジの断面やせん断したネジ山を眺めていたら、仕事でやらかした時の苦い記憶が蘇った。

仕事の空き時間に読みたいので会社の私用の引き出しの一番下、キャビネットになっているそこへ、設計便覧や工業用センサーカタログと一緒にこの本を並べる予定だ。

#日記 #本 #生け棚 #ジュンク堂書店池袋本店 #イベントレポ

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