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0683:統一教会報道から公務員の守秘義務を考える

昨日の統一教会会見を受けた今日のワイドショーがいろいろ盛り上がっていた。まずミヤネ屋は昨日同様に紀藤正樹・鈴木エイト両氏の解説が詳細で、特に「統一教会・田中会長は更に上の幹部から指示されて声明全文を読み上げなければならなかったのだろう」という点は、なるほどそれで昨日何回司会者に制止されても中断しなかったのかと合点がいった。しかし、こうなってくると、今回の会見も世間的には完全に逆効果じゃないかしらん。

で。そのように充実したミヤネ屋の裏で、ゴゴスマでは前川喜平氏が出演し、東国原英夫氏を始めコメンテーターの意見や質問も含め、名称変更問題を巡る行政の挙動に注目する私にとってはむしろ興味深い内容だった。

ただ、前川喜平氏は当意即妙な受け答えが下手というか、あれこれ考えすぎて質問に対する応答が今ひとつピントを外していたり同じ話の繰り返しで終わったりしたのは残念。例えば「申請は国民の権利だからそれを止めるのは権力の濫用、むしろ受理して宗教法人審議会にかけて判断すべきだった」との意見に対して、後者の問題にのみ終始して回答していた。後者も大事だが前者は橋下徹氏の論点でもあり、元行政担当者として「多様な行政現場の状況を踏まえて行政手続法33条で申請取り下げの行政指導自体は認められている」ことを前提に「相手が納得して取り下げたら適法(これは前川氏は明示している)」「納得しないのに行政指導をごり押ししたら違法」という流れを整理して説明して欲しかったな。この辺りは昨日の記事であらためてまとめている。

また、文化部長が文部科学大臣に「報告」したのは「意向確認」なのかどうかを巡っても複数の人の話がぐだっと絡まったが、これも「本来文部科学大臣に全権があるが、実務上その権限の大半を下におろしている」「決裁権限規定は形式・便宜であって、重要事項については決裁権者より上位の決裁を要する規定はある(←筈だよね、私のいた県庁の規定にはあったよ)し、決裁はそのままでも意向確認することは一般的にある」という行政現場の機微を解きほぐして説明すれば、論点は明確になった筈なのだ。

そんな具合に行政の視点で見ると非常に面白かった今日のゴゴスマだが、一点、爆弾発言があった。統一教会の申請を出させなかったことについて前川氏は「そういう運用はたくさんある」と説明した流れで「例えばサイエントロジーも宗教法人になりたいと相談してきたが認められませんといって引き取ってもらった」と発言したのだ。え゛っ、統一教会とは無関係の宗教団体(サイエントロジーはSF作家が作った宗教として有名)のそんな話をテレビで話すのは、まずいんじゃないか? と思ったら前川氏の発言直後にCM入りした。スタジオでも(これはヤバイ)と思ったのだろう。CM明け以降はサイエントロジーへの言及はなかった。

もともと公務員には守秘義務があり、これは退職後にも及ぶ。守秘義務違反には罰則規定(一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金)があり、これはつまり警察の捜査・逮捕の対象となる重たいものだ。

国家公務員法
第三章 職員に適用される基準
第七節 服務
(秘密を守る義務)

第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
第四章 罰則
第百九条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
十二 第百条第一項若しくは第二項又は第百六条の十二第一項の規定に違反して秘密を漏らした者

「職務上知ることのできた秘密」といっても、あらゆる情報がこれに抵触するわけではない。判例では「非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるもの」をいうとされている。

統一教会の名称変更を巡って実際に何があったのか、それはまさに「非公知の事項」だ。統一教会自身も知っているとは限らない。実際に起きたことは、当時の文化庁宗務課の担当ラインを含む少数の人だけが知っている。では「実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるもの」に当たるか。その判断は裁判所に委ねられる。

今回の件に限っても、前川氏が最初に「統一教会から事前相談を受けて申請を断念させた」という話を世の中に発信しだした時から、これが公務員の守秘義務との関係でどうなのか、気になっていた。単に行政内部の話ではなく、統一教会という民間団体(宗教法人)の利害に関わる話だけに、かなりデリケートな気がする。統一教会は社会から批判を浴びているから大丈夫(誰も問題にしない)という判断かもしれないが、サイエントロジー(これもカルトのひとつとされる)の話を口走ったのはマズかったのではないか。

ただ、前川氏のリークのおかげで、本件にメディアの注目が集まり様々な報道がされているのは、一国民としては有り難いことだ。その伝でいえば、2014~2015年に文化庁宗務課ラインで担当していた公務員が証言してくれれば、全ては明らかになる。ただ現役では無理、既に退職していてもOB雇用で天下りしているような人は注目を浴びたくないだろう。そもそも公務員の守秘義務に抵触する可能性(裁判所が判断を下すまで白黒つかない)を考えれば、証言する人はいないのだろう。事務次官の座を追われ政府に批判的な立場にいる前川氏だからこそ彼の知る範囲のことが明らかになった、ラッキー事案なのかも知れない。

そうするとやはり以前から書いてきたように、情報公開法第七条に基づく裁量的開示の道しか、事態が明らかになる道はないなあ。法人の利害に関係する情報というのが非開示理由だが、第十三条に基づき統一教会の了解を得られれば、開示はできる。統一教会は「名称変更に統一教会の政治圧力があったという事実はない」と言っており、それを明らかにする上で積極的に協力してくれるんじゃないか(なわけないか)。

この公務員の守秘義務問題については、少し勉強を深めたいと以前から思っていた。それは、消費生活センターを舞台にした公務員小説「やくみん! お役所民族誌」自体が私の公務員経験を反映させたものであり、どこまで書いて良くてどこから控えるべきなのかを弁えておきたいというのがひとつ。もうひとつは、第二話以降で「県庁の現実の不正を小説に描く元公務員」を登場させ、彼の戦術の見通しとか県庁とのバトルを描く上でも、この知識は必要になる。ただこの辺りは公務員の守秘義務の話と同時にいわゆる「モデル小説」つまりプライバシーの問題も絡んでくるので、勉強すべきことは多い。

--------以下noteの平常日記要素

■本日のやくみん進捗
第1話第22回、2,507字から進まず。

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積279h12m/合格目安3,000時間まであと2,721時間】
ノー勉強デー。週ナカ家業デーに加えて上記のようにワイドショー二本見て記事書いたら23時超えた。

■本日摂取したオタク成分
『艦隊これくしょん』第2~4話、今ひとつ話に興味が持てず、ついて行けてない。

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