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0682:宗教法人名称変更の行政手続を整理してみた

元公務員の立場で統一教会問題の中でも特に関心のある名称変更問題については、これまでいろいろ記事を書いてきた(文末参照)けれど、その都度に情報が細切れだった。あらためて法制度を整理してみよう。今回は面倒なので条文は貼り付けない。


【第一段階】事前相談時に申請書の提出をやめるよう行政指導をするか
1.指導する

 ①相手が納得して申請書の提出をやめる
   → 適法(行政手続法第33条が想定)
 ②相手が納得せず申請書提出の意思を曲げない
   一.それでも更に指導を続け受理を拒む
      → 違法(行政手続法第33条違反)
   二.受理をする → 第二段階へ
2.指導しない → 第二段階へ
 
【第二段階】標準処理期間内に処理するか
1.処理する → 第三段階へ
2.処理を長期間保留する
   →相手方は不作為についての審査請求(現行行政不服審査法第3条、旧法7条)または不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法第37条)により法的に争うことが可能。

【第三段階】認証するか
1.認証する
  
 → 宗教法人法第28条第1項第1号及び第2号を満たせば認証
2.認証しない
   →第1~2号のいずれかに抵触する場合は不認証。その場合は同第2項により準用する第14条第3項に基づき宗教法人審議会に諮問する必要がある。

さて。

現在明らかになっている事実は、以下の二点だ。

A.1997年から2014年までは事前相談の段階でとどまり、申請書の提出はなかった。

B.2015年に申請書の提出があり、標準処理期間内に認証された。

まずAの事実について、橋下徹氏は「申請書を提出させなかったのは違法だ」と主張しているが、【第1段階】1①のとおり相手方が納得して申請書を提出しないことは、行政実務の在り方として行政手続法が想定している適法なものである。「相手方が納得した」ということは前川喜平氏も明言しており、今日の統一教会会見でもそこの異論はなかった。仮に当時納得せず申請書を提出する構えを見せた場合、【第1段階】1②一のとおりまさに違法で、文化庁が認証しないままずるずると時を延ばせば【第二段階】2のとおり審査請求や訴訟で法的に戦えた筈だ。しかし、統一教会はそれをしなかった。このように場合分けをしていくと、統一教会側が内心では不服であったとしても「紛争は避けるべきとして引き下がった」(本日の統一教会会見)ことは、形式上「納得した」ことになると分かるだろう。その「納得した」状態が18年間も続いて(数年なら分かるけど18年だよ?)2015年に変化した理由は何かは、今日の会見でも示されなかった。

その意味で、文化庁が申請書を出さないよう行政指導したことについて橋下氏が「違法だ」とする主張は間違っている。なお、「水際対策は不当(×違法)」「行政の裁量に任せることは危険だ」という主張は依然として一定の理がある。

次にBの事実について。文化庁が「統一教会の名称変更は認められない」なら、受理をした上で【第三段階】2の手続を経て不認証とすることができた筈だ。これはAの期間についても、Bの段階でも、そうだ。ただ下村元文部科学大臣によれば「文化庁から認証しないと訴えられて負ける可能性があるから認証すると説明を受けた」という。この端的な説明からは、文化庁が【第三段階】2の手続の可否をどこまで深く検討したかが分からない。「負ける可能性がある」と説明するためには、【第三段階】2の検討が必須だ。
つまりをそこの時系列での変化を追うことが本件の鍵になる。

以前にも記したが、宗教法人関係の書類は台帳化されていて、実際の許認可等の手続に至る前の事前相談への対応も全て永年保存されている筈だ。それがなければ行政による指導の継続性を欠いてしまうのだから。この問題を探求するのであれば、「1997年から2015年までの期間」「統一教会の規則変更認証申請(名称変更にかかるもの)関係」「相談対応報告を含む一切の文書」の情報公開請求をする必要がある。ただし、その大半はまず黒塗りで出てくるだろう。法人情報なのだからそれは仕方ないが、情報公開法第7条(公益上の理由による裁量的開示)の道は残るから、それを求めるのは一手だ。更に、開示を求める審査請求や行政訴訟まで行けば、情報公開審査会委員や裁判官など、行政文書の詳細を知る立場の人は増えていく。その流れのどこかで、政府が根負けをすることを狙う──くらいかなあ。(いや実際のところ法人情報の開示のハードルは法令で厳しく縛られてるから難しいんよ)

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