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#40 ホルン吹きで初見がダメダメだった、大学オケ時代のおはなし。

初めての譜面を渡された時に、それなりに吹けるスキル。それが「初見ができる力」と一般的に言います。

楽器をやるときって、大体は譜面があって、それを必死に練習することで曲が成り立ちます。わたくしも若い頃はそうでした。譜面を配られてもすぐにはできない。

大学の時にオーケストラに所属したのですが、その時のホルンパートは、練習日の度にホルンアンサンブルをやっていました。
所蔵するアンサンブル譜面もかなり多く、わたくしのホルンアンサンブル人生はココで培ったと言えるくらいです。

大学オケということで、わたくしのような入ったばかりの1年生から4年生、さらにOBさんもいらっしゃる場。
ホルンアンサンブル譜面がたくさん入ったファイルを3つも4つも持ってきて、「今日はどれやる?」と先輩が話しています。その後、曲が決まったようで、譜面を出して一旦配られますが、当然知らない譜面。

目の前に配られた譜面を吹けばいいと思いきや、次にパート割を決めるじゃんけんが始まるのです。
いやいや、目の前にあるこれでいいんですけど・・・という言い訳は全く通用せず、じゃんけんに勝った人からやりたいパートを選んでいきます。要は、パートもその場で決まるんです。

これが続き、結局、練習日1日でホルンアンサンブルを何曲もやらされていました。
わたくしは、この初日のことをむっちゃ覚えていますが、目の前に譜面が合ったのに、ほとんど満足に吹けなかったのを覚えています。初見力が無かったのです。

そしてまた次の練習日もホルンアンサンブル三昧。その繰り返しです。
たとえ以前やったことある同じ曲だったとしても、大体パートは違うからやっぱり気が抜けません。そう、ずっと初見をやらされているんですね。

そんな鍛錬の中で、初見は、今吹いている次の小節を、常に脳をフル回転させて先読みするしかない、という当たり前のことに気付きます。

でもそれだけじゃない。
アンサンブルなわけですから、曲がどう動いているか、トップがどういう音楽をやろうとしているかを察知して、それにも付けていく必要があるのです。

曲の決めどころを全員で合わせたり、
静かなメロディに綺麗な和音を合わせたり、
トップの振りを見て、一瞬待ったり、
トップじゃないけどメロディの時には大きめに音を出さないといけなかったり。

アンサンブルをやって、いろんな要素を吸収していく中で、初見も体得していって、そのうちに「トップをやりなよ」と言われました。先輩に認められたのでしょうかね。

初見のトップを何回かやるようになって思ったのは、
【初見で、今から新しい音楽を創っていくんだな】という感覚ですね。

特に、速度記号も何もない譜面があると、「どんな曲なんだろうな」から始まります。
当然参考音源なんて無い譜面ばかりです。目の前の4分音符や8分音符で判断するしかない。
トップの譜面でどういう曲か判断できない時は、他の人の譜面を覗き込みます。が、最終判断は自分です。いや、そこに正解も無いのです。今、自分がこの新曲を作るだけなのです。

例えば、良く演奏している曲を、あえて曲調を変えてゆっくりで8分音符もテヌート気味に演奏すると、また違った良さが生まれたりもします。
そんなことを知るにつれ、音楽って自由だよな、と思ったりもしました。

初見とは、新しい音楽を創っていくこと。そしてみんなが楽しんでいくこと。
音楽の楽しみって、こういうところに詰まっているんじゃないかな、と思います。

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