![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143251146/rectangle_large_type_2_373ed1317cc38fdd6e744ead03ab4f40.jpeg?width=800)
8. せっかちだよ・・ Champion 860(‘65)
こんにちは。
おやじの左手です。
趣味のひとつとして、1960年代の国産手巻き実用腕時計を集めてはこつこつと修理をしています。
記事の趣旨は、「自己紹介」をお読みください。
先週、娘からオモチャのキーボードの修理を頼まれました。
自分、時計に限らずちょこちょことモノを直しているので、なんでも、よく修理を頼まれます。
さて、直せるか、一服記事にでもできればと思います。
① SEIKO Champion 860
型番:7622-9010 Cal:7622 17石 5振動(毎時18,000振動)
ケース径:35.7mm(リューズ含まず) ラグ幅:19mm
1965年12月製造(S/Nより推測)
「1. 全力疾走・・ Champion 860」で、
紹介しましたチャンピオン860とはケースが違うタイプになります。
見た目、違いはわかりませんが、ケース型番8980と9000系とは、文字盤のサイズが違い、共用できません。
また、9000系は、9000と9010の2種があります。
② 正面
![](https://assets.st-note.com/img/1717735275566-BqVQRC1tdA.jpg?width=800)
風防は新品と交換。
文字盤をゴールドインデックスのモノに、針を金針に交換しました。
金銀のコンビです。
ケースは、若干の傷はありますが、全体的に腐食も無く、綺麗です。
大事にしていたのか? or それほど使っていなかったのか?
裏蓋の状態とムーブメントの不具合の考察から、
持ち主さん、そうは毎日使っていなかったと推測しています。
③ 左右側面
![](https://assets.st-note.com/img/1717735311212-hCegrPTKCS.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1717735328269-GLvUS0gPrX.jpg?width=800)
細かいキズがありますが、腐食はありません。
④ 背面
![](https://assets.st-note.com/img/1717735362388-8ZTKMLR1K6.jpg?width=800)
タツノオトシゴが綺麗に残っています、かわいいです。
摩耗が少なく、そうは毎日使っていなかったことがわかります。
⑤ ムーブメント
![](https://assets.st-note.com/img/1717735400096-6TetMytHN7.jpg?width=800)
このムーブメント、入手したときから、リューズを引いての時刻合わせがユルユル。
ちょっと触ったけで針が動き、ぴったりの時刻合わせが難しい状態でした。
日付はちゃんと0時近辺で変わり、通常の針の進み具合含め、このユルユル以外は問題無さそうです。
ツツカナだろうな・・
ということで、ばらし、
ツツカナと二番車の間の摩擦が弱い、という原因がわかりました。
ちょっと長くなりますが、説明しますと。
分針を司る二番車の文字盤側にツツカナという部品をはめ、それに分針を取り付けます。
二番車とツツカナの間には大きな摩擦が有り、通常は二番車と一緒にツツカナが回り、分針が回る仕組みになっています。
リューズを引くとリューズの動力がツツカナに伝わるよう切り替わります。
そうなると、リューズからツツカナを二番車との摩擦以上の力で回せるようになり、リューズを回し分針を進められるようになります。
ちなみにこの時、二番車は駆動輪列のバランスから一緒に回ることはありません。
リューズを回してもツツカナと二番車の間の摩擦で適度に重たく、分針をピッタリ合わせることができるわけです。
今回は、その摩擦が弱いため、
リューズを回すと分針がついたツツカナがクルクル回り、時刻合わせがユルユルでした。
これが、もはや摩擦が無いくらいになると、分針も時針も時を刻まなくなると思います。
今までそこまでのNG品には出会っていません。
各部品洗浄に合わせ、ツツカナ、二番車の両方とも交換です。
あと、緩急針の調整ができなかったので、テンプも交換しました。
⑥ せっかちな人
![](https://assets.st-note.com/img/1717735426234-QgnnL4ddh7.jpg?width=800)
さて、ユルユルトラブルから、どんなおやじさんが持ち主だったのでしょうか。
なんとなく想像できており、けっこう当たっているような気がします。
最初に浮かんだのは、ばらして組み立てる時に、誤って二番車のツツカナ側に油をさしてしまった人。
(恥ずかしながら、これは、自分の初心者の時の経験談です。。)
これは、無いですね。
まず、このトラブルの根本原因ですが、
日付合わせ、時刻合わせの時の、リューズの回し過ぎではないかと考えています。
リューズの回し過ぎで、
摩擦部分が摩耗して →摩擦力が低下して →ユルユルになった
という流れ。
また、この860含む当時の実用腕時計は、リューズの2段引きなどで日付変更できるカレンダクイック変更機能はありません。
逆回しで日付をバックすることもできません。
日付の変更は、時刻合わせで針を進め日付が変わったら、逆方向に回し20時くらいまで時針を戻し(極小さなカチッという音がします)、また針を進めるという方法。
20日分進めるとすると、この”戻し進め”を20回続けることになります。
この860の持ち主だったおやじさん、
この”戻し進め”を知らずに、一生懸命、目的の日付になるまでブンブン針を進めていたんじゃないかと。
20日分日付を進めるとすると、分針を40周回すことになります。
それでも、ゆっくり回せば、そうは問題無いよう材料設計はされていると思いますが。
持ち主のおやじさん、摩擦が擦り減るくらい、力任せにブンブン回したものと思います。
もひとつ加えて、考察すると、
ケースや裏蓋の綺麗さから、毎日は使わず、月に1,2回程度しか着用していないんじゃなかろうか。
例えば、月一回の本社の営業会議の出張時のみの着用だったとか。
それにより、進める日付もかけ離れ、針をブンブン回す数も増えることになりますし(笑)。
なんか、目に浮かぶなあ。
860を見て、
「今日は8日か、 おいおい、こいつ、10日かよ!」
「めんどくせーな! 早く行かにゃ、会議遅刻しちまうぞ!」 とかブツブツ言いながら、
力任せに針をブンブンブンブン。
日付表示が、11、12、13、~ とクルクル変わるくらいに、高速で針をブンブン回しているところ(笑)。
このおやじさん、頭より体で考えるタイプ、
とてもせっかちな人だったんだな、と結論づけました(笑)。
*****
記事にする時計たち、これからも左手で活躍して欲しく、骨董市やマルシェで出品しようと思っています。
出店など決まりましたら、この場を持って案内をいたします。
そのときは、お声がけなどいただけるとうれしいです。
「バースディウォッチ」という言葉をご存じですか?
お生まれ年に作られた時計を時計好き界隈で「バースディウォッチ」と呼んでいます。
自分が過ごした歳月を感じられる腕時計と、ともに過ごすなんて素敵かも。
1965年(昭和40年)生まれの私、懸命に針を動かしている同世代の腕時計たちにいつも励まされています(笑)。
⑦ 1965年(S40)の出来事、流行(ネットより抜粋)
・戦後初国産飛行機YS-11就航
・日本初カラーテレビアニメ「ジャングル大帝」放送開始
・シンガポールがマレーシアから独立
・アメリカ軍による北ベトナム爆撃開始
・プロ野球第一回ドラフト会議
・流行歌
君といつまでも(加山雄三)、サティスファクション(ローリングストーンズ)
・映画
マイフェアレディ、007ゴールドフィンガー
・ヒット商品
プロレス中継視聴率50%、オロナミンC、アイスノン、チョコボール、エレキギターブーム
・おおよその大学卒初任給 19,600円
・物価
映画:350円、ラーメン70円、週刊誌:50円、牛乳:20円、かけそば:50円
FLH
(103)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?