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睡眠をハックする(実践編)

これまで2本の記事にわたり、睡眠の課題認識から、メカニズムまでご紹介してきました。本記事では、それらを踏まえて、結局どういうことをすれば良い睡眠に繋がるのかというTipsをご紹介いたします。

他の記事を読むお時間がないかたは、本記事だけ読んで早速実践してみてください。



1.嗜好品は控えたほうがいい?

カフェインを摂取すると眠気がマシになることから、1日のなかで眠気が強くなる15~16時頃にコーヒーブレイクをとるかたは多いと思います。私もブラックコーヒーは飲めませんが、リモートワークの日はドリップして楽しんでおります。実際、カフェインにはノンレム睡眠発現に作用するアデノシンA2Aの受容を阻害する効果があります。

なお、肝臓でカフェインが分解される半減期を考慮すると、入眠5時間前からは摂取を控えることをオススメします。コーヒー以外にもカフェインが含まれる飲み物は多くあるので、ご注意ください。

ちなみに飲み物の温度によってもカフェインの効果が現れはじめる時間が異なるため、そこまで気を遣えるとカフェインマスターになれます。

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ニコチンは半減期を考慮すると入眠2時間前から控えることをオススメします。ニコチンの覚醒作用により、気分や認知機能を一時的に向上させることができますが、それゆえに依存性を形成してしまいます。

アルコールは鎮静・催眠作用により入眠しやすくなるため、「お酒を飲むとよく寝れる」と言うかたがいらっしゃいますが、少し誤解がございます。入眠自体はスムーズになる効果はたしかにあるものの、睡眠後半にレム睡眠を増加させるため、中途覚醒の可能性が高くなります。

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2.朝食には何を食べればいい?

前記事にも記載した通り、メラトニンを分泌するためにはセロトニンが必要になります。さらにもとを辿ると、セロトニンを分泌するためには、トリプトファン・ビタミンB6・炭水化物が必要となります。

セロトニンは感情のコントロール・精神の安定に大きく作用する神経伝達物質で、不足すると脳の機能の低下が見られたり、心のバランスを保つことが難しくなります。

朝食に上記栄養素を摂取して、太陽光を十分に浴びることで、最終的に夜にかけてメラトニンを分泌することができます。

ちなみに私は朝食を、納豆ごはん・味噌汁・ピルクルという固定メニューにしております。そして、朝食をとったあとに日光を浴びることを習慣化すると、しっかり夜に眠気がくるようになりました。

私の場合、朝食のタイミングを固定して身体が慣れてしまうと、休日にも寝すぎてしまうことがなくなりました。改めて、睡眠をデザインするための、1日のはじまりである朝食の重要性を感じております。

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3.お風呂はいつ入ればいい?

深部体温が下がるときに眠気が誘発されるという特徴を利用して、よどみなく入眠するために入浴を利用できます。

入眠の90分ほど前に15分ほど入浴をして深部体温を上げれば、入眠まで徐々に深部体温が落ちていき、そのまま本来の生体リズムの深部体温下降カーブに滑らかに差し掛かります。

なお、42℃以上の熱いお湯で入浴してしまうと、交感神経が優位になってしまい入眠を阻害するので、入浴温度には気をつけましょう。

入浴後は、入眠補助として、ハーブティーやホットミルクで自律神経を整えながら、部屋の照度を落としましょう(暖色系だとなお良し)。深部体温をさらに大きく下げたいときには、晩御飯に葉物野菜などを摂取するようにしましょう。

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4.寝たらダメなときどうすればいい?

眠たいけど寝てはいけない…特に仕事中にそういうことがあるかと思います(私だけ?)。眠気がくる状態は、副交感神経が優位となっていることが原因であるため、交感神経が優位になるよう、トリガーを与えてあげましょう。

手軽なところでは、ストレッチや冷たい水を飲むのがいいでしょう。また、副交感神経以外にも低血糖が原因の場合もあるため、ブドウ糖を摂取するのもオススメします(過剰摂取すると逆効果なので注意)。

私はよく起床直後や、日中に眠くなると小刻みにジャンプしています。起床後にラジオ体操を行う習慣は、交感神経を優位にするという意味で、非常に効果的なものだったとわかります。

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5.昼寝はどれくらいすればいい?

集中力が落ちて、眠気が強くなりはじめる15時頃に15~30分ほどの昼寝をとることが理想です。

30分以上睡眠をとってしまうと、より深い睡眠段階へ移行してしまうので、目覚めが悪くなり、その後の労働生産性にも悪影響を及ぼします。

また、あるていどの昼寝は認知症発症リスクを低減させる効果が確認されますが、1時間以上の長い昼寝をしてしまうと、逆に認知症発症率が倍増します。睡眠時間と健康リスクは、U字の相関関係が基本で、短いすぎや長すぎだと健康リスクは増加します。

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6.いつもより早く起きなければならないときは?

明日は朝からゴルフで5時起き…。いつもより2時間も早く起きないといけない…。そういうことはよくあると思います。

そのときに、「いつもより2時間早く起きないといけないのだから、2時間早く寝ればいいのでは」と考えがちですが、それはオススメしません。

入眠定時の2~4時間前は、実は寝つきが最も悪い時間帯であるため、せっかく早く布団に入っても寝つくことは至難の業です。寝れない状況に気持ちが焦り、さらに寝れなくなる悪循環に陥ることも考えられます。

そのため、入眠定時は変えず、いつも通りの時間によどみなく入眠するための努力をしたほうがいいです(朝食や入浴など)。そして早く起きた日は、夜の眠気に逆らわず、その時間に入眠するようにしましょう。

原則は「眠くなったら眠る」です。ちゃんと狙った時間に眠くなるように、また良質な睡眠をとれるように工夫しましょう。

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全3回、睡眠について知見を共有しましたが、いかがでしたでしょうか。今回紹介したTipsには、すぐに試せるハードルの低いものから、いきなり実践するにはハードルが高いものもあったかと思います。

まずは睡眠のメカニズムを理解したうえで、自分にできる工夫から始めることが大切かと思います。私もすべて実践できているわけでなく、習慣化できているのは、朝食と入浴くらいです。

皆様の睡眠が少しでも質の高いものになり、日々を元気に過ごせるように、ひいては健康寿命を延ばすことに貢献できれば幸いです。

それではおやすみなさい。


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