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【読書感想文】『魔法の国が消えていく』ラリイ・ニーヴン著

どんな話?

魔法にはマナが要る。だが、マナは有限で枯渇しつつある。と、いう設定を考えたラリイ・ニーヴンのファンタジー小説<ウォーロックシリーズ>の締めくくりとなる一冊。

<ウォーロックシリーズ>はニーヴンによる3本の中短編と、1冊の長編(本書)、さらに設定を共有した他作家たちの書いた短編からなる。とはいえ、読む順番は気にしなくてもなんとななるかなと思う。

ラリイ・ニーヴン(厚木淳訳)『魔法の国が消えていく』東京創元社、1984年、原著1978

1980年版もあるようだけれど、筆者の手元にあるのは上記の1984年版。

また、ニーヴンによるシリーズの他作品の情報については、上掲書に非常に充実した解説がついている。ほか作品を読んでいたら二度三度おいしいし、読んでいなくてもおいしい。

古本を買いたいけど値段で迷う人むけの話

2022年6月時点で本書は絶版。

と、いう事情があるので開き直ってお金の話を少々。

本書はAmazonマケプレで1500円(6月某日にみたら800円台に値下がり)と、今日の分厚い翻訳文庫本なみのお値段。買うのをためらう人も多いかもしれない。

Amazonマケプレのほかに、筆者がお世話になっているのは以下2点。

日本の古本屋

「日本の古本屋」と、いうウェブサイト。古本屋さんの在庫横断検索および通販ができる。

値段の点でAmazonより安いときもある。

筆者の経験した限りではどの業者さんも良心的。なにせ、同封した振込用紙を使っての後払いでOK、という取引があるくらい。

フリマアプリ

フリマアプリの場合は、書影や帯の有無の確認をしやすくてありがたい。なかには刷が変わるとタイトルそのままで表紙絵が変わるレーベルもあるので、そうしたレーベルを買うときには大変ありがたい。

お値段も、Amazonより安いときがある。

追記:たとえばメルカリだと、2023年11月現在は、2000円前後で取引されてます。以下リンクはアフィリエイトです。なんとなくメルカリの新機能を試したくて貼り付けてみました。PR広告ですが、ご容赦ください(それにしても新刊の翻訳文庫本よりも高騰するとは。。。。

https://jp.mercari.com/search?keyword=%E9%AD%94%E6%B3%95%E3%81%AE%E5%9B%BD%E3%81%8C%E6%B6%88%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%8F&category_id=668&afid=5223326311

アプリによっては、特定のキーワードにひっかかる商品が出たら、通知をよこしてくれる(Google アラートのように)。

取引も、筆者の経験した範囲では良いことばかりだった。

あらすじ

あらすじ紹介はごくかいつまんだ感じで。読んだ人同士でキャピキャピするようなノリで書くのもアリかとは思うものの、これから読む人の楽しみを奪うのも申し訳ない。

§

魔法使いにはマナが必要だが、マナは有限であり枯渇しかけている。そこで魔法使いウォーロックは、マナを世界に再来させるため旅に出る。

ウォーロックには考えがあったが、それを実現する方法を知らない。生き残りの魔法使い全員が協力してくれるでもなし、マナ無しでやっていける戦士たちは魔法の剣をのぞいて魔法には興味がなしと、前途多難。

感想

ロジカルファンタジーということ

ラリイ・ニーヴンはロジカルファンタジーと、いう前評判を筆者は仕入れていた。

とはいえ、本作にはこんな一節もある。

 人間とは、もろい、はかない存在なのだ。<死の呪文>は今でも、いちばんかけやすい魔法である。

ラリイ・ニーヴン(厚木淳訳)『魔法の国が消えていく』東京創元社、1984年、原著1978 p42

死の呪文と聞くとなんとなく難しい高度な呪文と、筆者は想像してしまう。とはいえ、人間はもろい、はかない、といわれてみれば、筆者もなんとなく納得はできる。本作はロジカルファンタジーといわれるらしいが、筆者には上記の点が、詩的な一面と見えた。

ウエイヴィヒルのこと

本作で一番魅力的だと、あなたが感じたキャラクターは? と、いう質問を立てたらわたしの答えは一つ。

ウエイヴィヒル

このウエイヴィヒルを仲間に加えるために、ウォーロックはそこそこの骨折りをする。そんな二人の始まりを描くシーンで、ウエイヴィヒルは台詞を発する前からチャーミングだった。

とにかく愉快な登場人物なのだ。たとえばこんな描写がある。窮地にある登場人物たちが、高山を旅している場面だ。

 とはいえ、旅にはまたそれなりの困難があった。ブーツがすり切れたので、彼らは兎を呼びよせて皮をはぎ、新しいブーツを作るのに半日費やしてしまった。歩くときにはいつも、ウエイヴィヒルが気晴らしになった。(中略)ウエイヴィヒルはのべつまくなし、魔法使たちはその昔、いかに楽々と旅行をしたかとか、こうした辛気くさい歩行を省くためにとることができた、またとらなければならなかった対策などについてしゃべりまくった。彼の身の上話は、つぎからつぎへと敵をつくっては、それを打ち負かした話で、二人はことこまかにその一部始終を聞かされた。(後略)

前掲書pp171-172

このウエイヴィヒルは、前日譚にあたる「ガラスの短剣」(原著1972年*1)(ラリイ・ニーヴン(厚木淳訳)『ガラスの短剣』東京創元社、1981年所収)にも登場する。

*1 原著年の情報はサンドラ・ミーゼル(厚木淳訳)「マナの危機」(『魔法の国が消えていく』所収)による

もしかすると、リアルタイムでシリーズに接していた読者たちは、ウエイヴィヒルの再登場を大いに楽しんだのかもしれない。

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