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泡で頭を使う。シャンプー、否ベーコンの話。

「世界は泡」で始まるフランシス・ベーコンの詩が、おなじく世界を泡と表現※した作家フリッツ・ライバーの好みに合いそうだなと思って読んでみた。

『ランクマーの二剣士』(東京創元社)の153pおよび410pに、世界を泡とする表現があります。

ヘッダー画像は泡つながり、そしてお酒とは腐れ縁の仲であるフリッツ・ライバーにちなんで、お借りしました。この場を借りて御礼申し上げます。

詩の原文

出典はこちら。PDFのページ数でいうと136 / 397ページ目です。

The World's a bubble, and the Life of Man
Less than a span :
In his conception wretched, from the womb
So to the tomb ;
Cursed from the cradle, and brought up to years
With cares and fears.
Who then to frail Mortality shall trust
But limns on water or but writes in dust.
Yet, since with sorrow here we live oppress'd,
What life is best ?
Courts are but only superficial schools
To dandle fools ;
The rural parts are turn'd into a den
Of savage men ;
And where's the city from foul vice so free
But may be term'd the worst of all the three?
Domestic cares afflict the husband's bed,
Or pains his head ;
Those that live single take it for a curse,
Or do things worse ;
Some would have children, those that have them moan
Or wish them gone :
What is it then to have or have no wife,
But single thraldom or a double strife ?
Our own affections still at home to please
Is a disease ;
To cross the seas to any foreign soil
Peril and toil ;
Wars with their noise affright us ; when they cease,
We are worse in peace.
What then remains but that we still should cry
For being born or, being born, to die?

W. J. Linton R. H. STODDARD, "English Verse", 1883, Charles Scribner's Sons,
GoogleBooksより, 2023/09/24アクセス

拙訳

勢いあまって、ライバー(1992年没)に恋文を届けるような心地になって訳してみた。

 この世はひとつの泡だし、人の命なんて短い、短い。おなかの中でもうめちゃくちゃ、生みだされてから葬られるまでずっとそれ。呪いはゆりかごのときからで、それでも人は育てられる。ずっと心配されたり、世話をやかれたりして。なかには死の運命をやっつけられると信じてるのもいるけれども、水に絵を描いたり、ちりに字を書いたりするようなもの。

 で、悲しみにつきまとわれて、ここで私たちは生きたまま押しつぶされてて、どんな人生ならいちばん良いんだか。宮廷はただもう、うすっぺらな学校で、ばかをあやしてるだけだし、田園というのは未開人のいる巣穴のことだ。じゃあ都市なら、ぞっとする悪いのから逃げられるかといったら、それこそいちばん悪い、三つ目なのかもしれない。

 家のなかのあれこれをみていると、旦那は眠れなくなるか、頭がいたくなるかする。ぼっちたちは独身は呪いだといいだすか、もっとろくでもないことをしたりする。子どもらを作ったりするというとことで、するとそいつらは子どもらのことで文句をいいはじめ、早く出てってくれないかと、ねがうようになる。つまるところは結婚するかしないか、一人でもだえるか、二人でもめるかだ。

 私たちの気もちをじっと地元にとどまったまま満たそうとするのは病んでるということだけど、外に出て海をゆき、どこか外国の土をふむのは危ないし疲れもする。戦争というのはどれもうるさくて恐ろしくて、おわればおわるで、私たちはもっと悪いことになる。平和のなかで。このままいくと、私たちはずっと泣いてるんだろう。生まれたことに、それか、生まれると死ぬことに。

詩を知ったきっかけと見つけ出すまでの記録

こんなきっかけで、この詩(とりあえず「世界ー泡」と呼ぶ)にたどりついた。この記事にたどりついた方々は、べつに調べ物の方法が知りたくてクリックしたわけではないと思うので、ざっくりと簡潔に。

1)小野俊太郎『シェイクスピアの戦争』小鳥遊書房、2023の102頁で「フランシス・ベイコンによる「世界」あるいは「人生」と仮のタイトルで呼ばれる詩」として、冒頭4行が紹介されていた。

2)あれこれと闇雲にググって時間を浪費する。

3)Google Booksを「francis bacon world bubble」で検索したらこちらの本がヒット。

これで飽き足らずに解説を探そうとした。

a)あれこれと闇雲にググって(ry

b)Google Scholorを「"Francis Bacon" Bubbles」で検索。博士論文が出てくる。

c-1)本文を「bubble」で検索したところ、「世界ー泡」は論文の趣旨ではなく、話の枕みたいな扱いらしい。

c-2)イントロをざっと流し読みするに、ベーコンの思想の研究者が話の枕として「世界ー泡」を取り上げて、この詩はベーコンの思想に合うと評しているらしい。

c-3)注釈を見ると、作者が誰なのかということには別の論文を見よというようなことが書いてある。

d)c-3に挙げた論文を読むに、この詩にはベーコン以外の作者も想定できるらしく、また執筆時期は1597-8年ごろと想定できるらしい。

DeepLで訳したもの

しれっと文を脱落させることさえ止めてくれたら言うことはないのですけど。。。なにはともあれ、スマホアプリ版DeepLは、文字をカメラで読み込めるので大変便利です。

世界は泡沫、そして人間の一生
スパンにも満たない:
胎内から墓場まで
墓場まで;
揺りかごから呪われ、年老いるまで
思い煩いと恐怖と。
誰が虚弱な死を信じよう。
水の上の石灰か、塵の中の文字か。

しかし、ここで悲しみと私たちは圧迫されて住んでいるので、まだ、
どのような人生が最良であろうか。
法廷は表面的な学校に過ぎない。
愚か者を弄ぶための;
農村は野蛮人の巣窟と化し
野蛮人の巣窟と化している;
都会は悪の巣窟と化す。
しかし,この3つのうちで最も悪いのはどこであろうか。

家庭の悩みは夫の寝床を苦しめる、
または頭を痛める;
独身者はそれを呪いとする、
あるいはもっと悪いことをする;
ある者は子を持ち,子を持つ者は嘆く。
ある者は子を持ち,ある者は子を持つことを嘆き,ある者は子の死を願う:
妻を持つか持たないかは何であろう、
妻を持つことも持たないことも、何なのだろう。

己の愛情を家庭で満足させることは
病である;
海を渡って外国に行くのは
危険と労苦;
戦争はその騒音で我々を悩ませる、
私たちは平和の方が悪い。
それでもなお,われわれは泣かねばならない。
生まれること、あるいは生まれて死ぬことを。

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