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読書感想文ほか

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ファンタジーやSF(いずれも広義の意味での)の感想文です。 Photo at header by NordWood Themes on Unsplash https://unsp…
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#ファンタジー

ぐるぐるまわるは質屋さん『ジャーゲン』【読書感想文】

身も固めて地に足をつけてる質屋さんが、地に足をつけてる人間なら絶対にしないような冒険へと放り出されてしまう小説を読みました。 そんな不思議な作風に寄りそうと感じて、ヘッダー画像を使わせていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。 この作品を読みましたジェイムズ・ブランチ・キャベル著, 中野善夫訳, 『ジャーゲン《マニュエル伝》』, 2019, 国書刊行会。原著は1919年刊行。 一言でいうならファンタジー小説なのですが、2019年初版の帯には「こんなのファンタジイ

ファンタジーの水源「サガ」を読んでみた

指輪物語やコナンがペーパーバックになるまえ、ファンタジーに飢えた人はサガやゴシック小説を読んでいた、という文章をどこかで読んだ気がする。 どこで読んだのかと、手元の本をあさってみたけれど、どこにも見当たらない。英米のヒロイックファンタジーのうちどれかだった気がするのだが、どこにも見当たらない。 ひとまず、先人たちは自分たちのファンタジー欲を満たすためにサガを読んでいたことにするとして、本記事の筆者も先人たちの感覚を追体験したくなった。だから、読んでみた。 (サガといえば

【読書感想文】「魔女の逃亡ガイド―実際に役立つ扉ファンタジー集」アリクス・E・ハーロウ著 原島文世訳

どんな作品? 司書は少年を救えるのか?たとえ規則と掟を破ってでもと、いうお話。 あるいは、魔女の逃亡ガイド。 と、書くと表紙に「パニくるな」と書いてあるガイドブックみたいに聞こえてしまうかもだけど(あちらも役に立つことは言うまでもないのだが)、本作が言及する本のだいたいは実在する本だから、まさに本作はブックガイドにして扉だ。 (扉とファンタジーという点で、みんなのフォトギャラリーから画像を拝借しました。ありがとうございます。うさぎは招いているのか?それとも、こちらへ来た

ヒロイックファンタジーの人名について_R.E.ハワード「黒い予言者」の場合

ヒロイック・ファンタジーの源流コナンシリーズに登場する地名と人名に注目したら、ハイボリア世界の歴史が垣間見えたような気がした。 ハワードの命名法については、すでに先行研究があるらしく、詳しくは新訂版5巻末の「解説」を読んで頂くほうが良いと思うので(ここであれこれ書いても孫引きにしかならないので)、ちゃちゃっと話をすすめる。 【念の為】本稿には特定の地域、文化、国家、人物などを誹謗中傷する意図はありません。 気になることさて、コナンシリーズの「黒い予言者」に「イラニスタン