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宋美玄先生に聞いてみた!「尿漏れって、何で起きるの?」

お客さまのリアルボイスから見えてきた! 「尿漏れ」のお悩み

人には相談しにくいけれど、実は困っている……そんな女性のお悩みを解決するために、gokigen Lab.では定期的にお客さまアンケートを行っています。今回、7,238人のお声が集まった中で、目立ったのが「尿漏れ」に関するお悩みでした!

お客さまのお悩みリアルボイス
・仕事中に、くしゃみで尿漏れを経験……トップスが長めの制服だったので周りには気づかれなかったと思うけど、においがしないかハラハラしました。
・産後の腰痛や尿漏れがひどく、みんなこうなの? 予防できなかったの? 今からできることは? など疑問だらけ。でも、ほかの人と話しづらいし、病院で相談したりする暇もなく、あきらめちゃってます。
・更年期に入り、尿意を感じるとチョロと漏れてきて困っています……。
gokigen Lab. アンケート フリー回答より(2023年1月実施 有効回答数:7,238件)

そもそも、尿漏れって何で起きるの? 産後や40代以降に起きやすいのはどうして? 何か私たちにもサポートアイテムが作れないかな……と、ラボの研究員たちも疑問がいっぱい! そこでgokigen Lab.のアドバイザーでもある宋美玄先生に、尿漏れがなぜ起きるのか、じっくり伺ってみることにしました。

丸の内の森レディースクリニック 院長 
宋 美玄先生

そん・みひょん 大阪大学医学部医学科卒業。周産期医療、女性医療の診療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。主な著書に、ベストセラーとなった『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』『産婦人科医 宋美玄先生の生理だいじょうぶブック』『産婦人科医宋美玄先生が娘に伝えたい 性の話』などがある。2017年に開業した丸の内の森レディースクリニックは日本屈指のオフィス街とターミナル駅に近く、近隣で働く人から遠方に住まう人まで幅広い層の女性が訪れている。一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事。

尿漏れが起きてしまう理由は、「骨盤底筋の衰え×女性ホルモンの減少」だった!

―― そもそも「尿漏れ」って、何で起きるんですか? 
宋先生 尿漏れの大きな原因は「骨盤底筋(こつばんていきん)」の緩みです。骨盤底筋というのは、おなか側の恥骨(ちこつ)から、背骨側の尾骨(びこつ)まで、骨盤の骨とくっついて、内臓を下から支えているハンモックのような筋肉なんですよ。

いくつかの小さな筋肉の集まりなので、正確には「骨盤底筋“群”」と言うんですが、子宮や膀胱、腸など、骨盤の中にある臓器を、この筋肉たちが支えてくれているんですね。そして、尿道口や肛門、腟口(ちつこう)をキュッと締めてくれている筋肉でもあります。

●骨盤底筋を真上から見た所

―― まさに“縁の下の力持ち”的な。
宋先生 そうそう。骨盤底筋はとても大事な筋肉なんだけど、出産で赤ちゃんが生まれるときに、大きく断裂して傷ついてしまったり、便秘のときにいきんだりしていると、常に腹圧(ふくあつ=内臓が収まる腹腔にかかる圧力のこと)がかかって、筋肉が傷ついてしまっているんですね。知らず知らずのうちに筋肉が断裂してしまっている。
そこに更年期で女性ホルモンが減ってくると、骨盤に酸素と栄養を送り届ける血管が少なくなって、膣や子宮が小さくなったり渇いてきたりします。そのときに骨盤底筋も弱くなって緩んでくる。すると尿道口を締める力も弱くなってくるので、更年期以降に尿漏れが起きやすくなるんです。

―― 出産を経験していない女性でも、いつかは経験する悩みなんですか?
宋先生 出産以外にも便秘、立ち仕事、慢性的なせき、肥満などいろいろな理由があります。ジョギングとか、めっちゃはやっているけど、ジョギングも過度に腹圧がかかって実は骨盤底筋群を傷めやすいんですよ。

―― そうなんですね! 健康のためと思っていたのに(泣) 私は産後に尿漏れを経験したものの、一年くらいしたら治ったと思っていたんですけど……
宋先生 実は産後しばらく経って、症状が治まったように感じられても、骨盤底筋のダメージが治っているわけではないんです。更年期前後になると、女性ホルモンの分泌が減少することによって骨盤底筋も弱くなって緩んでくるため、また尿漏れになる可能性が高いです。だから、尿漏れは女性なら誰に起きてもおかしくないことなんですよ。恥ずかしがることも、人知れず不安に思う必要もない! 知って対策すればいいだけ。

骨盤底筋を鍛えるのは、実はむずかしい……!  腹式呼吸は◎だけど、腹筋はだめ !?

―― 弱ってしまった骨盤底筋を鍛えて維持するには、どうしたらよいのでしょうか?
宋先生 骨盤底筋はインナーマッスルといって、身体の深い所にある筋肉なので鍛えにくいんですが、鍛えるのによい方法は、例えば、恥骨直腸筋でいえば、おしっこをギューッと我慢するように自分で締めること。ただね、気を付けなければいけないのは、腹直筋という、いわゆるシックスパックと間違えてしまいがちなんですね。“骨盤底筋の敵は腹直筋”と言われるくらい、間違えて腹直筋に力が入ると腹圧がかかって逆にダメージが……。産後に体形を戻そうとして、腹筋をしちゃう人がいるけど、あれは腹圧がかかるから、いちばんだめなんです。

―― なんと! 無理やり頑張って腹筋をしていたのに。知らないって怖い……。
宋先生 産後は恥骨が緩んでいるから、そこをギュッと締めてそっとしておくのが一番。
それと、骨盤底筋の外側の方はある程度鍛えられるけど、奥の方の筋肉は不随意筋(ふずいいきん)といって自分の力で動かせる筋肉じゃないんです。じゃあ、どうしたらよいかというと横隔膜と連動しているので、横隔膜を上げ下げする腹式呼吸をすると筋肉も連動されて鍛えられる。だから、キモは「腹式呼吸」。

―― なるほど。腹筋はだめで、腹式呼吸をするといいと。
宋先生 そうそう。あと、くしゃみをして尿漏れする人は、腹圧がかからないように、背骨を一個一個伸ばすイメージで、骨盤と横隔膜を離す姿勢を取ってから、おしっこを我慢するようにギュッと締めてくしゃみをすると漏れないので、意識してみてくださいね。