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生理の時期、どう過ごす? わたしが見つけた心地よさ|和田彩花さんインタビュー1/2

10代の頃からアイドルグループで活動してきた和田彩花さん。2019年にグループを卒業してからは、アイドル活動のほか、現代美術や文芸誌など幅広いジャンルでも活躍しています。また生理や女性のからだについても積極的な発信を行っています。現在はフランスに留学中の和田さんにからだの不調との付き合い方、生理時の過ごし方についてお話を伺いました。

文/アケミン 写真/服部恭平

和田彩花(わだ あやか
1994年生まれ。群馬県出身。アイドル。10歳でハロー!プロジェクトのオーディションに合格、2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出、リーダーに就任。10年5月『夢見る15歳』でメジャーデビューし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月にアンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術にも強い関心を寄せる。2022年からフランスに留学中。

不調が「当たり前」になってしまうしんどさ

ーー和田さんは最近は生理や女性のからだについても積極的に発信されていますが、それはなにかきっかけがあったのでしょうか?

和田 実は私も少し前までは、自分のからだや生理について話すことに抵抗があったんです。どこか気恥ずかしいし、友達との話題にするにもためらっていたほどです。

けれど20歳を超えたころから、女性の権利やフェミニズムについて関心が高まって、自分でも本を読んだり調べたりしていくうちに「自分のからだは自分のもの」という考えに触れるようになりました。「リプロダクティブ・ヘルス」やからだに関する権利についても知りました。

そんな中で「一体、私はどれだけ自分のからだを大切にできているかな?」と振り返ってみたところ、あまりできていなかったことに気付いたんです。

※リプロダクティブ・ヘルス=性や子どもを産むことに関わる全てにおいて、身体的にも精神的にも社会的にも本人の意思が尊重され、自分らしく生きられること

 ーー自分のからだのことって、ついつい後回しになっちゃいますよね。

和田 そうですね。実際グループで活動していたときは忙しかったし、多少の不調を感じても年齢的にムリがきいてしまったのも一因かもしれません。

さらに今思えば、長らく「不調そのもの」に気付いていなかったのかも。

たとえば生理痛でも、自分のなかで「おなかが痛いのが当たり前」になってしまっていたので、「治せるもの」とすら認識できていなかったんですよね。長い間、一人暮らしをしているので、生理のたびに不調になることが自分のなかで当たり前になってしまっていたというか。


生理前には、寝る前に自然と涙が出た

ーー和田さんは生理前、どんな症状がありますか?

和田 私は生理前になるとウツっぽくなるんです。

生理1週間前ぐらいはメンタル的に不調で、うまく頭が働かなくなったり、イライラしたり、ちょっとしたことで落ち込んだり……。ときに他の人との関係もギクシャクしてしまうし、さらにそれで落ち込んだり……。そもそも寝る前に自然に涙が出るっておかしいじゃないですか。

でもそのツラさも「当たり前」になっていたから、なにかとひとりで抱えてしまっていたように思えます。

2019年にグループを卒業してからは、自分でも少し時間に余裕ができたし、女性とからだの関係について考えるうちに「あ、自分の体調やメンタルって実はやばいんだな」とようやく気づくようになりました。

ホルモンバランスや生理の周期によって自分が大きく変わってしまうこと、これを知るまでがこれまでの短い人生でも、ものすごく大変だったなあと思いますね。



病院も月経カップも「試してみないと分からない」

和田 自分の不調を自覚してはじめてようやく「病院に相談に行こう」と思うようになりました。それまでもツイッターでリプロダクティブ・ヘルスについて発信している方の投稿を目にしていたので、「ひょっとして私にはピルが合うのかな」と漠然とイメージをしつつ、病院に行ってみました。

ーー病院に行ってみて、どうでしたか? 

和田 結論から言えば、今はピルでかなり不調は改善されています。眠りをスムーズにするための漢方も飲んでいますね。

ただ最初に行った病院で処方されたピルは合わなくて、別の病院で診察を受けてようやく自分に合うピルに出会えたんです。

ーーピルは種類も多い分、合う薬を見つけるのも病院や薬を選ぶのも大変という声も聞きますね。

和田 人前に出る職業柄、病院の待合室で自分の名前を呼ばれるのに抵抗もあったんです。別に悪いことをしているわけでもないけど、これまで生理やからだについてオープンに語ってこなかったこともあって、自分の中で「隠したほうがいいのかな」と思っていた部分もあります。あと「和田彩花が婦人科系の病院にいる」とネットにおもしろおかしく書かれたら……と思うと、それも怖かったのも事実ですね。

ーー別に悪いことをしているわけじゃなくても、病院でのプライバシーは気になるところですよね。それが和田さんのようなお仕事をされている人ならなおのことです。

和田 そういった事情もあって、最初は「プライバシーを遵守しています」と謳っている病院に行ってみたんです。確かにプライバシーは守られていたのですが、「もう少し話をゆっくり聞いてもらえる病院のほうが私にはいいかも?」と感じたこともあり、別の病院に行ってみたんです。

次の病院は、待合室で名前こそ呼ばれるものの、お医者さんがひとりひとりの話をじっくり聞いてくれて、とても安心感がありましたね。病院もピルも合う合わないは人それぞれだし、やっぱり「一度行ってみないと分からない」とつくづく思いました。

また生理用アイテムでいえば、月経カップも話題ですよね。私も一度は試してみたものの失敗してからちょっと苦手になってしまって……今はほとんど使っていないんです。

病院でもピルでも生理用アイテムでも、実際に自分で経験してみないと分からないですよね。試行錯誤しながら、自分に合うものをひとつずつ選んでいきたいと思っています。


生理中は、なにもしない

ーー生理痛や生理前のPMSの時期を過ごす上で、和田さんが心がけていることはありますか?

和田 よく取材で「ハーブティーを淹れたりするんですか?」と”ご自愛メソッド”について聞かれるんですけど、私は「何もしないこと」を心がけていますね。生理中は、なにも予定を入れないようにしているんです。

今、フランスに長期滞在していて、アートの展示や美術館めぐりをよくしているのですが、生理期間中は「美術館に行かない」ことにしています。

フランスだと、大きな美術館から小さなアトリエまで、見たいものが本当に色々あるのですが、生理中だとおなかが痛くてどれも集中できないんです。以前、生理中に美術館に行ったときもおなかが痛くて、「あれ? これってもったいないな」と気付いたこともあって、今は生理中はなにも予定を入れずに、家で引きこもるようにしています。

痛みも快適な過ごし方も、人それぞれ違うと思いますが、ようやく私も自分の体調や心地よい過ごし方が分かってきたように思います。


「つらかったら休んでいいよ」休むこと、はなすこと
|和田彩花さんインタビュー2/2